神経疾患の原因となる脳の部位を探るため、覚醒下の手術で患者にバイオリンを演奏してもらいながら脳に微弱な電気刺激を与えるという試みが行われました。

Violinist has brain surgery, fiddles throughout - CNET

http://www.cnet.com/news/violinist-has-brain-surgery-fiddles-throughout/

実際に行われた手術の様子は以下のムービーから見ることができます。

Violinist Still Making Music After DBS Surgery - Mayo Clinic - YouTube

Roger Frisch氏が手の震えに気づいたのは2009年のこと。普通の人にとっても手が震えるというのは困ることですが、40年以上バイオリニストとして生計を立ててきたFrisch氏にとって、手の震えは「安定して弦が弾けない」ということを意味し、致命的な問題でした。滑らかにバイオリンを弾けなくなったFrisch氏は、その後医師から神経疾患であるとの診断を受けました。



Frisch氏の問題を解決するためにMayo Clinicの神経工学研究所が行ったのが外科手術によって脳の深層に刺激を行うこと、そして脳にペースメーカーを埋め込むことでした。



以下の男性はMayo ClinicのKendall Lee博士。



脳のペースメーカーは脳のうち特定の部位に電気刺激を送るもので、現在ではパーキンソン病やうつ・トゥレット障害・震え・慢性的な痛みなどを治療するために使用されています。震えの治療にペースメーカーが使われるのはまれなことですが、Mayo Clinicはプロのバイオリニストにとって震えがどれほどの影響を及ぼすかを考慮して治療を行うことを決意しました。



手に持っているのが電極。



震えを起こしている脳の部位を特定するために、手術では意識がはっきりした状態のFrisch氏の脳に電極が埋め込まれ、さまざまなポイントに微弱な刺激が与えられました。



意識のある患者に対して脳手術を行うということは珍しくありませんが、今回の手術の独特な点は、実際に手術中のFrisch氏がバイオリンを演奏したということです。



医師たちは3軸加速度計を使ってFrisch氏の脳の動きをリアルタイムでモニタリングし、挿入した電極が震えに影響しているかどうかを観察しました。



施術後、Frisch氏はコントローラーを使ってペースメーカーを操作することで、手の震えなしでバイオリン演奏を行うことに成功。



3週間後にはミネソタ管弦楽団でバイオリニストとして活躍したとのことです。