ひと夏かけても解けない「謎」に、挑戦してみる? AR三兄弟とホイチョイのタッグ

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人気開発ユニットのAR三兄弟が、「東京上級ゲーム」なる体験型ゲームアプリを開発した。しかも共同で企画&制作をしたのは、『気まぐれコンセプト』や『カノッサの屈辱』、そして『私をスキーに連れてって』などで知られるホイチョイ・プロダクションズ。違和感があるようなないようなこのタッグを駆動させたのは、果たしてどのようなパッションだったのだろうか? AR三兄弟・長男の川田十夢、そしてホイチョイ・プロダクションズ代表取締役社長の馬場康夫に、開発経緯を訊いた。

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「ねえねえ、ちょっと聞いてよ。この謎、わかる?」。アプリを立ち上げると、女優の石橋杏奈扮する「史子」がそう語りかけてくる。「東京上級ゲーム」のオープニングだ。

史子とは、現在テレビ朝日にて放送中の「東京上級デート2」に登場するキャラクターで、彼女は、大学で歴史を専攻する筋金入りの歴女という設定になっている。史子の父親は歴史学者であったが、江戸の町に関するある大きな謎を研究している途中で突如失踪してしまう。史子は残された1冊の手帳を手がかりに、頼りにならない同級生と2人で、父が追っていた江戸の謎を探し求めるのだが…。

「頼りにならない同級生」とは視聴者のことで、史子とともに知られざる江戸・東京の歴史を紐解く過程そのものが極上のデートコースになっている、というのが「東京上級デート2」の構造だ。その世界観の中に、「頼りにならない同級生」としてリアルに没入できるのが「東京上級ゲーム」、という位置づけである。まずは、この企画がスタートしたいきさつを馬場が語ってくれた。


馬場 タイミングがよかったんですよ。ちょうど同じ時期に、テレビ朝日さんから夏祭りのイヴェントの相談を受けていて、一方で川田さんからは、ARを使ったゲームを一緒につくりませんか、という相談をもちかけられたんです。だったら、スマホとARを使って番組の中に入ったような体験が味わえる謎解きの仕組みを、つくってみようということになったんです。謎解きに、ひと夏かかっちゃうようなヤツをね。

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東京上級ゲーム」/AR三兄弟と作家エージェント「コルク」が共同設立した「トルク」が専用アプリを開発。ホイチョイ・プロダクションが 「謎」をプロデュース。テレビ朝日が番組提供、電通がトータルプロデュースを担当している。アプリの対応機器/OSはiOS6.0以上(iPhone 4S以上)、Android OS 4.0以上(動作確認機種:Galaxy Nexus/Galaxy S3/Galaxy S2/Xperia GX/Xperia A/AQUOS PHONE SH-09D)。

──ゲームをつくろうという川田さんのモチヴェーションの源は、何だったのですか?

川田 多くの人にとってのARって、何かしらの目印があって、それに向けてスマホをかざすというだけのことじゃないですか。つまり、かざす理由が常に明確だったんです。そこに謎を仕掛けるということで、能動的に次の問題を探すという新しい行為が生まれるのではないかと。

あと「ARの持ち時間」というのが、ぼくの中ではずっとテーマとしてあったんです。スマホをかざして何かが出てくる、というARの一連の行為は、正味5秒から20秒くらいですよね。でも今回のように、点と点をつないでいくような謎解きゲームというかたちを取り、楽しみをもって次へ行くということになってくると、だんだん持ち時間は増えていくんじゃないかなと。

──いまの時点では限定化されているARの可能性を、押し広げるチャレンジだったわけですね。

川田 そもそも、ARの本質は虚と実の間にあると考えています。だから、テレビ番組とか映画とか小説とか、もっといろいろなものに入ったり出たりできる体験そのものをつくるべきではないかと。テクノロジーとエンターテインメントの必然的な出会いってまだまだ少ないのですが、今回は、いいきっかけになるんじゃないかと思っています。

