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北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は、2層グラフェン(原子2層厚の炭素原子シート)膜で作製した両持ち梁を機械的に上下させて動作する電子機械スイッチの原理検証に成功したと発表した。

同成果は、同大 マテリアルサイエンス研究科の水田博教授、Jian Sun博士研究員らによるもの。詳細は、米国物理学協会発行の「Applied Physics Letters」のオンライン版に掲載された。

半導体微細化の追求に伴って、MOSFETのオフリーク電流の増大が深刻な問題となっている。オフリーク電流により、システム待機時の消費電力は急増しており、現代の集積回路システムにおいてはシステム稼動時の消費電力と同等の電力消費となっている。現在、システム待機時の消費電力を低減するために、デバイス、回路、システムすべてのレベルにおいてさまざまな対策が検討されている。中でも、デバイスレベルでは、トンネルトランジスタやインパクトイオン化MOSFETなどいくつかの新原理のスイッチングトランジスタが提案され、研究開発が進められているが、未だに従来のMOSFETを凌駕するオフリーク電流特性を実現するには至っていない。

研究グループは、2004年に発見された新材料グラフェンをベースとしたナノスケールでの電子機械システム(Nano Electro-Mechanical Systems:NEMS)技術による新原理のスイッチングデバイスを提案している。今回、その第1段階として、2層グラフェンで形成した両持ち梁を機械的に上下させる2端子型のグラフェンNEMSスイッチを作製し、低電圧で繰り返しスイッチング動作させることに成功した。グラフェン両持ち梁の下部に設けた制御電極に電圧を印加すると、両持ち梁は静電的な引力で機械的に下方に引き寄せられ、制御電極表面に接触した瞬間、スイッチがオンになる。スイッチング電圧は約1.8Vと従来のシリコンを用いたNEMS素子と比較すると1桁以上低電圧であり、また、複数回のスイッチング動作を繰り返しても、スイッチング電圧の値は安定していた。さらに、スイッチオフ時において、グラフェン梁は下部電極から物理的に切り離されることから、従来のMOSFETで問題となるオフリーク電流をシャットアウトすることが可能である。一方、スイッチオン時においては、グラフェンの高いキャリア移動度によって非常に高いオン電流が実現されることから、超高速・低消費電力システムの新たな基本素子として期待されるとコメントしている。