今季から新設されたセンチュリー21レディス(7月25日〜27日/静岡県)で、2日目を終えて8アンダー、3位タイの好位置につけた木戸愛(きど・めぐみ/24歳)。最終日に逆転優勝を狙ったが、結局スコアをひとつ落として、9位タイに終わった。

 それでも、今季最高の4位タイだった日医工女子オープン(7月4〜6日/富山県)、そして5位タイでフィニッシュしたサマンサタバサ・レディース(7月18日〜20日/茨城県)に続いて、3戦連続でトップ10入り。5月には3週連続予選落ちを喫するなど低迷していたが、一時の不振からは完全に脱したようだ。が、木戸本人は何ら満足していない。目標とするプロ2勝目が、またもお預けとなったからだ。

「(優勝できなくて)本当に悔しい......。とにかく、悔しいという言葉しか出てきません。最近は、序盤でいい感じでプレイしていても、終盤のチャンスを生かし切れずに失速してしまうことが多いんです。また、練習して"2勝目"を目指します」

 名門・東北高を卒業した木戸は、2008年のプロテストに一発合格。2010年にツアー本格参戦を果たすと、翌2011年シーズンには賞金ランク49位となってシード権を獲得した。その勢いのまま、2012年シーズンにはコンスタントに上位争いに加わるようになって、ついに7月、サマンサタバサ・レディースでツアー初優勝を飾った。以来、モデルのようなスタイルのよさも相まって、一気に脚光を浴びた。さらに、身長172cmという恵まれた体格の持ち主で、関係者からも世界に羽ばたくプレイヤーとして大いに期待された。

 しかし、飛躍が見込まれた2013年シーズン。開幕戦のダイキンオーキッドレディスで3位タイと奮闘したものの、その後の木戸は、優勝はおろか、上位に名を連ねることもままならなかった。シーズン後半は予選落ちも多くなって、賞金ランクは2012年の29位から38位に後退した。

「昨年はスイングを改造しました。それが、プレイが安定しなかった理由のひとつかもしれませんが、(一昨年に)初優勝したあと、『もっと強くなりたい』とか『もっとうまくなりたい』『もっと結果を出したい』と、気持ちばかりが先走っていました」

 日本女子ツアーにはここ数年、韓国をはじめ、アジア各国のトッププロや、アマチュアで腕を鳴らした有望な若手プレイヤーが、次々に参戦してきている。選手層は年々厚みを増していて、トーナメントではちょっとしたことが勝敗を分けている。そうした状況の中で、気持ちとプレイが安定しなければ、さすがに結果を出すことはできない。

 まして、厳しいプロの世界である。何勝も勝ち星を挙げられるのは、ほんのひと握りの選手に過ぎない。アマチュア時代から活躍し、プロ入り後も常にシード権を確保している金田久美子(24歳)や藤本麻子(24歳)らも、いまだ2勝目に手が届かないでいる。まさに木戸も、彼女らと同じように2勝目の"壁"にぶち当たっている。

「まだ勝つことができなかったときも、もちろん優勝が目標でしたけど、その頃はそれに向かってがむしゃらだったというか、余計なことは何も考えていなかったかもしれません。でも、初優勝したあとは『次は2勝目!』っていう思いはあっても、いろいろなことを知って、勝利を知らなかったときよりも、あらゆることを考え過ぎてしまっているような気がします」

 木戸は優勝を経験してゴルフの怖さを知ったのだろう。それが、2勝目への"呪縛"となったのかもしれない。さらに木戸が続ける。

「例えば、以前はひとつひとつのことに対して、がむしゃらになっていい結果を前向きに追い求めていたのに、今はひとつのミスに対して『こんなミスで(スコアを落として)......』なんて、思い詰めてしまったりして......。自分(の気持ち)をコントロールするのって、すごく難しいな、と実感しています」

 とはいえ、悩みを重ねて、もがいてきた結果、今やっと木戸にも明るい兆しが見えてきた。前述のように、最近は3戦連続でトップ10入り。彼女自身「いい手応えをつかんでいます」と言う。

 その要因のひとつは、契約メーカーのイベントなどで面識のあった男子の芹澤信雄プロから、さまざまな指導を受けたことだった。全英女子オープン(7月10日〜13日/イギリス)開催中で日本ツアーがオフの際には、一緒にミニ合宿を行なって、ショートゲームが向上した。

 その際、 芹澤プロからはこんなことも言われた。

「ミスすると、自分に怒り過ぎる。そして、真面目過ぎる。もっと、ゴルフを楽しむこと」

 そうアドバイスを受けた木戸は、何か気持ちが軽くなったという。「もっと勝ちたい」という欲はあっても、勝てなくても焦ることはなくなった。そして、自分のことを客観的に見られるようにもなった。

「初優勝を経験していなければ、こうしてつらい時期を知ることもなかっただろうし、それを乗り越えられなかったかもしれません。今のような、ゴルフが楽しいと感じる時期も味わえなかったと思うんです。そうしたことを経験できて、すごく幸せなことだな、と思っています。そう思えるようになったのは、つい最近のことなんですけどね。今も、徐々に安定した結果を出せるようになって、2勝目に向けてチャレンジしている自分に、幸せを感じています。後半戦は、必ず勝利をもぎ取りたい」

 自らの現状について冷静に分析しながらも、勝利に対して飽くなき情熱を見せる木戸。2勝目の"壁"を打ち破る瞬間は、まもなく訪れるに違いない。

野崎 晃●文 text by Nozaki Akira