「全英オープン」に続き「BS招待」でも惜敗を喫したセルヒオ・ガルシア(Photo by Sam GreenwoodGetty Images)

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 今回こそはセルヒオ・ガルシアの番が来てくれたらいいのに――。ブリヂストン招待の最終日が始まるとき、そう願わずにはいられなかった。最終日最終組で回るのは、ガルシアとローリー・マキロイの2人。ほんの2週前、英国ホイレイクのロイヤルリバプールで優勝争いを演じた2人が、今度は米国オハイオ州のファイアストンで再び優勝争いを迎えようとしていた。
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 全英オープンは首位を走るマキロイをガルシアが追いかけ、惜敗したのだが、今回は立場が逆転し、首位を走るガルシアをマキロイが3打差から追う形だった。マキロイは全英オープンで惜敗したときにガルシアが発した言葉を真似するかのように「セルジオにほんの少しでもプレッシャーをかけられたらいいな」と、最終日の前夜に静かに語った。
 マキロイが優勝するほうがストーリーとしては面白くなる。全英タイトルを手に入れたばかりのマキロイが、次なる大会となったブリヂストン招待で初の世界選手権シリーズ制覇を成し遂げ、続く全米プロも制したら、「トリプルクラウン達成だ」と米メディアは色めき立った。
 トリプルクラウンとは何ぞやという感じだ。そんな言葉、あったんだろうかと思ってしまうが、全英オープン、ブリヂストン招待、全米プロという3つのビッグ大会を続けざまに制することを指しているのは明らか。だが、そのトリプルクラウン達成の前に、このブリヂストン招待でマキロイが優勝し、アダム・スコットが5位以下になれば、世界ランク1位の王座が入れ替わるということで、世の中でマキロイの逆転優勝により大きな期待が集まっていたことは確かだった。
 けれど、それでもなお、ガルシアに勝ってほしかった。そもそも、ガルシアはこれまで何度もメジャーの優勝争いで悔し涙を飲み、そのたびに人間的な未熟さや日頃の悪態、横柄な振る舞いが引き合いに出され、「だから勝てない」と言われ続けてきた。
 しかし、最近のガルシアはすっかり心を入れ替え、ナイスガイになっている。もちろん、一夜にして人間性が様変わりしたわけではない。彼なりにスランプを乗り越え、尊敬する人や恋人との別れ、悲しみ、苦しみを乗り越え、新たな恋に巡り合い、人間的に成長した別人のようなガルシアになっている。
 「今、セルジオは気持ちの上でいい状態にある。それが彼のゴルフにとても役に立っている」とマキロイが言っていた。
 ガルシア自身も「今、僕は気持ちの上でとてもいい状態にいる。それがミスをいい方向へ受け止める上で役に立っている」と喜んでいた。
 そんなガルシアに、そろそろビッグなトロフィーを掲げさせてあげたいと思った。それに、いい人になったガルシアがここで勝ってくれたら、やっぱりゴルフは心だ、やっぱりビッグ大会やメジャーで「いい人が勝つ」という謂れは本当なんだと思うことができる。そうすれば、私たちの日常の中でも「いい人こそが報われる」と信じることができる。だから、ガルシアに勝ってほしかった。
 だが、結果はマキロイの逆転優勝。ガルシアは最終日の序盤にパットを続けざまに外したことで「ちょっぴり自信を失った。そこから先は自分のインスピレーションや読みを信じ切れなくなり、パットに苦しむ一日になった」と唇を噛んだ。
 せっかくナイスガイになったというのに、ガルシアが勝つ番はなかなか巡って来ない。しかし、ガルシアは成績には反映されないところで、こんな素敵ないい人ぶりを見せてくれた。
 最終日のあるホールで、ガルシアのティショットがギャラリー女性の手にはめられたダイヤモンドの指輪に当たってしまった。ダイヤモンドはボールに弾き飛ばされ、どこかへ飛んでしまったそうで、その女性も周辺の人々も一生懸命ダイヤモンド探しを始めた。ガルシアは優勝争いの真っ只中で「万が一、ダイヤモンドが見つからなかったときのために、マーシャルに女性の連絡先を聞いておくように頼んだ」。
 惜敗が決まり、クラブハウスへ引き揚げてきたガルシアは、すぐさまダイヤモンド探しの結果を尋ねた。そして、女性のダイヤモンドが無事に見つかったと知り、ほっと胸を撫で下ろした。
 「見つからなかったら、あの女性に代わりのダイヤモンドを買ってあげるつもりでいた。(ガルシアの現恋人の)キャシーがどう思うかはわからなかったけどね」
 優勝したマキロイはトリプルクラウンのうちの2つを達成し、グランドスラムに王手をかけ、世界一に輝いた。そんなマキロイに続けざまに惜敗したガルシアは、またしても戦績では輝くことができなかったけれど、彼が気遣ったダイヤモンドは、ギャラリー女性の指輪に戻り、再び輝くはず。そして、この出来事を知った人々の胸の中、記憶の中でも、ガルシアは輝くはず。
 そんな輝きの1つ1つが、いつか大きな光になって、ガルシアが誰よりも輝く日が、きっと到来するはずだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

<ゴルフ情報ALBA.Net>

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