ムーンサイドな海外音楽の旅 第1回:米西海岸の音楽ベンチャーブーム

写真拡大

はじめまして、「同人音楽超まとめ (http://dm-matome.com/) 」なるものをやっております、AnitaSunと申します。

先日開催されたメディアミックス即売会・M3。これに合わせて制作した、当日配布される音楽の試聴ができるWebサイト「同人音楽超まとめ」の件が発端となり、あれよあれよという間にこのようなものを連載することになってしまいました。お楽しみに御覧ください!

これからご紹介する「ムーンサイド」な文化のあらまし


丁度YouTubeやSoundcloudといった楽曲やMVが視聴出来るWebサービスが全盛を迎えるのに伴って、日本のメディアやレコードショップに対して海を越えてデモ音源を送ってくる欧米のインディー(≠ズ)レーベルの割合はめっきりと減りました。

(「インディー」という用語は、欧米では、広義にはDIY的に活動する音楽家のシーンのことを指すが、音楽ジャンル的にもオルタナ・ソフトロック・クラブの「色」がついた用語で、ジャンル名でもある。日本の「インディーズ」とはまた大分違ったサウンドである。)

さらには、まるで日本の多くの同人音楽のように、インディーレーベル(法人格)にさえ所属せず、完全に個人の独力で活動をするアーティストも非常に増えています。

このような流れも影響してか否か、一部のクラブ系の音楽を除いて、海外からのアンダーグラウンドな音楽の情報がめっきり減ったものの、欧米では非常に奇妙で新しい「ムーンサイド」なシーンがボコボコと、ものすごい勢いで乱立しつつあります。

日本では2007年以降、初音ミクなどを中心に音楽ビジネスの構造が大きく変化しました。

時を同じくして、あちら側の国々でも日本のシーンとは異なる劇的変化があり、ここ数年の音楽事情の動向を追っていない方々にとっては、きっと唖然とするに違いない状況が広がっています。

中には、家庭用ゲーム機への対応などでますます広がるインディーゲームシーンやグラフィックデザイン、巡り巡って日本のイラストや映像にまで影響を与え始めているシーンまで登場しはじめており、全く目が離せません!

ということで、これから連載数回にわたって、この不思議な「ムーンサイド」な海外の音楽事情を、順を追ってご紹介していきます。

この連載では、およそ以下のような音楽を紹介します。各曲については後々、回を重ねながらきちんとご紹介しますので、まずはさらっと流してお聞きください。

まず聞いておきたいムーンサイドな楽曲たち


I Fight Dragons - I Fight Ganon (Legend of Zelda Theme - Live)




Fitz and The Tantrums - Don't Gotta Work It Out




Washed Out - "Hold Out" Official Music Video




Adventure from FEZ OST by Disasterpeace




Lazerhawk - Visitors




Starcadian - HE^RT (Official Music Video)




情報デスクVIRTUAL - 風船ガムBUBBLEGUM




Amanaemonesia




事前に知っておくべき、驚くほど知られざること。 YouTube以降の海外の音楽Webサービス事情



前知識としてまずは事前に解説しておくべきことがあります。

それは、2007年以降の海外、特に米西海岸で発生した、音楽ベンチャーサービスブームについて。

2007年以降、海外では音楽関連、特にメジャーレーベルの資本から一歩離れて活動するインディー音楽に関連した新興Webサービスを、こぞってベンチャー企業が立ち上げるブームが発生。

それに対して、ベンチャーキャピタルも惜しみない投資を続けてきました。 そのサービスの数は業界紙に掲載されたレベルのものに限定しても、少なく見積もって100以上

この中には、日本に分かりやすく伝わったYouTube、SoundCloud、Beatport、そしてだいぶ遅れてようやく情報が伝わりつつあるSpotifyのほかにも、音楽シーンに非常に大きな影響を与えたサービスが多数存在します。

ある音楽について語る時、それが生み出されるに至った時代背景を形成しているのは、音楽的ムーブメントだけではなく、音楽の周辺サービスでもあるからです。

そこで、まず第1回は、超特急で、これらの国内では馴染みの薄いものも含めた音楽サービスを30個強、ご紹介します!

