悪女、ストーカー女、粘着女…ホラー以上に恐ろしい「怖い女」が登場する小説5選

写真拡大

「女」って、みんな強いです。陶器のような白い肌、繊細で折れそうな身体で、虫一つ殺せぬような顔をしていても、腹に秘めたパワーは、そこらの男子よりはるかに強い!

この記事の完全版を見る【動画・画像付き】

今回は、精神・肉体がタフなのはもちろん、計算高い才女や、すさまじい悪女、はたまたストーカー女まで、「怖い女」が登場する小説をタイプ別にご紹介したいと思います。

■町で評判のちょっと艶っぽいイイ女:「美幸」

まずご紹介したいのは、『噂の女』(奥田英朗/新潮社)という小説です。

中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるサラリーマン、パチンコで時間をつぶす失業保険受給中の女―。
この物語は、とある地方都市で、そんな鬱屈した日々を送る彼らの前に、謎の女「美幸」が現れる所から始まります。

美幸は決して美人ではないのに、ぽってりした唇とナイスバディで、次々と男性の目を奪います。しかし彼女の周りでは、いつもきな臭い事件が起きていて……!?

中古車ディーラーに勤めていたときは、親会社の社長の愛人で、ついには不動産業を営む60代の社長と婚約した美幸。彼女と深い付き合いがあった男は全て、不慮の事故で次々と死に追いやられるのです。
それと同時に美幸は、ダンナの保険金を手に入れ、あっという間に高級クラブの売れっ子ママになりあがります!この小説は恐らく、実際におこった連続不審死事件をもとにしているはず。

美幸は確かに、「慈悲深い心など持たない危険な女」なのですが、意外だったのは、美幸の周りの女性たちは、彼女の成功を心の中で密かに応援していたことです。

美幸のやり方は悪いとは思いますが、不満ばかり言って何一つ変わろうとしない町の人たちを尻目に、腹の立つ男を手玉に取り、確実にステップアップしていく様子は、見ていて気持ちが良いものなのかも?こんな女、皆さんはどう思われますか?

■着信40件とか普通な女:「リカ」

続いてご紹介したい小説は、第2回ホラーサスペンス大賞・大賞を受賞した『リカ』(五十嵐貴久/幻冬舎)です。

このお話は、「本間」という妻子を愛する、42歳の平凡なサラリーマンが、軽い気持ちで始めた出会い系サイトで、「リカ」と名乗る看護師の女と知り合う所から始まります。

はじめは仲良くメールや電話のやりとりをしていた二人ですが、内向的で大人しい性格だったはずのリカは、だんだんと常軌を逸した行動をし始めます。
リカは、名前はお人形のように可愛いですが、実際は、高い身長・長い髪・土色の顔、そして恐るべき体臭を持つ「化け物」です。本間がどこに行こうとも、いつだろうとも、電話をかけまくり(着信40件は普通)、本間の会社にも侵入し、勝手にパソコンの壁紙を“リカ仕様”に変えてしまったりも……。

リカに会った瞬間、速攻タクシーに乗って逃げる本間を、身長170センチの痩せたリカが車道を走り、長い髪を振り乱して追いかける様子は、まさにホラーです。

ですが筆者は、リカの全てを否定できないのが、読んでいて辛い所でした。たとえば恋愛中、メールの返事を5分待つだけでも、ものすご〜く不安になってしまうことってありますよね。そして、何度もメールを送信してしまったり……。

「好きなの。だから一緒にいたいの!」その思いが大きくなりすぎて、心が不安で爆発するまでの沸点が低くなっている時は特に、気持ちのコントロールは大切だなあ……と、我が身を省みて思ってしまいました。まさに「愛と狂気は紙一重」。リカを教訓に、注意しておきたいところです。

■出会いたくない女:「雪穂&美冬」

続いては、ミステリの王様、東野圭吾さんの『白夜行』『幻夜』(ともに集英社文庫)をご紹介します。否定説もありますが、『幻夜』は『白夜行』の続編なのでは?とも言われています。

