現状・先行き共に上昇。人手不足、海外情勢への懸念継続…2017年10月景気ウォッチャー調査は現状上昇・先行き上昇
内閣府は2017年11月9日付で2017年10月時点となる景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。その内容によれば現状判断DIは先月比で上昇し52.2を計上し、基準値の50.0を超える状態は維持。先行き判断DIは先月比で上昇し54.9となり、基準値の50超えは維持される形となった。結果として、現状上昇・先行き上昇の傾向となり、基調判断は「着実に持ち直している。先行きについては、人手不足や海外情勢に対する懸念もある一方、引き続き受注、設備投資等への期待がみられる」と示された。なお2016年10月分からは季節調整値による動向精査が発表内容のメインとなり、それに合わせて過去の一定期間までさかのぼる形で季節調整値も合わせ掲載されている。今回取り上げる各DIは原則として季節調整値である(【平成29年10月調査(平成29年11月9日公表):景気ウォッチャー調査】)。

現状は上昇、先行きも上昇


調査要件や文中のDI値の意味は今調査の解説記事一覧や用語解説ページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】で解説している。必要な場合はそちらで確認のこと。

2017年10月分の調査結果をまとめると次の通りとなる。

・現状判断DIは前月比プラス0.9ポイントの52.2。
 →原数値では「変わらない」が減少、「良くなっている」「やや良くなっている」「やや悪くなっている」「悪くなっている」が増加。原数値DIは49.9。
 →詳細項目は「小売関連」「飲食関連」のみ下落。「住宅関連」のプラス5.2ポイントが最大の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは先月比でプラス3.9ポイントの54.9。
 →原数値では「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が減少、「良くなる」「やや良くなる」が増加。原数値DIは53.7。
 →詳細項目では全項目でプラス。最大の上げ幅は「サービス関連」のプラス4.8ポイント。基準値の50.0を超えている項目は詳細区分では全項目。

2014年4月の消費税率引き上げの際に発生した、同年3月までの駆け込み需要の反動、そして税率上昇に伴う消費マインドの直接的・表面上の低下は同年5月頃から鎮静化の動きを示し、同年7月までにはほぼ収束している。そのおかげで同年7月においては現状DIは上昇したものの、同年8月では天候不順が大きく足を引っ張る形となり、低下。同年9月以降はその余韻を残しつつ、エネルギー価格をはじめとした輸入原材料の高騰から生じる物価上昇への懸念と消費マインドの深層部分における低迷が足かせとなり、停滞・下落を続けていた。

2014年秋以降は原油価格の大幅な下落に伴い、ガソリンや灯油価格も下落が生じ、直接自動車を利用する際のガソリン代の軽減に加え、輸送コストなどのコスト安がもたらされたことで、景況感を支え、立て直す形となった。また円安に伴い海外からの観光客が増加し、これが国内需要を喚起させる一因になっている。ガソリン価格は2015年春先までの原油価格の上昇を受けて一時値上がりの気配も見せたが、その後は再び原油価格の下落基調が強まり、これを受けてガソリンなどの石油製品の価格も安値安定化の動きを示しており、少なくとも運輸方面そのものと運輸に大きな影響を受ける業界では安堵の声が聞かれる状況となる。

ここ数年の間に起きた大きな変動要因としては、昨年6月に発生した「イギリスショック」(イギリスのEU離脱に関する国民投票の結果を受けて経済マインドが大きく揺れ動いた)が記憶に新しいが、その影響も和らぎ、持ち直しを見せている。とはいえ海外経済動向、金融市場に対する不安定感への懸念は小さくない。昨今ではとりわけ中東方面における政情不安定化によるエネルギー方面のコスト増リスク、欧州方面のテロ事案と合わせ生じる円高による輸出関連のネガティブな影響の体現化、そしてなによりも朝鮮半島情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが心配される。また消費税率の引き上げに関して消費減退の懸念もそろそろ消費動向に影響を与えてきそうではある。

なお冒頭で触れた通り、2016年10月分から各DI値は季節調整値を原則用いた上での解釈が成されている。発表値もさかのぼれるものについてはすべて季節調整値に差し替え、グラフなどを生成している(毎月公開値が微妙に変化するため、基本的に毎回入力し直している)。


↑ 景気の現状判断DI(全体)推移


↑ 景気の先行き判断DI(全体)推移

推移グラフを見れば分かる通り、直近の大きな下げ要因となったイギリスショックの急落からは大よそ回復している。

現状は高安まちまち、先行きは上昇一辺倒


それでは次に、現状・先行きそれぞれの指数動向について、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。繰り返しになるが、季節調整値であることに注意。


↑ 景気の現状判断DI(-2017年10月)

消費税率(2014年4月)改定からはすでに3年近くが経過したが、それによる消費者心理の深層部分におけるプレッシャーは継続中(税率がそのまま維持されていることに加え、消費者にとって日々の生活において欠かせない買い物のたびに意識する機会があるのだから当然ではある)。さらに食料品をはじめとする物価上昇を起因とした消費心理の減退が上乗せされ、その上社会保険料の重圧による可処分所得の低迷により、景況感は足かせ状態が続いている。

