4マスは両社共すべてマイナス、ネットは両社共好調(電通・博報堂売上:2017年11月分)(最新)
博報堂DYHD(ホールディングス)は2017年12月11日、同社グループ主要3社(博報堂、大広、読売広告社)の2017年11月分の売上高速報を公開した。一方、電通も2017年11月7日付で、同じく同社2017年11月分の単体売上高を公開している。これにより日本国内の二大広告代理店における2017年11月次の売上データが一般公開されたことになる。今回は両社の主要種目別売上高の前年同月比、そして各種指標を過去の公開値などを基に独自に算出し、その動向などから各種広告売上動向、さらには広告業界全体の動きを確認していく。

4マスは両社ともすべてマイナス


データ取得元の詳細な情報、各項目における算出上の留意事項、さらに今件カテゴリーの過去記事は【定期更新記事:電通・博報堂売上動向(月次)(電通・博報堂)】に収録・記載済み。今件記事に合わせ、そちらで確認のこと。

まずは両社の主要項目ごとの前年同月比を計算し、グラフ化する。


↑ 二大広告代理店(電通・博報堂DYHD)の2017年11月分種目別売上高前年同月比

4大従来型メディアと当サイトでは命名している(かつては4大既存メディアと表記。4マスとも呼ばれている)昔ながらの主力メディア、具体的にはテレビ・ラジオ・新聞・雑誌の動向を確認すると、今回月は両社ともすべてがマイナス。下げ幅に違いはあれど、全体的に軟調だったと判断できる。

電通の紙媒体はここしばらくの間軟調さが続いているが、今回月は新聞・雑誌共に1割超えの下げ。新聞は前回月において総選挙特需で新聞のみ大きくプラスを計上したが、それから一転した形。やはり前回月はあくまでも例外で、紙媒体離れが確実に進んでいることに変わりは無いようだ。

インターネットは両社共にプラス。また前年同月でもその時の前年同月比で大きなプラス幅(電通はプラス13.7%、博報堂DYHDは32.2%)を計上しており、反動による大きな足かせを振り払い、さらに上昇した実態がうかがえる(2年前同月比を試算すると電通はプラス30.9%、博報堂DYHDはプラス53.1%)。博報堂DYHDではこの傾向は数か月継続した動きで、同社におけるインターネット広告の成長ぶりが再確認できる。

一般広告は4大従来型メディア同様におおむね軟調。博報堂の「その他」が大きく上げているが、これは前年同月における前年同月比がマイナス49.8%と大きく下げたことの反動によるもの。2年前同月比を試算するとマイナス10.6%となる。

電通に限るが2年前比を試算すると次の通り。

↑ 参考:電通2017年11月度単体売上(前々年同月比)
↑ 参考:電通2017年11月度単体売上(前々年同月比)

4マスはすべてマイナス、特に紙媒体の下げ幅が著しい。他方インタラクティブメディアの伸びが堅調であるのも分かる。

各年11月における売上総額の推移を確認


次のグラフは電通の今世紀(2001年以降)、博報堂DYHDの2006年以降における、今回月となる11月を基準にした毎年11月分の売上高総額をグラフにしたもの。年を隔てた上で同月における比較となるので、選挙やオリンピック、FIFAワールドカップのような、広告と深い関係を有し、売り上げに大きく影響を与える事象が無い限り、季節による変動を気にせず中期的な動向を確認できる。

↑ 電通月次売上総額推移(各年11月、億円)(-2017年)
↑ 電通月次売上総額推移(各年11月、億円)(-2017年)

↑ 博報堂DYHD月次売上総額推移(各年11月、億円)(-2017年)
↑ 博報堂DYHD月次売上総額推移(各年11月、億円)(-2017年)

ITバブルの崩壊と不況、景気の回復、金融危機の勃発、リーマンショックによる景気悪化の加速、そしてそこからの立ち直り、震災や極度の円高に伴う低迷感、そして回復へ。11月動向に限ると、リーマンショックによる不況で落ち込んだ2009年を底に回復していたものの、震災とその後の超絶円高による景況感の悪化で再び失速、その後政情の変化に伴い景況感が持ち直し、それと共に売り上げも回復の動きを示しているのが分かる。しかし電通では2015年を天井に失速している感は否めない。博報堂も2016年では2015年から落ちたものの、2017年では回復の動きに転じているため、電通の今後の動向が気になるところ。

