アギーレ新監督の下、日本代表はどう歩んでいくのか。就任会見から新体制の可能性を探る。 (C) SOCCER DIGEST

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 将来性のある選手を選び、常に競争を促し、守備をベースとして責任を持って攻守に関われる選手たちを軸にチームを作っていく。常に全選手に扉は開かれており、メンバーは随時代わるので、固まるまでは時間がかかる。
 
 来日したばかりのハビエル・アギーレ日本代表監督が語ったチーム作り構想の要諦は、ほぼ上記の通りだ。
 
 会見の冒頭に日本サッカー協会の大仁邦弥会長は、
「ブラジル・ワールドカップでのグループリーグ敗退の経験、反省をもとに、アジア、さらには世界で勝つために全力で取り組む」
 と話したが、依然として協会側から検証や反省の詳細は伝わってこない。
 
 また新監督も前任者アルベルト・ザッケローニが指揮した試合については、「過去を語るのは好きではない。誤解を招く可能性がある」と言及を避けた。
 
 しかしその代わり、アギーレ監督自身の所信表明には、まるで前任者の修正点が全て織り込まれた印象である。穿った見方をすれば、技術委員会とアギーレ監督の話し合いで、事前にブラジル大会の検証、反省に触れ、新しい指揮官に希望のメッセージを託したと取れないこともない。
 
 実際アギーレ監督によれば、原博実技術委員長は4年前にもアプローチをしているという。当時はアギーレ監督自身の「家庭の事情」があり、契約には至らなかった。
 
 しかし原技術委員長は、その後の4年間もアギーレの仕事ぶりを引き続きフォロー。「苦しいチーム事情だったサラゴサやエスパニョールをリーガ・エスパニョーラの1部残留に導いた。これはむしろ有力クラブを優勝させるより難しい」と高評価を与えた。
 
 こうして明らかになった経緯から推測すれば、すでに4年前の時点で、原技術委員長はアギーレに優先的に接触しており、ザッケローニの後任として狙いをつけていたことになる。たしかに4年前は数々の候補者に接触し、それでもザッケローニ監督のビザが間に合わず、最初の2つの親善試合は原技術委員長みずからが指揮を執ることになった。良く言えば、こうした事態を避けるために、この4年間も危機管理を怠らず、速やかに新監督との契約を果たしたという見方もできる。
 
 だがそうなると疑問なのが、4年前の南アフリカ・ワールドカップ終了時の検証だ。グループリーグ突破は果たしたが、原技術委員長は「岡田監督の守備的な戦い方では限界がある」として「もっと自らボールを保持して攻撃的に」と方向性を打ち出した。ブラジル大会を3試合合計2得点・6失点で敗れた今だから「ザッケローニ監督も決して守備を怠ったわけではない」(原技術委員長)とかばったが、逆にザッケローニ前監督は「攻撃的に」という部分は、日本協会の要望通りに実直に貫き通した。反面、もし4年前の時点でアギーレ監督と交渉がまとまり「守備をベースに」と同じ所信表明が飛び出したら、関係者もファンも大きな違和感を覚えたに違いない。
 
 さらに言えば、原技術委員長は「苦しい状況のチームを残留させた」手腕を高く評価したが、このタイプの監督が優勝戦線でも同じように素晴らしい仕事をする保証はない。降格回避がテーマのクラブと、上位クラブでは必然的にチーム作りの根幹が異なるわけで、それは欧州もJリーグの現場も変わらない。もちろん、アリーゴ・サッキやズデネク・ゼーマンのように革命的に攻撃的なスタイルで旋風を巻き起こすケースもあるが、大半は「守備をベースに」チームを構築していく。そういう意味では、代表監督次第で方向性が揺れ動く日本サッカー界の悪しき慣習は、やはり払拭できたとは言い難い。
 ただし就任会見の内容をそのまま受け取れば、アギーレ新監督がザッケローニ前監督と同じ轍を踏むことはなさそうだ。