【音楽ブログ文化と、新興音楽メディア】


楽曲を紹介するブログやニュースサイトといったメディアの分野では、非常に多岐にわたるサイトが登場しました。

例えば、海外版「ナタリー」のような立ち位置で、新譜アルバムにバシバシ「採点」をしていくスタイルのレビューが特徴的な、インディー音楽シーンで最も影響力を持つWeb音楽誌「Pitchfork」。

pitchfork

Pitchfork



または、欧米では大量の視聴音源を貼り付けた音楽ブログが非常に盛んなことから、数百とある有名音楽ブログ上の視聴音源を「人力収集」して自動プレイしていく仕組みを作りあげた、音楽発掘サービス「The Hype Machine」。

The Hype Machine

The Hype Machine



そして、現在も雨後のたけのこのように大量発生し続ける音楽スタートアップサービスの記事を中心に据えた、業界最大の音楽テクノロジー系ニュースサイト「hypebot」等々、様々な形で音楽の紹介をする環境が生まれました。

【音楽配信、流通代行】


ご存じ、世界最大の音楽配信ストア「iTunes Store」と、クラブミュージック最大の音楽配信ストア「Beatport」。

これらの有力対抗馬として、「AmazonMP3」のほか、音楽ダウンロード配信では業界最安値(!?)の配信価格を誇る「eMusic」といったサービスが勢力を争っています。

一方、このような世界中の音楽配信ストアやCDショップに自主制作の作品でも手軽に一括配信するための「TuneCore」や「CD Baby」など、流通代行サービスも登場しています。

【ラジオ・サブスクリプション(定額)サービス】


こちらの分野は、遅ればせながらここ2年ほどでようやく日本にも情報が入ってきています!

やはり最大のサービスといえば、ユーザー数1億5000超(!)を誇り、ユーザーの音楽の趣味に合わせて自動で編成を変える、世界最大のWeb音楽ラジオ「Pandora Radio」。

そこに真っ向から対立するのが、過去隆盛した定額ストリーミングサービス「Rhapsody」の再来にして、上に挙げた「Pitchfork」などと縦横無尽にAPI連携する定額音楽視聴サービス「Spotify」でしょう。

spotify

Spotify



さらには、Spotifyの対抗勢力として、flacなどの高音質配信のサポートや、お勧め楽曲の選曲エンジンに注力した定額音楽視聴サービス「Beats Music」、権利的にはブラックながら“アップロードした人に広告費の一部をキャッシュバックする”攻めっ攻めな音楽アップロードサービス「Grooveshark」など、ラジオ・サブスクリプションサービスは、新興音楽サービスの中でも花形ジャンルのひとつです。

【SNS、コミュニティ】


クラブ系の匂いの強かった「SoundCloud」に対して、よりジャンルレスなコミュニティとしては、実質的な「Myspace」の後釜となった「ReverbNation」や、そのMyspaceの復活のために吸収された「iLike」などが存在しています。

また、先日惜しまれながらも閉鎖してしまいましたが、Web上のクラブでDJプレイが楽しめる「Turntable.fm」も見過ごせません。

一時の「ReverbNation」の注目度は本当に凄まじかった!(音楽SNSの決定打となるには、あと一歩のところで届きませんでしたが・・・)

【レジサービス(音源、チケット、アーティストグッズ)】


音楽配信&フィジカルCD&グッズ販売ストア開設サービス「Bandcamp」は、日本でもそれなりに有名です。

bandcamp

Bandcamp



プレスリリース等だけでなく、ユーザーからの情報提供によっても世界中のコンサート情報を収集し尽くし、ユーザーの好みや居住地域に近いライブ情報を自動配信する「Songkick」。

