ここ最近、危険ドラッグと並んで飲酒運転による事故が相次ぎ社会問題化している。飲酒運転事故は特に7〜8月の夏休み期間に増えると関係機関は指摘しており、その背景にアルコール依存症という深刻な病的問題が潜んでいるという。

 飲酒人口6000万人のうち、依存症患者は230万人とされているため、飲酒者の26人に1人が同依存症という計算になる。進行性疾患や人格変更、死に至る疾患ともいわれるアルコール依存症とどう向き合うか。他人事では済まされない、深刻な問題がそこにあることを認識しよう。
 「アルコール依存症」というと、以前は「慢性アルコール中毒」と呼び、一般的には“アル中”とも呼び捨てられたものだ。「本人の意志が弱く、道徳観念や人間性が欠けているからだ」と決めつけて済ます傾向にあったが、近年は医学的見地から精神疾患の一つとして、他の薬物依存症と同じように治療を促す対象となっている。

 飲酒などアルコールの多量な摂取によって患う「アルコール依存症」は、“離脱症候群”(離脱症状)とも呼ばれる。しかし、この疾患は「酒が切れると手が震える」程度にしか捉えられてこなかったが、実際はもっと多彩で、手が震えるだけの現象では収まらないのだ。
 東京多摩総合医療センター脳神経内科の担当医はこう説明する。
 「依存症になった患者さんの多くは、診断される以前から、その不快な症状をそれとは知らずに経験していることがあります。長年、しかもある程度、多量の飲酒を続けている人が急に飲酒を止めると、数時間後にアルコール血中濃度が低下し、不眠や暑くもないのに発汗する。細かい手指の振戦や物音、光に敏感になるほか、時には幻聴など、さまざまな身体の不具合が現れます。また、大量の飲酒を続けていると、次第に酔わなくなり耐性ができます。俗に言う“飲み上がり”で、飲む量を自分ではコントロールができなくなり、酩酊状態になるのです」

 この担当医によると、アルコール依存症の弊害は、「単にアルコールの飲み過ぎだけにとどまらない」と指摘する。
 そもそもアルコールは、生体細胞にとって一種の“毒”となる。依存症の患者のほとんどは食事を取らずに酒ばかりを飲む。カロリー摂取は十分だが、栄養不良の人が多い。そのため痩せずに、かえって太ってしまう人がいる。つまり、見かけは太っているがビタミン欠乏症に陥り、とくにチアミン(ビタミンB1)が不足すると中枢神経が障害され、逆行性健忘症や思考障害、さらに神経麻痺と運動失調、混迷・無気力状態にも襲われる。
 また、CTやMRIの検査で調べると、依存症患者の半数近くが大脳に萎縮所見がみて取れ、小脳に変性をきたすと「眼振」や「運動失調」という症状も現れる。

 先ごろ、北海道小樽市で海水浴帰りの女性4人が車にひき逃げされ死傷するという事件があった。小樽署は飲食店従業員の男(31)を道交法違反などの容疑で逮捕、送検したが、男は近くの海岸で仲間たちと延々12時間に及ぶ飲酒を続けた後、事故を引き起こした。
 当然、飲酒運転は“犯罪行為”だが、アルコール依存症患者の飲酒運転の場合は“病的行動”であり、その病的行動による欲求が、アルコール依存症患者の飲酒運転に対する“罪悪感”を押し潰していると専門家は見る。