サッカー日本代表の新監督に、メキシコ人のハビエル・アギレ氏(55歳)が就任することが正式決定した。

彼との交渉を直接担当し、7月24日の記者会見で自ら契約合意を発表した日本サッカー協会(JFA)の原博実専務理事兼技術委員長は、その選考理由として、「選手、指揮官としてのW杯での経験値」「勝負強さ」「状況に応じて戦い方を変えられる、引き出しの多さ」などを挙げた。

いずれもザッケローニ前監督には欠けていた資質で、この4年間の反省を生かしての人選だったことは理解できる。

だが、ちょっと待ってほしい。

16強入りを果たした2010年の南アフリカW杯終了後、「日本代表をさらに世界で勝たせてくれる監督」としてザックにオファーを出したのは、原氏なのである。ところが、ブラジルW杯でのザックジャパンはぶざまなグループリーグ敗退。にもかかわらず、4年前にそんな指揮官を招聘した張本人が再び、18年ロシアW杯に向けた次期監督を選んでしまったのだ……。

原氏が持つ監督人選の眼力や、サッカーに対する見識は、そこまで信頼に足るものなのか? いやそもそも、原氏とはナニモノで、どこを買われて現在のポストにまで上り詰めたのか?

スポーツ紙のJFA番記者のA氏が言う。

「現役時代は空中戦の強さを生かし、三菱重工(浦和の前身)や日本代表の得点源でした。しかし、指導者としての特筆すべき結果は、FC東京監督時代の04年ナビスコ杯制覇ぐらい。スペインのクラブをいくつか視察した経験があることから、スペインサッカー通と見られていますが、彼が率いたチームがいずれも安定した成績を残せていないことからもわかるとおり、実はさほど卓越したサッカー観を持っているわけではありません」

ただ、性格は抜群。

「裏表のない、優しくて明るいキャラクター。采配などに対する批判はともかく、彼の人柄について悪く言われるのを聞いたことがありません」(A氏)

09年、“いい人”であることが最大の取りえであるような彼が突然、代表監督の人事権を持つ技術委員長という要職に就く。

「当時の犬飼基昭JFA会長が、三菱重工サッカー部直系の後輩である原氏を引っ張った、というのがもっぱらの見方です」(A氏)

そして、彼は昨年12月から、技術委員長より上の役職である、専務理事も兼務している。

「セクハラ疑惑を報じられた前任者が辞任したため、ひとつ空いたポストが棚ボタ式に転がり込んできたのです」(A氏)

そう、原氏の眼力や見識以上に問われるべきなのが、JFAが抱えるこうした組織としての問題点なのだ。サッカージャーナリストの後藤健生(たけお)氏が指摘する。

「ブラジルW杯に至るザックの4年間の仕事についての総括は、JFA内で行なわれたのでしょう。しかし、そのザックを招聘した原氏の責任をJFAは検証せず、再び代表監督選びを任せてしまった。これだけでもおかしいのですが、専務理事というのはいわば技術委員長の雇い主で、被雇用者を査定すべき立場。雇う側と雇われる側を原博実という人物が兼ねているのですから、技術委員長の責任など検証できるはずがありません。人事そのものが、根本から矛盾しているのです」

近く原氏は、技術委員長の職からは離れることになっている。だが、後任として有力視されている霜田正浩氏は、ザックやアギレとの交渉時にサポート役をこなすなど、原氏の手駒的な存在なのだ。

4年後、アギレという原氏の置き土産を、いったいJFAの誰が正しく評価できるのだろうか?