では、アルコール依存症はどんな人が陥りやすい傾向にあるのか。東京社会医学研究所の片岡芳弘主任はこう語る。
 「依存症の要因として、遺伝的な素因が指摘されています。依存症の血縁者は、そうではない人より4倍高い率でアルコール依存症になります。このような遺伝的素因に、パーソナリティー、酒に寛容な家庭や社会環境、個人的事情や社会的な事情が加わって、依存症になる傾向が強いと考えられています」

 また、米国医療機関の調べでは、1980〜'85年にかけ、成人の8%がアルコール依存症で、5%が過去に一度アルコール依存症の体験があるというデータある。男女比は、5:1で男性に多く見られるが、女性はアルコールを多飲すると、男性より短い期間で依存症に進行すると言う研究結果もあるそうだ。

 先に触れたように、依存症の患者の場合、医療機関では精神的疾患として、臨床、症状・経過によって診断する。我々の身近にいる酒好きな人で、次のような状態が見られるようなら、アルコール依存症の可能性が高いと判断できる。

 (1)何はともあれ酒が飲みたいという願望が強い。一旦飲みだしたら途中で止められるかどうか定かではない。アルコールによって脳がマヒし、自分の意志では止められず酩酊するまで飲んでしまう。アルコール耐性が弱い体質になっている。

 (2)目が覚めている間、常にアルコールに対する渇望感が生じる。症状(強迫的飲酒)が進むと、常に酒に酔った状態・体内にアルコールがある状態でないと気が済まない。勤務中や医者から止められている時、“連続発作”がしばしば起きてしまう。そして昼間、人目を避けながらトイレなどに隠れて飲酒をする。
 さらに症状が進むと、身体の限界が来るまで「連続飲酒」を続けるようになり、体がアルコールを受け付けなくなるとしばらく断酒。回復するとまた連続飲酒を続けるパターンを繰り返す“山型飲酒サイクル”に移行する。

 (3)酒を止めると手・足が震え、じっと座っていられず、落ち着きがなくなる。が、アルコールを飲むと治まる。睡眠中は飲酒しないので血中濃度が下がり、そのため体調が悪化し、朝早く目が覚め、一杯欲しくなる。

 (4)多量の酒を飲まないと健常者と同等の酔いが回らない。いくら飲んでも酔わないので、「まだオレはアルコール依存症ではない」と、言い放ち、精神科治療などを頑固に拒否する。

 (5)飲酒で脳がマヒし、暴力的になる。

 アルコール依存症は、ヘロイン中毒や覚せい剤と同じような薬物中毒の一つだ。覚せい剤などの中毒者は、欲しい薬物を入手するために手を尽くすが、酒飲みが酒を飲むために手を尽くすようになると、アルコール依存症と見て間違いない。
 そこから抜け出すのは容易ではないが、とにかく断酒が一番。手に負えないような症状が出たなら、まずは病院の窓口で相談するのが得策である。