知っているつもりの「Retinaディスプレイ」の真実と次期iPhoneやiPadではどうなるのか?

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先日、Appleの人気ノートパソコン「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」の新製品が発表された。新製品は、若干の高速化と、価格据え置き、搭載メモリの倍増など、新技術の搭載などのフルモデルチェンジではなかったが、割安感の増したお買い得度がアップした製品だ。
今回、目新しい新技術の発表はなかった「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」。今更だが製品名に付いている「Retina(レティーナ、またはレティナ)」とは、そもそもなんだろうか。
現在、「iPhone」「iPod touch」「iPad」「iPad mini」「MacBook Pro」に搭載されている「Retinaディスプレイ」について紐解いていこう。

●最初はiPhoneに搭載された「Retinaディスプレイ
その歴史は以外と浅く、最初に搭載されたのは2010年6月に発表された「iPhone 4」からだ。実は、我々の前に登場してからまだ4年の歴史しかないのである。わかりやすく言えば、前回のサッカー・ワールドカップ 南アフリカ大会の年に初お披露目された計算だ。そんなことは覚えてないという人も多いかもしれないが。

では、「Retina」という語源は何なのだろうか。英語では「網膜」を意味している。そう、人間の目にあるあの「網膜」である。

Retinaディスプレイ」を搭載したiPhone 4は、1世代前のiPhone 3GSよりディスプレイの画素数は4倍となっている。ディスプレイに顔を近づけて見てもドット(液晶の点々)が認識できないぐらい細かくなった。つまり「網膜」でもドットが認識できないディスプレイという意味から、搭載モデルに「Retinaディスプレイ」という表記を性能表に加えるようになったのだ。

●RetinaとIGZOは似ているけれど、かなり違う
以前、知人とディスプレイについてこのような会話があった。
iPad miniがRetinaディスプレイを搭載したよね」
「私の持っているシャープのタブレットもIGZO搭載なので負けていないですよ」

ん?ちょっと待って欲しい。AppleのRetinaディスプレイも、シャープのIGZOも、ディスプレイのことを指しているのは確かだが、実は、比べられるかというと、ちょっと違うのだ。

誤解を恐れずにいえば、Retinaディスプレイは、Appleが提唱する、美しいディスプレイを指すネーミング(名称)である。つまり、どのメーカーのディスプレイでも、Appleの自社製品に搭載しているディスプレイRetinaディスプレイと認定すると、それがRetinaディスプレイなのである。
対してシャープのIGZOディスプレイは、シャープが製造する省電力に優れた技術を採用したディスプレイの名称である。したがって、富士通などシャープ以外のメーカーのパソコンでもIGZO製品が採用されていれば、それはIGZOディスプレイである。

●高精細の代名詞だったRetinaディスプレイの今と、今後
登場当時は、世界でも屈指の高精細ディスプレイとして高い評価を獲得した「Retinaディスプレイ」だが、今はどうなっているのだろうか。

現在、Retinaディスプレイを採用している各最新モデルを見てみよう。
1インチ(約2.54cm)あたりのドットの数(ppiという)はこのようになっている。この数値が大きければ大きいほど、画面が高精細だ。
iPhone 5s … 326ppi
iPod touch(第5世代) … 326ppi
iPad mini Retinaディスプレイモデル … 326ppi
iPad Air … 264ppi
それぞれ200 ppi後半から300 ppi半ばである。

ちなみにライバルであるAndroidスマホのXperia Z2は423ppi、GALAXY S5は431ppiとなっており、ともに400 ppi半ばと「Retinaディスプレイ」を上回る高精細となっている。

今後、iPhoneiPadも対抗して解像度(ppi)を上げてくるのだろうか。

●果たして人間の目に見えない解像度に意味はあるのか
結論から言うと、筆者は大幅な解像度アップはないと思っている。理由としては、まさに「Retina(網膜)」がポイントなのである。

諸説あるが、人間の目でドットが認識できるのは主に300ppiが限度だとも言われている。つまり、それ以上の高精細化は、マシンパワーやバッテリーを消費するだけであり、人間の目(網膜)では認識されにくいので効果(意味)が無い可能性が大きいからだ。

さらに、iPhoneiPad向けに提供されている大量のアプリも、解像度が変わってしまうとアイコンや表示、動作の互換性という面でもアプリを作り直す必要が発生するので経済的ではない。解像度を上げたせいで、iPhone 5sでは動くが、新しいiPhoneでは動かないアプリが続出しては、デメリットにしかならない可能性があるのだ。

したがって、次期iPhoneでは、ディスプレイの大きさは変わっても、解像度は変える可能性低いという意見も多い。もし、解像度を上げた次世代Retinaディスプレイを投入するのであれば、スマートフォンに4K(横に約4000ドット)ディスプレイが搭載されるようになってからではないだろうか。

とはいえ、これはあくまでも筆者を含めた部外者の考えであり、筆者も次期iPhoneがどのようなディスプレイになるのかは、大いに期待と注目をしている。

布施 繁樹