2015年春先以降の一時的な原油価格の上昇に伴いガソリン代は少しずつ値を上乗せしていたが、その後は緩やかに失速し、ガソリン価格もそれに従う形で2014年秋以降に落ち込んだ価格水準にまで再び下落。直接的な景況感の観点ではプラスの要素として継続している(企業の収益構造上の話としてはまた別)。さらに円安を受けて海外からの観光客の流入が増加し、これが消費を後押しする形となり、特に小売やサービス部門で大きくプラスの影響を受けていた。

ところが2015年夏以降中国の景気後退、厳密には経済内情が外から見た状況よりも不安定要素を多く抱えていたことが株価の大幅下落、加えてそれへの当局の対応策などから暴露される形となり、世界的なリスク資産からの逃避や景況感の悪化の動きが生じ、その波が日本にも到来した感は強い。また債務危機の最大の山場をこえたと思われた欧州方面では、中東地域からの大量の移民・難民の流入、それを大きな要因とする中東地域における戦闘の激化もまた、世界市場の不安定要素として持ち上がり、日本国内の景況感にも不安要素としてのしかかる形となっている。

その上、原油価格の低迷感が続くことで、関連企業や原油輸出を大きな糧としている諸国の経済的不安定感が強まり、金融市場にも影を落とし、相場低迷に拍車をかけている。為替の変動と原油価格の動向が、日本の株式市場、さらには景況感を左右する主要因となっているほど。そして産油国の生産調整に関わる合意を受けて原油価格は上昇し、1バレル当たりの価格が50ドル強を推移するようになり、これまでの30ドルから50ドルでのボックス圏での値動きと比べると随分と底上げされた形に。これを受け、ガソリンなどの価格も上昇の動きを示し、輸送分野をはじめと各方面へのコスト面の影響が懸念されていた。

最近ではアメリカ合衆国内の原油ストックの増加を受け、さらに中東情勢の緊迫化で原油減産の協定が有名無実になるのではとの懸念もあり、じわりと原油価格は下落の値動きに転じた。少なくとも利用側にとっては幸いな状態へとなりつつある。しかしながら直近では朝鮮半島情勢を受け、また米国に相次ぎ襲来している大型台風の影響を受けて、40ドルを底値とした50ドル台までの間におけるボックス圏での値の動きを見せつつある。

今回月の現状判断DIは総計で前月から0.9ポイントのプラス、詳細項目では「小売関係」「飲食関連」のみが下げ。ただし「飲食関連」の下げ幅がマイナス6.4ポイントと大きめなのが気になる。そして双方とも基準値を割り込んでしまった。他方、「サービス関連」「住宅関連」と2項目が新たに基準値超えを果たしたのが頼もしい。

景気の先行き判断DIは全項目がきれいに上げ。全体の上げ幅も3.9ポイントとそれなりに堅調。どの項目もそこそこな上げ方を見せており、全体的に堅調な様子。


↑ 景気の先行き判断DI(-2017年9月)

すでに前月時点で全項目が基準値を超えていたが、今月はそれをさらに上乗せする形でのプラスとなった。

選挙と台風が大きく影響


発表資料では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして各地域ごとに細分化した上で公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に係わる事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状
・気温の低下、悪天候により、セーターを含めたアウターなどの防寒衣料が活発に動いている(衣料品専門店)。
・今年度の前半と比べて消費者からの耐震やリフォーム等の問い合わせが増えている(設計事務所)。
・衆議院選挙と台風の影響かとみているが、来客数が少ない(乗用車販売店)。
・今月は週末の台風が2週間続いたため、来客数が減少した。近隣の商店街も人通りは少なく、周囲の店にも客は入っていない(一般レストラン)

■先行き
・衆議院選挙も台風シーズンも終わって、環境は良くなる(一般小売店[土産])。
・外商関連では法人需要が伸びている。周年記念品や販促品、ゴルフコンペ景品などで企業からの注文が好調に推移している。個人においても、株高を反映して富裕層を中心に高級輸入時計や美術品が動いている。この状態はしばらく続くと見込んでいる(百貨店)。
・消費税率引上げが現実味を帯びてきたことから、少しずつ上昇傾向になる(住宅販売会社)。
・自動車メーカーの不正検査問題が発覚し、受注への悪影響が懸念される(乗用車販売店)。

すでに牛丼チェーン店の営業実績などで影響が確認されているが、今年の10月は2週連続に渡り週末にかけて台風が日本を縦断し、外出機運を大きく盛り下げた。加えて衆議院議員選挙も行われたため、これも外食関連にはマイナスに働いている。今回月で飲食関連の現状DIが大きく下げ、先行きがその影響を受けていないのは、台風と選挙という2つのイレギュラー的要素による不調によるものだということが分かる。