なお今件記事では日本の大手広告代理店として、売上高、取扱い領域の幅広さ、対象地域の広さ、日本国内に与える影響力など、多数の面で最上位陣営となる電通と博報堂2社の動向を精査している(もちろん日本には両社以外にも多数の代理店が存在する)。一方で両社は同程度の規模では無く、売上・取扱広告の取扱範囲には小さからぬ違いがある。ところが今件記事上記グラフでは総額では無くあくまでもそれぞれの部門における前年同月比を示し、両社の分を併記していることもあり、その値が両社の売上と誤解される場合がある。

そこで次に両社部門の具体的な売上高を併記したグラフを生成し、その実情を確認する。それぞれの部門の具体的な市場規模や、両社間における違いが、成長度合いでは無く現状の売上の観点で把握できる。

↑ 電通・博報堂DYHDの2017年11月における部門別売上高(億円)
↑ 電通・博報堂DYHDの2017年11月における部門別売上高(億円)

インターネットは毎月目覚ましい成長率を計上しているものの、売上金額=市場規模としては他のメディアと比較すると、どんぐりの背比べレベルでしかない。また、4マスとインターネット以外の一般広告市場が大きな規模を示していること、テレビの広告市場がひときわ巨大であることなどが一目でわかる。電通、博報堂共に、各社の全売り上げの4割強もの額面を示している。

一方電通と博報堂との間では、全部門で電通の方が単月売り上げは上。部門によって得手不得手があるため、マーケティング・プロモーションのようにあまり変わらない部門もあれば、テレビのように大きな差を示す部門もある。

「その他」も差異が大きいが、これは両社間における取扱い事業の違いに加え、「その他」の仕切りそのものの問題も多分にある。メディア技術の進化に伴い、複合型の広告も増え、従来の仕切りでは分別しにくいタイプの広告が増えている。それらは「どれにも当てはまりにくいので『その他』行き」となると考えられ、年々「その他」に該当する項目が増えてしまい、金額も積み増しされてしまう。

この「その他」の区分内容の膨張問題は、経産省の特定サービス産業動態統計調査における広告業の調査でも生じている。他項目も含めた再統合では調査データの連続性が失われてしまうため、「その他」の内部における仕切り分けの追加を求めたいところではある。

電通の「その他」は具体的内容として「衛星その他のメディア、メディアプランニング、スポーツ、エンタテインメント、その他コンテンツなどの業務」とあり、2分割や3分割程度の細分化は難しいのも事実。さらに細分化されると、電通と博報堂両社における共通性が無くなる可能性もあり、(両社それぞれにおいては何の問題もないのだが)比較する点では問題を抱えることになる。

また電通限定の話だが、「その他」の膨張の原因の一つとして考えられるのが、デジタルコンテンツ系の広告事業の拡大。今件記事は公開されている電通単体の売上を元にしているが、その電通に限れば今回月のインタラクティブメディア部門(「インターネット、モバイルに関する広告枠の取引業務」)の売り上げが全体に占める割合は7.7%。しかし電通の国内グループ全体の値を参照すると、インタラクティブメディアを多分に含めた「デジタル領域構成比」は21.5%(日本国内限定、2017年11月14日発表の直近四半期決算概況より)となっている。「その他」には多分にデジタル的なものが含まれている可能性は多分にある。



最近では電通の軟調ぶりが気になる。試しに2015年1月以降の4大従来型メディアとインターネット広告の前年同月比をグラフにすると次の通りとなる。

↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)
↑ 月次における4大従来型メディアとインターネット広告の広告費前年比推移(電通、2015年1月以降)

2015年後半に入ってから額面の大きなテレビがプラス圏を大よそ維持し合計額をけん引していたが、直近7か月間に渡りマイナスに沈んだままで焦りを覚える。また新聞や雑誌の軟調さは相変わらず。前回月の選挙特需がいかにイレギュラーな動きであったかがよく分かる。他方雑誌のプラス圏への顔見せは2015年4月と8月、2017年6月の3か月、新聞は2016年8月と2017年2月、同10月の3か月に限られている。

なお【電通が単体売上高の月次開示を取りやめることになった件について】でも伝えている通り、電通では2017年12月分を最後に、月次開示を取りやめることになった。今件記事も電通・博報堂の併記掲載は12月分で最後になり、それ以降は博報堂のもののみとなる。あらかじめご了承願いたい。