『アジアバグース』、『美少女H』…あの深夜番組よ、もう一度
 夏がくれば思い出す。それは学生時代の夏休み、夜更かしとともに楽しんだ深夜番組の数々。それはちょっとしたエロや、異国情緒や、ゴールデンタイムやプライムタイムでは味わうことのできないインディー風味の番組の宝庫でした。

 近年CS放送などで過去のドラマやバラエティを視聴できるようになりましたが、どういうわけかこの豊かな深夜番組の名作群にはなかなかお目にかかれません。「それならばDVDなどのパッケージで」と思っても権利関係の問題なのでしょうか、VHSのままで止まっているものも。いずれにしろ今となっては完全な形で観ることが不可能に近くなってしまった思い出の深夜番組3本。エアコンを止めて生ぬるい夜風に当たると、ついつい蘇ってきてしまう甘い記憶です。

◆アジア版スター誕生『ASIA BAGUS!』

 1992年から2000年の9月まで放送していた『ASIA BAGUS!』。

 シンガポール、マレーシア、インドネシアなどの東南アジア各国のテレビ局とフジテレビが共同制作した、アジア版スター誕生のようなオーディション番組でした。出場者は欧米のヒット曲はもちろん、母国の有名曲を歌ったり自作曲を持ち寄ったりと何でもあり。しかしオーディション番組特有のピリピリとした緊張感とは異なり、アットホームでリラックスした客席も印象的でした。

 そんな番組で特筆すべきは、そのマルチリンガルな進行。とにかく放送される国が多いので、番組内でMC陣が使う言葉も中国語、マレー語、英語、日本語のチャンポン。進行の妨げになってはいけないので、いちいち断ってから言語の切り替えをしたりなどしません。そのスピードが夜更けに心地よい酩酊感を生んでいたように思います。

⇒【YouTube】Asia Bagus 1998 : volume 284 http://www.youtube.com/watch?v=-nojjsTb_Pg

『ASIA BAGUS!』の、たぶん99年か2000年ごろのエンディング曲はコレ。

⇒【YouTube】res Q me DJ SHINKAWA http://www.youtube.com/watch?v=2RsVZw72HKA

◆日本語が一切使われなかった『BEAT UK』

 そして同じ音楽番組ということで忘れがたいのが、1990年から2002年まで続いた『BEAT UK』。

 ただのチャート番組と言ってしまえばそれまでですが、日本語が一切使われなかった潔さが強く印象に残っています。イギリス人男性の“米語”ではない“英語”のナレーションをひたすらに浴びながら、ビルボードチャートとは少し色合いの異なるヒットランキングを眺める楽しさ。軽く置いてけぼりを食らっているような疎外感が、深夜には絶妙なスパイスとなりました。

 それにしてもまだそのころのUSとUKでは確実に音楽の匂いが違っていたように感じます。番組が終わってしまったのも、その境目がほとんどなくなってしまったからなのではないでしょうか。いまMTVでUS、UKの両チャートを観ると、ふとそんなことを思ってしまいます。

◆サトエリや小池栄子が初々しい『美少女H』

 最後に1998年の4月から翌年の9月まで放送されていた『美少女H』。当時売り出し中だった若手女優やアイドルを主演に据えた一話完結のドラマシリーズでした。この番組から水川あさみ、片瀬那奈、佐藤江梨子といった現在も第一線で活躍する女優が生まれました。

 そんな中で、特に素晴らしい出来だったのが第18話「父、帰る…」。清水千賀演じる女の子が刑務所から帰ってくる父親を迎えるという話なのですが、この回の脚本と演出を手掛けた豊川悦司がとにかく素晴らしかった。

 クライマックスのシーンで流れるビージーズの「To Love Somebody」はいまだに忘れることができません。主役の女の子はおろか、劇そのものをも食ってしまう音楽の使い方もあるのだなと教えられました。

 美少女H第18話「父帰る…」
⇒【ニコニコ動画】父帰る http://www.nicovideo.jp/watch/sm13924082

 さらに第14話「夏の百合」で主演を務めた小池栄子も、その頃からすでに大女優の片りんを見せていました。女優になるかどうかはともかく、この人には特別な才能があるに違いないと思わせるに十分な存在感で、深夜番組はそんなタレントを発見する場でもあるのですね。エンディング曲は、まだ説教臭くなる前のゆず。ちょうど「夏色」で大ブレークを果たした年だったでしょうか。

『美少女H』 ゆずのテーマ曲も
⇒【YouTube】ところで〜月曜日の週末 http://www.youtube.com/watch?v=iXzY3I3meQU

 というわけで、まだまだ思い出せばキリがなさそうな“夜更かしの友”。きっと皆さんにも思い出の1本があるのではないでしょうか。

<TEXT/沢渡風太>