ファミマ社員、加盟店への犯罪行為でずさん管理体制露呈 公表しない本部に加盟店が反発

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 7月、中国の食品加工会社が期限切れ鶏肉を使用していた問題が発覚。コンビニエンスストアチェーンのファミリーマート(中山勇社長)は、この会社から仕入れた材料を使用していた「ガーリックナゲット」と「ポップコーンチキン」の販売を中止するなど、騒動に揺れた。その同社で、加盟店を指導するスーパーバイザー(SV)による重大な不祥事がわかった。同社はその事実を世間には公表しておらず、企業姿勢も問われそうだ。

 今回わかったのは、東京都の多摩地区を担当していたSVが、加盟店からQUOカードを窃取し、伝票操作によって隠していたもの。ファミマ多摩・甲信地区営業統括部の部長印が押された内部文書によると、被害に遭ったのは6店で被害総額は55万9000円とされるが、「もっと多いはずだ」(加盟店主)との見方もある。

●紛糾した店長集会

 ファミマがこの不祥事を初めて内部で説明した7月15日の多摩甲信地区店長集会は大荒れとなった。集会の冒頭、多摩・甲信地区営業統括部の村井律夫営業統括部長が、こう切り出した。「今般、当社SVが、自らが担当する商品、現金などを不正に取得するという事案が発生いたしました」。事件そのものにはごく簡単にしかふれず、村井部長はこう続けた。

「加盟者の損害につきましては、調査のうえ責任をもって弁済し補填をさせていただくこととしております。また当社は、当該SVを自宅謹慎処分にし、今後厳正なる処分を下す予定でございます。……深くお詫び申し上げます。今後二度とこのようなことがなきよう、社員の教育体制を見直し、社内に構築し、また、店間伝票等の運用を改善することが急務であると理解しております。ほんとうに申し訳ございませんでした」

 何が起きたのか、そのSVは誰なのか。わけがわからないままでは、加盟店は納得できるはずもない。会場から声が上がった。「村井さん、もっと具体的に話してよ」。
質問を予想していなかったのか凍りつく村井部長に代わり、司会役の社員が「質疑応答の時間は設けておりません」と言うが、それでは収まるはずもない。

 女性店主も「ちゃんと話してください」。「これ、全加盟店の問題よ」と先ほどの男性店主が続ける。「私(不正を示す)伝票、持ってるんです。コンプライアンスの問題でしょ」。本部側は「ほかの加盟店さんの迷惑になるので、ご退場を」と収拾に躍起となるが、「もみ消すっていうの」と反発され、会場は騒然。見かねた平田満次・営業本部長補佐(常務執行役員)が割って入った。

「一部社員が不正を起こしたことは事実です。それによって加盟店さんにご迷惑をかけたことは、私ども株式会社ファミリーマートの、私を含めた幹部社員の管理不行き届きということもわかっておりますし、村井もたいへんな処分を受けるというふうになっております。私(に)もたぶん、処分が降りると思います」

 詳しい説明を求める一部加盟店主に、本部側が激高する一幕もあったという。

●QUOカード窃取の手口

 いったいSVの不正とは何か。関係者の話を総合すると、SVは自分の担当のファミマ店舗に行き、そこで売っているQUOカードを持ち出す。といっても、万引きではない。「QUOカードを貸して」と言って店員に指示し、レジでは「廃棄処理」する。つまり、QUOカードを会計上「捨てたこと」にするのだ。

「一定額以上のQUOカードの廃棄は、ファミマの会計では『営業雑費』の項目に入ります。SVは、そのマイナスを『来月、販促費として戻すから』と言うのです。廃棄額=販促費なら加盟店に実損はないのですが、きちんと埋めてもらえないことがありました」(加盟店主)

 ファミマ本部側の説明では、SVは廃棄処理をせず、自分が持ち出したQUOカードの店間伝票を起票し、ある店舗から別の店舗に移動したことにする操作もしていた。「商品、現金の取得によって、当該店舗には棚不足(あるはずの商品がないこと)が発生します。しかし当該SVは、実地棚卸前に店間伝票を不正に起票する方法を繰り返すなどして、棚不足相当額を別の店舗に移し替え、不正取得の隠蔽工作をし、他の店舗に(も)損害を与えました」(店長集会での村井部長の説明)。いわば損失の付け替えが行われていたことを認めた。

●晴れない疑問

 ここまでなら、「1社員(SV)の不祥事」と見えるかもしれない。だが取材を進めると、そうとも言い切れない事情が浮かんできた。

 その一つが、このSVがなぜ簡単に「店間伝票を不正に起票」できたか、である。ファミマの店舗が発行する伝票には当然、その店舗の「検収印」がいる。不正をごまかす伝票にも、被害にあった店舗の「印」が押されている。「トラックで商品が入って来た時にすぐ押せるように、検収印はレジの周辺に置いてあり、スタッフなら誰でも押せます。それが悪用されたのでしょう」との見方が有力だが、別の声もある。

「ファミマには、わずかですが直営店もあります。他の店舗で売れないものを直営店に押し付けるため、SVが直営店の検収印を勝手に押すことがあり、そこで崩れたモラルが今回のような不正につながったのではないでしょうか」(業界関係者)

 例えば銀行実務では、銀行員が顧客の印鑑を押すのは禁じられている。本部にとって加盟店は「独立事業主」であり「別の会社」。いくら店舗指導にあたる立場だからといって、別会社の判子を勝手に扱うのは許されまい。

 筆者の取材に対しファミマは、「社員による不正があったのは事実。当該加盟店に実害を与え、他の加盟店にもご心配をおかけしたことはお詫び申し上げる。当該社員は、社内規定にもとづいて厳重処分した。再発防止については、全社員に事実を伝え社員教育を実施している」(広報グループ)と事実関係を大筋で認めた。

 だが、不正の背景とも考えられる検収印の扱いなど管理体制について具体的に質すと、「検収印の扱いなどについては、フランチャイズ本部と加盟店との問題なので、申し訳ないが、第三者にご説明はできない」とのことであった。

 別法人である加盟店からQUOカードを窃取する行為は、犯罪にあたる可能性が高い。それを内部問題かのように主張し、公表しないままでよいのか。ファミマの「行動指針」の一つは、「世の中に向かって正直でいよう」。この指針に恥じない取り組みが本部にできるのか。加盟店主たちは、息を呑んで見つめている。
(文=北健一/ジャーナリスト)