「未来のテレビのありかた」を考える連載第3弾に登場いただくのは、映像表現を含めた新しいデジタルテクノロジーを駆使して自らのブランドのありようを伝え続けているTHEATRE PRODUCTS。日本のファッション業界きってのイノヴェイターともいえる彼らの「コミュニケーション」は、映像、ひいてはテレビというツールの進化によっていかに拡張しうるのか。デザイナーの武内昭、藤原美和両氏に訊いた。

「リアルを超えたコミュニケーションをいかに生み出すか:THEATRE PRODUCTS」の写真・リンク付きの記事はこちら

デザイナーに、手がけたデザインひとつひとつの意図を尋ねる。これほど野暮なことはないだろう。でもデザイナーは、自分たちのつくったプロダクトを理解して、デザインに込めた想いを手に取ってくれた人たちと共有したい、と考えているはずだ。

コミュニケーションを広く、深くとろうとするとき、いまあるデジタルテクノロジーはいかにエンパワーしてくれるのか。そのケーススタディとして、アパレルブランド、THEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)は優れた実例だ。

コミュニケーションを生み出す。そこまでが、デザイン

2001年のブランド創設以来、彼らは、自らのブランドがつくる世界観を伝えるために、さまざまな方法を試行している。

冒頭の動画は、2011年秋冬コレクションの発表の際に行った「ARファッションショー」のものだ。「HOUSING」をテーマに据えたコレクションにおいて鍵となるメッセージは、「生活空間のなかでのファッション」。部屋の間取りが記された専用のシートをウェブカメラにかざせば、それぞれのシチュエーションに沿ってモデルが現れ、観ている者の部屋とモデルのいる空間とがつながる仕掛けだ。

2014年秋冬コレクションでは、ショーそのものをウェブ上で公開し、同時にパブリックヴューイングを実施。都内2カ所、大阪3カ所で多くの人が目撃したショーのあり方は、従来の閉ざされたコレクションのイメージからすると、いかにもオープンで、それを着る者にとってリアルな体験だ。

他にも、ランウェイに3Dカメラを配置し、コレクションの見せ方そのものの可能性に挑戦したこともあったシアタープロダクツ。いずれにせよ特筆すべきは、そうしたコミュニケーション手段を、2人のデザイナーが自ら考え出し、実行していることだ。

自分たちの納得できるデザインを完成させる。それがデザイナーの仕事で、それ以上のアクションは必要ないのでは? そう訊ねると、武内昭は訥々と、答えてくれた。

「コミュニケーションを生み出すこと。そこまでが、デザインだと思っています。届け方を変えることに、新しい楽しみ方があると思っているから」


デザイナー、武内昭。

THE NEW TV:テレビの未来をクリエイターと考える

第3回/リアルを超えたコミュニケーションをいかに生み出すか

第2回/人の心を動かす動画に必要なのは「マジック」と「ロジック」だ

第1回/4Kテレビに何を映し出すか。それが問題だ


武内と二人三脚でデザインを担う、藤原美和。

リアルを体験する、アンリアル

ブランドにおいてアクセサリーのデザインを手がける藤原美和にとって、インスピレーションは、日常の「ひょんなところ」から現れるものなのだという。

「例えば、身につけたアクセサリーが揺れる様子。そうしたさりげない瞬間を、デザインとしてものに落とし込むことがあります。だから、その瞬間をできるだけ多くの人と共有したい、共感してもらいたい。日常に溶け込むデザインを直感的に感じてもらうのに、動画は助けになってくれる」

ものづくり全般に言えることだが、いまや出来上がったプロダクトだけをもって「完成」とは言えなくなっている。例えば衣服であれば、それを人が着て、動いて、空気が生まれて初めて完成する。日常を欠いたデザインが人々の共感を得られないのには相応の理由があるのだ。

「究極を言えば、それはリアルな場でのお客様とのコミュニケーションに尽きるのかもしれません。棚に並んだ洋服を眺めて、試着をして、持って帰るまでの体験が大切だと思っていて、そういう場所をつくりたい。もちろんeコマースには取り組んでいますが、リアルな体験から得られるものを、追求したい」

武内はこうも言う。

「動画で伝えるなんてことは、すでに多くのブランドが取り組んでいること。別に新しい表現でもありません。だから、日々『どう伝えるか』を考えて、新しい手段を頭の中にストックしている」



