銀座ヴァニラ画廊で『人造乙女博覧会IV』開催中、8月23日まで。製造風景や金型の展示も

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銀座のアートギャラリー・ヴァニラ画廊は、オリエント工業製品の展覧会『人造乙女博覧会IV』を開催中です。会期は2014年8月23日(土)まで。入場料は1000円。

2007年より不定期に開催している展覧会で、今回で4回目の開催。主な展示内容は、現行製品の『やすらぎ』や『アンジェ』、現在開発中の『パーティドール』といった製品展示に加え、製造技術の進歩がうかがえる80年代・90年代の旧モデルや、工場での製造の様子を収めた写真展示、かつて使用していた金型など、目にする機会がないものまで。

なお記事と記事中の写真は全年齢対象ですが、本展覧会は18歳未満の方の入場はできません。

オリエント工業は、1977年創業の特殊ボディ専門メーカー。東京・上野に本社を構え、予約制のショールームも設置しています。『いつも傍らに寄り添い、心に安らぎを与える女性像』を目指した製品開発を行っており、近年はシリコン製のラブドールを中心に展開。造形の美しさやディテールのリアルさに定評があります。

オリエント工業の製品の歴史。会場にはオリエント工業最初の製品『微笑』(1977年)のパンフレットも。

会場で実際に触れられる現行製品『やすらぎ』は、実在の女性から型取りしたというシリコンの肌を備え、指の関節まで動かせる機能性を持っています。関節は首、肩、肘、手首、腰、膝、足首が可動し、様々なポーズを取れるようになっており、写真撮影の被写体として購入する方もいるそうです。オリエント工業社長・土屋日出夫氏は、来場者に配られる展覧会パンフレットに掲載しているインタビューの中で「女の子に負けないドールを作りたい、そういう戦いをしている」と開発にかける意気込みを語っています。

会場で触れられる現行製品 やすらぎ(2013年)。頭部は『飯倉みなみ』

実際に触れてみると、肌の質感や弾力は驚くほどリアルで、造形師の高い技術力を伺わせるものでした。顔の造形にも不気味さや違和感は少なく、単にリアルさだけを突き詰めたわけではない造形上の工夫が感じられます。

ジュエル(2011年)。頭部は『かれん』

やすらぎ(2013年)。頭部は『栗原まどか』

同社製品のリアリティについては、同パンフレットに掲載している造形師のコラムでその一端が語られています。コラムによれば、実在の女性から型取りしているとはいえ、そのデータはあくまでも型取り時点のデータであり、実際の製品化にあたっては、造形による再構成を経る必要があるとしています。具体的には、筋肉の構造や皮膚の厚みなど、人体の各部位が「なぜその形をしているのか」まで突き詰めたうえで製作していることが伺える内容です。

参考展示のパーティドール バニー 『沙織』。会場にはほかパーティドール 花魁『ともこ』も。

ユーザーから"里帰り"した面影(上、1982年)。会場にはアリス(1999年)も。

人造乙女博覧会は、ヴァニラ画廊からオリエント工業に声を掛けたことがきっかけとなって2007年に始まった展覧会です。ヴァニラ画廊では創作人形展を開催することもある関係で、同社のショールームを見学に行った際、そのクオリティの高さと美しさに魅せられ、画廊として展覧会の企画を持ち込んだ経緯があります。

このほか、ドールの金型も展示していますが、取材時は撮影不可だったため、気になる方は現地でご覧ください。

兵頭喜貴氏による工房の写真も展示しています。

オリエント工業では自己主張や演出をしないフラットな素体を顧客に提供したいという意向があり、美術品ではなく工業製品と捉えていることから、画廊としては展示の説得に苦労したそうですが、最終的には社長の厚意で開催にこぎつけたということです。

企画当初より展覧会の企画に関わっているスタッフによれば、第1回の開催時にはものづくりをしているクリエイターの来場者が多く、展示されたラブドールのクオリティに驚いていたことが印象的だったと話していました。できれば今後も第5回、第6回と続けていきたいとのことです。

ラブドールという存在は広く知られていますが、多くの方は、実際に目にしたり、触れたりする機会はほとんどないのではないでしょうか。ラブドールには様々な事情で性的な重荷を抱えている方の心と体に安らぎをもたらす役割もあり、本展覧会は、普段接点のないラブドールを知るきっかけとなる貴重な機会とも言えるでしょう。

また、オリエント工業といえば、昭和大学の歯科臨床実習用ロボット『昭和花子2』の開発に関わったことでも知られています。2011年にテムザックと共同で開発した医療用ロボットで、音声認識システムに加え、くしゃみや咳といった生理現象を再現する機能などを装備しています。

人間によく似たロボットを作る過程において、人の目に直接触れる外見の部分は、人を模したロボット(アンドロイド)が人々に受け入れられるかどうかの重要な要素といえます。

ロボット産業の急成長が語られ、また技術発展により「人に似たものを作りたい」という欲への障壁が低くなってゆくなかで、造形に対するオリエント工業の取り組みは、ロボットの将来にも大きな関わりを持っています。