さらに、「Bandcamp」の対抗馬にしてYouTubeとの統合も果たした、ライブチケットなども販売可能でプロモ機能が非常に充実している「Topspin」などをはじめ、この分野にも強力なサービスが多数立ち上がっています。

【プレイリスト、コレクションアイテム共有サービス】


音楽趣味の共有サービスとしては、ユーザーが作った“8曲から成る”プレイリストを共有しあう「8tracks」、レアなコレクションの情報を共有しあい、場合によってその場でユーザー同士の売買も可能な「Discogs」。

今の気分からおすすめ楽曲をチョイスしてくれるプレイリストサービス「Stereomood」など、ジャンルの性質上、この辺りにはマイナーかつ「インディー」な音楽のフックアップに力を注ぐサービスがひしめいています。

stereomood

Stereomood



【音楽ディスカバリーサービス】


上記サービスと分ける境目が少々曖昧ですが……最近は少々下火気味(?)ながら、いち早くゲーミフィケーションの要素を取り入れて強烈な盛り上がりを見せた音楽投稿合戦サービス「thesixtyone」(と、話題の大きさこそthesixtyoneほどではなかったにせよ、アクセス数ならそれ以上だった「OurStage」)。

thesixtyone

thesixtyone



一部の国では必須音楽アプリのひとつに数えられ、究極の“このアーティストが好きな人はこのアーティストもオススメ!”を実現するモバイル端末アプリ「Discovr Music」。

DiscovrMusic

Discovr Music



そして先ほどもご紹介した、最強の垂れ流し系音楽Webサイト「The Hype Machine」など、非常に粒ぞろいなサービスが揃っています……が、ついぞ日本に情報が入ってこない分野でもあります。

【PR/データ解析サービス】


このあたりになると、利用時の言語の壁の影響か、もはや完全に日本のメディアでは取り上げられていません!

しかし、これらが中々どうしてハイパーな発展を遂げている人気スタートアップ分野なのです。

Webページ制作の知識がなくてもバンドのHPが作れ、しかもその場で音楽配信やCD、グッズなども売れてしまい、ブログにもFacebookにどこにでも埋め込みができ、ファンクラブ運営・分析も可能……そんな夢のようなWebサイト制作ツール「Bandzoogle」や、50万組ものインディーアーティストが使用している「BandPage」。

またまた登場「ReverbNation」内の、ファンにPRを手伝わせて得点を競わせあうゲーミフィケーション機能、世界中のWebサイトから毎日1回エゴサーチをして統計を取ってくれる機能などなど、とにかくアイデアがすごい!

bandpage

BandPage



以上、楽曲紹介の前にまずは超特急で音楽スタートアップ事情を紹介してしまいましたが、いかがだったでしょうか。

前半こそご存じのサービスも多かったと思いますが、後半のWebサービスには、日本でほとんど知られていないサービスも多数あったかのではないでしょうか。

冒頭で、日本にアーティスト情報を送ってくるレーベルが相対的に減っているのではないか、というお話をしましたが、これだけDIYでの音楽活動を可能にする環境が整い、それまで必要とされてきた工程をWebサービスが代行しはじめたことと、それらの一部が日本向けにサービスをしていないことを鑑みますと、そう分析したくなる気持ちも多少は共感いただけるかと思います。

音楽関連サービスがこれだけ日本にきちんと伝わっていないわけですから、当然そこで創りだされる音楽シーンそのものも、それなりの規模に成長しながらも十分に伝わっていない部分が存在するであろうことは、想像するに難くないのではないでしょうか。

そう、そんな音楽シーンをご紹介する連載が、まさにこの記事なのです!

ああ〜っ、ここまで説明が長かった。

では、次回からようやくムーンサイドな海外音楽シーンをご紹介していきます。

斯う、ご期待!