物議だらけで社会現象化したエヴァンゲリオン。10年以上多くの人の心を揺さぶり続け、今なお抜け出せないエヴァシンドロームの元凶ともいえる、旧劇場版がついに地上波初放送です。

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関東圏で8月18日「EVANGELION:DEATH(TRUE)2(注・二乗)」、25日に「THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」が「映画天国」で放映されます。
映画天国
上映されたのが1997年ですから、実に17年の年を経てようやくということになります。

実は地上波でこれらの映画(以下・旧劇場版)が放映されるのは初。
物議をかもしまくった作品が、機を熟して地上波初放送、という感じでしょうか。むしろ17年もたっていると、生まれる前という人も多いかもしれません。そんなに経ったんだね。
8月22日からは三週連続で「序」「破」「Q」と「ヱヴァンゲリヲン」(以下・新劇場版)が金曜ロードSHOW!で放映されます。

さて、今回放映される「DEATH(TRUE)2」はちょっと特殊な作品です。
当時の様子とあわせて簡単に説明してみます。

●完全新作の話は10年越し
TV版「エヴァンゲリオン」が放映されたのは1995年でした。夕方18:30からテレビ東京系列で放映され、6%から10%の高視聴率を取りました。と同時に伝説化した弐拾伍話・弐拾六話で、ファンは大騒動になります。
どちらかというと、その後の1997年の再放送時に本当の意味でエヴァンゲリオン現象は始まったように思います。
96年にファンの間でエヴァがあまりにも話題になり、今までアニメに見向きもしなかった層にまでエヴァの話が広まりました。
「クイック・ジャパン」をはじめ、「SFマガジン」あげくには「デラべっぴん」までエヴァ特集を組んでいたほど。
三鷹市の水道局がポスターに、エヴァンゲリオンの人気キャラ綾波レイを起用し、大騒ぎになったのをご存知の方も多いでしょう。あれ喉から手が何本も出るほどほしかった。アスカ派だけど。

97年の劇場公開はそんなヒートアップした中で行われました。
結論だけいうと、間に合わなかった。

1996年4月に発表されたのは、本来は弐拾伍話・弐拾六話のリメイクをしたビデオ・LDの発売と、それとは別の完全新作の劇場版を作る予定、というものでした。
よもやその「完全新作」の劇場版が10年たった2007年まで伸びるとは、誰もこの時思わなかったでしょう。

その後劇場版の話は1996年11月「シト新生」というタイトルで公開されると発表。
テレビシリーズの総集編+弐拾伍話・弐拾六話リメイクを合わせたものになるはずでした。

ところがリメイクのほうが間に合わず、実際の1997年3月の「シト新生」の放映では、総集編の「DEATH」と、リメイクの一部の映像の新作「REBIRTH」をあわせたものになりました。
間に合わなかった件については正式な謝罪をしており、行列ができるほど売れた前売り券は、未使用であれば正式に完成した夏の映画でも使えるようにされています。
そして7月に公開されたのが弐拾伍話・弐拾六話のリメイク、来週放送の「Air/まごころを、君に」になります。

●幻の「シト新生」
問題はこの「DEATH」と「REBIRTH」を組み合わせた「シト新生」。
現在この映像そのものは、入手してみることができません。
ですので、今回放映される「DEATH(TRUE)2」は、本来劇場で公開されたものではありません。

「DEATH」はTV版の総集編、と銘打っていますが、時系列が完全にシャッフルされています。
導入はセカンドインパクトのシーン。メインキャラの一人葛城ミサトが父親に救われるシーンからスタート。そのすぐあとに、「その15年後」の文字が入り、加持さんに抱かれているシーンが入ります。
しばらくして惣流・アスカ・ラングレーの母親の自殺シーンが入り、その後ようやく主人公碇シンジが登場。エヴァに乗ったと思いきや、渚カヲルを握りつぶすシーンに飛びます。
完全にファン以外置いてけぼり展開です。
でもこれ、ファンなら深読みしまくれます。人間とは性なのか生なのか……とか。ううっ、こじれる。