両作に共通するのは「どん底からのし上がる女とそれを陰で支える男」という構図です。

『白夜行』は1973年、大阪で起きた迷宮入りした事件「質屋殺し」の被害者の息子「亮司」と容疑者の娘「雪穂」の19年間を追ったミステリです。

大学卒業後、雪穂は東京へ出て、ブティック経営に乗り出し、実業家として成功していくのですが、彼女の周りではいつも、不可解な凶悪犯罪が次々と起きていきます。

『幻夜』は1995年の阪神淡路大震災後に、借金返済を強いる伯父を殺してしまう「水原雅也」と、それを目撃していた「美冬」と名乗る女の、2000年の元旦までの5年間が描かれています。

二人は震災後、過去を振り払うように上京し、美冬は瞬く間に成功を収めていくのですが、そこには『白夜行』と同じく、事件と陰謀がうごめいていて……!?というストーリーです。

雪穂も美冬も、陶器のようなきめ細かな肌・アーモンド形の目・栗色の髪で、モデルのような容姿をした実業家なのですが、異常なまでの上昇志向で犯罪を犯すことも厭わないという冷酷な一面も。目をつけた男を骨の髄まで虜にし、手足のごとく使ってのしあがっていく様子は、まさにホラーです。

また、「邪魔」「気に食わない」などの理由で、自分の手は一切使わず、邪魔者を消していく所業も! 絶対に出会いたくない女です。

『白夜行』では二人の関係は対等ですが、『幻夜』は主従関係以外の何物でもありません。
上り詰める女と「愛する人と一緒になるため」と信じ、数々の犯罪に手を染め、ボロボロになっていく男……。このタイプの女性には、ただ出会わないで済むことを願うばかり……。
女のしたたかさ、非情さが怖いくらいに際立った作品です。

■男を喰う女:「後藤美雪」

ラストは、8月23日に全国公開される、市川海老蔵と柴咲コウがタッグを組んだ映画「喰女-クイメ-」の原作『誰にもあげない』(山岸きくみ/幻冬舎文庫)という小説をご紹介します。

世界中のホラーファンから支持される鬼才・三池崇史監督がジャパニーズホラーの原点「四谷怪談」に挑んだ映画「喰女-クイメ-」ですが、まず皆さん、「四谷怪談」はご存知ですか?

「四谷怪談」は様々なバリエーションが存在しますが、基本的なストーリーは「浪人・民谷(たみや)伊右衛門の女房「お岩」が、夫に裏切られ、顔の崩れる薬を飲まされ憤死。亡霊となって復讐を果たす……」というものです。要するに、男に捨てられ殺された女が、幽霊となって復讐するお話です。

『誰にもあげない』という小説も、「四谷怪談」とリンクするところがあり、舞台「真四谷怪談」で主役に抜擢された俳優の「長谷川浩介」が、恋人の有名女優「後藤美雪」を利用し尽くし、用が済んだら浮気を繰り返し、美幸が嫉妬や疑心を募らせる様子が描かれています。

女の一途な愛が怨念に変わる瞬間、男は一体どうなってしまうのでしょうか……!?愛と嫉妬が渦巻く、血みどろの恋愛ミステリです。

恋人が浮気しても、平気なフリや知らないフリをする女性って、たぶん多いと思うのですが、実際は、心はいつでも不安でたまらなくて、時に怒りで爆発しそうになることってありますよね……。嫉妬や疑心を募らせ続けた美雪の復讐は、一体どんなものなのでしょうか?

真似はできないけど、気持ちは痛いほどわかる……戦慄が走る衝撃のラストにご注目下さい!

以上、いかがでしたか? この世で一番怖いのは、実は「女」かもしれません。
しかしその怖さのベースになっているものに目を向けると、女性は誰でも、そしていつでも、「怖い女」になりうる要素を秘めていることに、今回気が付きました。

不満・嫉妬・欲望・疑心……これらは上手く使うと、女性が大きく飛躍する一助にもなりますが、女性の皆様、くれぐれもやりすぎには注意してくださいね!

良かったらこの夏、「ホラー」も良いですが「怖い女」の小説も是非読んでみて下さい。

※参考『東野圭吾 全小説ガイドブック』(洋泉社MOOK)2011年