9月6〜20日、アジアU−16選手権がタイ・バンコクで開かれる。

 この大会は、来年チリで開催されるU−17W杯のアジア予選も兼ねており、準決勝進出の4カ国に出場権が与えられることになっている。日本が出場権を獲得すれば、5大会連続出場である。

 U−17W杯というと、昨秋UAEで行なわれた前回大会がまだ記憶に新しい。

 グループリーグを3戦全勝(1−0ロシア、3−1ベネズエラ、2−1チュニジア)で1位通過した日本は、勢いに乗って上位進出を狙うも、決勝トーナメント1回戦でスウェーデンに1−2で惜敗。だが、圧倒的なボール支配率で試合の主導権を握り、相手を押し込み続けるサッカーは、現地でも話題となった。

 さらに遡(さかのぼ)れば、3年前の前々回大会(メキシコ)ではグループリーグでフランス(1−1)、アルゼンチン(3−1)といった強豪を抑えて1位通過(初戦のジャマイカ戦は1−0)。準々決勝でブラジルに2−3で敗れたものの、ベスト8進出を果たしている(決勝トーナメント1回戦はニュージーランドに6−0で勝利)。

 いずれの大会にも共通するのは、鮮やかなパスワークで相手守備網を破っていくポゼッションサッカー。日本は間違いなく世界を驚かせていた。

 そんな過去2大会でU−17日本代表を率いていたのが、吉武博文監督。現在もU−16日本代表の指揮を執り、自身3大会連続となる世界行きを目指している最中だ。

 吉武監督のもと、これまでのチームが世界の大舞台で見せてきたパフォーマンスを考えれば、今回のチームはいったいどんなサッカーを見せてくれるのだろうかと、期待は大いに膨らむ。

 もちろん、吉武監督にしても過去2回と同じレベルにとどまるつもりはない。これまでの経験を踏まえ、指揮官が選手に要求する基準は、より高いものになっている。

 例えば、各選手のポジショニング。4−3−3という基本システムはこれまでと変わりがないが、今回のチームでは選手同士が必要に応じて積極的にポジションを入れ替わることが求められている。

 以前は、むしろ各々のポジションに与えられた役割を確実にこなすことでポゼッションを高めようとしていたが、そこから一歩進んだ印象だ。吉武監督が語る。

「3トップも、中盤も、どんどんポジションを入れ替えられなくてはいけないし、例えば、センターバックであってもアンカーの位置に入れないといけない。でもそれは、パターンや形ではない。相手の守備陣形に応じて、適切に自分たちの陣形を整えられるかどうか。それに挑戦したい」

 16歳以下の選手に、数多くあるプレイの選択肢の中から「自分で責任を持って判断しなさい」とはなかなか難しい要求だが、吉武監督は「だからこそ、それを求めることで選手を刺激していきたい」と語る。

 過去の経験から明らかになった課題もある。いかにして相手を崩して得点するか、だ。

 昨秋の前回大会でも、ボールポゼッションで相手を圧倒的に上回ることはできた。試合の主導権を握るという点では、かなりの成果を挙げた。それでも、ゴール前を固める相手を崩し切れなかった。その結果、ベスト16敗退に終わったのだから、当然の課題ではある。

 実際、吉武監督は、特に3トップの左右のFWに、得点の意識を強く持つことを求めるようになった。これまでならパスをつなぐことに満足しがちだった彼らに、「点を取らないとダメなんだ」と働きかけている。いかに得点を増やすかが、今回のチームが過去2大会を成績と内容の両面で上回るための、最大のポイントになると言っていいだろう。

 吉武監督は「最後の(崩しの)ところは、まだ質が上がっていかない」と厳しい言葉を口にしながらも、こう語る。

「でも、そこは日本だけでなく、世界中、どこも課題だと思う。ブラジルW杯を見ても、結局どこの国も(最後のところを)崩せてないなと感じたし、そういう意味では、僕は逆に自信をもらったと思っている」

 確かに、ブラジルW杯で上位に進出したオランダやアルンゼンチンを見ても、それほど相手を崩して得点していたわけではなく、ロッベンやメッシといった特別な選手ひとりの力によるものが多かった。本当の意味で「崩していた」のは、ドイツくらいのものだろう。

 どこか達観したような、特有の言い回しで、吉武監督が続ける。

「そこで、もし日本が、3人、4人(のコンビネーション)で崩せるようになれば、世界の上位にランクされる可能性はある。だからこそ、今ここ(U−16代表)でできなくても、そういう刺激を選手に与えることが大切だと思う。コンパクトな相手(の守備)を崩せるかどうか。まだ合格点はあげられないが、これを続けていきたい」

 ポゼッションで圧倒し、そのうえ、ゴール前を固める相手を崩し切ってゴールを奪う。

 そんなことが本当にできれば、もはや怖いものなし。簡単なことではないが、吉武監督が率いてきた歴代のチームの進歩を見ていると、まんざら不可能ではないと思えてくるから不思議なものだ。

 吉武監督から薫陶を受けた選手たちが、世界を相手に今度はどんなサッカーを見せてくれるのか。

 期待は高まるばかりだが、そのためには、まずはU−17W杯の出場権獲得である。

浅田真樹●文 text by Asada Masaki