THE NEW TV:テレビの未来をクリエイターと考える

第3回/リアルを超えたコミュニケーションをいかに生み出すか

第2回/人の心を動かす動画に必要なのは「マジック」と「ロジック」だ

第1回/4Kテレビに何を映し出すか。それが問題だ


2013- 2014年秋冬のコレクション動画には、ランウェイを歩く姿と、部屋で同じスタイルを楽しむ姿の両シーンが同時に映し出される。衣服を着る「日常」を感じさせてくれる仕掛けだ。

メッセージを、リアルに伝える

動画でファッションを伝えるという作業には、素人目から見ても困難さを感じずにはいられない。素材が、縫製が、パターンが生む独特な質感を伝えるポテンシャルが、いまわれわれにはテクノロジーとして与えられていないからだ。

さらに、いったん公開された動画は、ユーザーの手に委ねられる。大画面・高画質なモニターで映し出されれば御の字だが、ときに小さなモバイルデヴァイスに表示されることもあれば、回線の遅さゆえにローファイな映像にだってなりうる。

だが、武内はそれをさほど、心配はしていない。

「いま4K映像が一般的になっていますが、さらに画質は向上していくでしょう? そのときぼくが期待するのは、現実のコレクションそのままに、モニターに映し出されたときの可能性です。実物と変わらない大きさ、質感をもって映し出された映像であれば、見ている人が一歩前へ踏み出すだけで、自分の見たい部分にフォーカスすることもできる。ある意味、実物と変わらない表現ができる」

デザイナーの日常から生まれたリアルなファッションが、リアルさをもってぼくらの日常に溶け込む。コミュニケーションの「新しい手段」として、高精細で大画面の映像がもたらす“リアル”な体験の可能性がいま、身近なものになりつつあるのだ。

4K対応テレビ AX800「ビエラ」|Panasonic

新しくなったビエラでは、4Kコンテンツはもちろん、一般放送やYouTube動画でさえ、高精細に映し出してくれる。この画質は、パネルそのものの品質はもちろん、独自の高画質回路も大きく貢献している。そのひとつが、入力された映像信号を出力信号に変換する際、いわゆる「光の3原色」(RGB)だけでなく補色となる3色(CMY)も加えて補正を行なう「ヘキサクロマドライブ」だ。

「マイチャンネル」という検索機能を搭載。音声リモコンにしゃべるだけで、放送中の番組や今後放送予定の番組、YouTubeなど、見たいと思う関連の動画コンテンツを放送波、Webを問わず、一気に探し出してくれる。

また、テレビを超えた情報端末としての特徴を感じられるのが、新たに追加された「インフォメーションバー」機能。画面が消えているときでもテレビの前に立つと、人感センサーが感知して画面下にさまざまな生活情報を表示する。その際にも、顔認識機能が働き自分に合った情報を自動的に表示してくれる。

THE NEW TV:テレビの未来をクリエイターと考える

モノとしての「テレビ」が進化するならば、そこに映し出されるコンテンツ自体のありかたも更新されるはずだ。ではいま「4K」という高精細な表現力を手に入れたテレビは、ネットワークにつながり情報端末として進化するテレビは、ぼくらの生活に何をもたらしてくれるのか。クリエイターたちがテレビ上で行おうとしている新しい実験を、追う。

第3回/リアルを超えたコミュニケーションをいかに生み出すか

テレビは、そこに映し出される映像は、「リアル」を伝えられるのか。デジタルテクノロジーを駆使しメッセージを発信し続けているファッションブランド「THEATRE PRODUCTS」(シアタープロダクツ)に訊く。

第2回/人の心を動かす動画に必要なのは「マジック」と「ロジック」だ

クリエイターと企業とをつなげる動画プラットフォーム「eYeKa」(アイカ)。世界中から映像のつくり手が集まる場を生み出したアイカの共同創業者に訊く、これからの動画に必要なものとは。

第1回/4Kテレビに何を映し出すか。それが問題だ

テレビの進化は、クリエイターのアタマを刺激する。映像のクオリティを更新し続けるテレビだからできることとは、何か。インターネット表現の可能性を拡げ続けているクリエイティヴ集団「Uniba」(ユニバ)に訊く。