自動車の不正検査問題が相次いで発覚しているが、これを受けて関連業界では不安の声が見受けられる。他方、株価が堅調なことによる需要の喚起も確認できる。

他方、企業回りの景況感でも自動車関連の話が相次いでいる。

■現状
・北米向けSUV車の輸出が前月に引き続き好調である。また、国内販売もSUV車を筆頭に、納車までに2.4か月かかっている(輸送用機械器具製造業)。
・需資は堅調である。取引先から売上減少等のマイナス要因を聞くことがない(金融業)

■先行き
・大手企業しか賃上げが進んでいなかったが、景気回復が続いており、中小企業でも賃金アップが進む。その結果、個人消費が若干上向いてくる(広告代理店)。
・特に自動車向け高機能樹脂の需要の増加に伴い、主要取引先も増産体制に入っており、受注も引き続き増加基調にある(化学工業)。

好感触な声が大きいからこそ、一連の不正検査問題には大いに懸念を有しているということなのだろう。また中小企業でも賃上げアップの話が出ており、これを受けて個人消費の底上げへの期待の声も聞かれる。

雇用関連ではポジティブな声が多い。

■現状
・求人数の増加が顕著であり、それに伴って正社員求人も増加している(職業安定所)。

■先行き
・年末にかけて製造業の求人が増加傾向にある(民間職業紹介機関)。

人手不足はよく聞くところではあるが、この類の話には得てして「現在の雇用市場に合わせた対価を提示しているのか」との疑問が付きまとう。今件のコメントでも全国分を見渡すと、「人手不足」の文言を多数見受けることができる(現状・先行き合わせて69件)。そのためにコストがかさむが販売価格に反映させると競争力が落ちる、売上減と経費増で困るなどの話が目に留まる。これらは見方を変えれば労働条件の改善やコストの適正化への動きにつながるだけに、正しく市場原理が作用するための一プロセスと見ることもできよう。

興味深い意見としては

「求人数の増加が今後も続くと思われるが、一方で9月30日に実施された最低賃金の引上げについて、企業からは厳しい声が聞かれる。例えば、ここ数年の急激な最低賃金の上昇が大変厳しく、新規採用者の賃金を上げれば、既存のパート、契約社員、正社員の賃金も上げなければ不満が出る。扶養控除を受けられる範囲での就労を希望するパートが、労働時間の調整を行い、人手不足に拍車がかかっているといった声も多く聞かれる。人手不足が進んでおり、今後は人件費を上げる体力のある企業と、体力のない企業の格差が広がっていく」

なるものもある。扶養控除を考慮し、労働時間を減らさざるを得ず、人手不足に拍車がかかるという発想は、現場で無ければ思いも寄らない話ではある。見方を変えれば、賃金上昇の現状にあわせて扶養控除枠の底上げを成すことで、人手不足の解消と世帯単位の収入の増加の双方が期待できるかもしれない。

また人手不足に絡んで

「人手不足の影響により省力化を進めようという動きが強まっており、生産効率改善のための設備需要などが増えてきている」

なる意見もある。コンビニのレジが好例だが、人件費の上昇が機械化を推し進める一因となる動きは各所で起きているようだ。もっともこれもある程度以上の領域に進むと、逆に該当分野の人手が余る事態に進みかねないのだが。



多分に外部的要因に左右されるところが大きい昨今の景気動向だが、国内においてはそれらの要因を抑え込むだけの景況感を回復させ、お金と商品の回転を上げるためのエネルギーとなる、消費性向を加速をつけるような材料が望まれる。「景気」とは周辺状況の雰囲気・気分と読み解くこともでき、多分に一般消費者の心境に左右される。

昨今では可処分所得を削り取る大きな要素である社会保険料の軽減を果たすための、社会保障の抜本的な見直し、以前実施されていた定率減税の復活など、打てる手立てを打ち、消費を底上げし、世の中に循環するお金の量を継続的に増加させる必要がある。少しずつの後押しでは人の心境はすぐに慣れ、当たり前のものと認識してしまうため、それだけに限らず、同時に大きな喝を与えるような策を定期的に打ち出す方が効果は高い。雑誌ならば売り上げを伸ばすため、人気作品を何本も連載するとともに、目を引く、話題を集める大作を定期的に掲載するようなもの。

世界各国が経済面で深く結びついている以上、海外での事象が日本にも小さからぬ火の粉として降りかかることになる。株価に一喜一憂しないのがベストではあるが、ポジティブな時には静かに伝え、ネガティブな時には盛り盛りで報じる昨今の報道姿勢を見るに「過剰な不安を持つな」と諭しても無理がある。むしろ内需の動きを後押しする形で、海外からのマイナス要因を打ち消すほどの、国内におけるプラス材料が望まれる。

もっとも昨今では直接影響のある半島情勢が緊迫化している。国外要因と国内要因がリンクしている状態なだけに、非常にたちの悪い話には違いない。

数か月先のことではなく、数年、数十年先を見越した、長期に渡る展望が期待できる政策、例えば上記で挙げた社会保障の抜本的な見直しに加え、社会リソースの若年層に対する重点配置、現状のあまりにも少ない配分比率の変更といった、抜本的な転換のかじ取りが求められよう。