この「DEATH」編はWOWOWで修正され「DEATH(TRUE)」という名前で放映。
さらに修正され「DEATH(TRUE)2」という名前で再修正されています。
現在入手できる映像はこの「DEATH(TRUE)2」のみ。元々の「DEATH」編から一部映像をカットしています。
劇場版 NEON GENESIS EVANGELION - DEATH (TRUE) 2 : Air / まごころを君に [DVD]

カットされた映像は、ビデオ・LDで修正された弐拾壱から弐拾四話に使用されており、DVD版では「ビデオフォーマット版」として見ることができます。そのため完全に失われたわけではありません。ただし、映画版「DEATH」として見ることは不可能になっています。
唯一本来の「DEATH」の映像の順番を確認できるのは、フィルムブックのみです。
新世紀エヴァンゲリオン 劇場版―DEATH編 (NEWTYPEFILMBOOK)

一方「REBIRTH」はその後の「Air/まごころを、君に」で正式なものとして作られます。
そのため現在発売されているDVDには収録されておらず、フィルムブックも出ていないため、どうしても「REBIRTH」が見たい場合は過去に発売されたビデオとLD、リニューアル前のDVDを中古で探すしかありません。

こうして「DEATH」「REBIRTH」は、文字通りの意味で幻の作品と化しました。

●シャッフルの手法
今回放映される「DEATH(TRUE)2」は、一見するとめちゃくちゃに並べ替えたように見えます。
しかしこれは、一度TV版を見た人なら、一人の人物、あるいは人物同士のかかわり合いを再確認しやすい構造になっています。

例えばレイの視点。
まずシンジがレイがいつも一人でいるのを見ているシーンからスタート。次にレイが碇ゲンドウと笑顔で話しているのを目撃。
その後シンジがレイの家に行って風呂あがりのレイと出会うシーン。飛んでレイとシンジがエスカレーターでゲンドウの話をして、レイがビンタ。

レイが零号機のテスト中に暴走したシーンを挟んで、ヤシマ作戦へ。シンジがレイを助けにいって「こういうときどんな顔をすればいいかわからないの」「笑えばいいと思うよ」の有名なシーンが入った後、すぐに使徒ゼルエルに自爆特攻をしかけるシーンへ。
零号機がロンギヌスの槍を引っこ抜いてアラエル撃破、侵食型アルミサエルを取り込んで自爆、と使徒戦が続きます。
その後に、量産綾波レイが登場、分解される場面。レイの様子だけをピックアップして見ることが出来ます。

同じような流れで、シンジ視点、アスカ視点を抽出。
全くストーリーは解らない順番に並べ替えられています。
こうすることで、キャラごとに何を感じていたのかのみにスポットをあて、次に続く「Air/まごころを、君に」でキャラが取る行動を一層わかりやすくしました。

こんな映画なので、旧劇場版は、テレビ版見ていないとさっぱり意味がわかりません。
新劇場から見た人もある程度はわかるとは思います。でもそもそも「惣流・アスカ・ラングレー」は登場しませんし(出てくるのは式波・アスカ・ラングレー)、出てくる使徒との戦い方、キャラ達の正確がまるで別物。
イコールではありません。別物だと思ってみないと混乱します。
ファンの間では別ルート・周回ルートという考察もされており、この辺りはまだ不明です。

ここまで「コアなファン向け」として作った「DEATH」。
なのにその後の「Air/まごころを、君に」で観客席のシーンを実写で入れてくる挑戦状っぷりがまた面白い。
その監督・庵野秀明を、現在ドラマ「アオイホノオ」でヤスケンが演じ、ウルトラマンの服を着てブリッジしているのがこれまた面白い。

少なくとも、TV版を見ていて、今回放映される旧劇場版二作をもう一度見ておくと、金曜ロードSHOW!の新劇場版は見え方が増えて、格段に面白くなりますぜ。
(たまごまご)

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