ぼくらは今回、新しいゲームのコントローラーをつくることになったのですが、最初から多くの人を魅了するようなコンテンツのイメージまではなかったので、ここはホイチョイの馬場さんなんじゃないかと、ご協力いただけるようお願いしました。なぜかと言うと、以前馬場さんが企画された「黄色い箱の謎」というゲームがとても秀逸で、それが念頭にあったからなんです。

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馬場 「黄色い箱の謎」は、現実世界に謎をばらまいて、その矢印をどんどん結んでいって答えを探すという体験型謎解きゲームでした。ちょうど10年前になりますね。まず最初、朝日新聞に「謎を解くと先着100人に10万円がもらえるらしい」という全面広告を出したんです。それがスタートの合図です。

川田 「813、20時きっかりに訪れよ」というのが最初の問題でしたよね。

馬場 「813」というのはJ-WAVEの周波数なんです。20時にJ-WAVEに行くと、ジョン・カビラが「よくここがわかったな、クックックッ」と言うわけですよ。そんな感じで、次々に謎をばらまいていきました。このときも主催はテレビ朝日さんだったので、ロビーにガラスの箱を置き、その中に1千万円を入れておいたんです。

川田 それがさらに話題になりました。

馬場 こんな感じの謎解きゲームを、ぼくは中学生の頃からやっていたんです。朝から授業を聞かないでずっと謎を考えて、例えば教室の花瓶の下とかいろいろなところに謎が書かれた小さな紙を隠しておいて、放課後になったらみんなが探偵になってそれを追いかける、といったことを毎日やっていました。

大人になってからも、折を見つけては謎解きゲームを仕掛けましたね。そのおかげ、謎を連鎖的に考える感覚は、相当磨かれたと思います(笑)。例えば、B4サイズの紙に「地下鉄銀座線○○駅」と書いた謎を渡したとします。これは、その駅のB4出口に行くと紙が貼ってあって、次の謎が書いてあるわけですが、紙のサイズに意味があると思わせることにもテクニックが必要なんです。そのあたりの感覚は、一朝一夕に身につくものではありません(笑)。

──今回の「東京上級ゲーム」には、いったいどれくらいの謎が織り込まれているのでしょうか?

川田 あまり詳しくは言えませんが、ARの仕掛けが7つくらい。それ以外にも、膨大な謎がちりばめられていて、ちょっともう次元を超えている感じです(笑)。

アプリの中に虫眼鏡機能があって、謎の答えとおぼしきものにかざすと解決できるという仕組みなのですが、謎が早く解けると「史子さん」が超ほめてくれるし、あんまり早くないと、ちょっと怒られるんです。そういうインタラクションも、いまだかつてない感じです。

馬場 10年前にはできなかった、それこそここ5年以内に登場したテクノロジーが、わりとさりげなく使われていますよね。ARを使うと、町が謎を語りはじめるわけですから、もう面白くてしょうがないです。ぼくとしては、中学生の頃からやっているゲームを、拡大再生産している気分です。

川田 それで言うと今回、ゲームでストーリーを進める面白さというのはどういうことなのかと思って、「ポートピア殺人事件」だったり「かまいたちの夜」だったりを改めて研究したんですけどね。

それで、ストーリーマップの種類だとか、すべてにフラグを立てなくていいだとか、いろいろ分かったのですが、今回確実に新しいと言えるのは、「場所と時間」なんです。ある時間に何かをすることで謎が解けるとか、その場所に行ってその場所で立ち上がったものが、スクリーンの向こう側でリアクションしてくるというのは、これまでのゲーム史からいっても、はじめてのことだと思います。

これらはみんな、スマホじゃないとできないことでもあります。みんな、スマホでゲームをやっているけれど、場所とか時間はそんなに意識しませんよね。せいぜい、パズドラの“曜日ダンジョン”くらいでしょうか。その点この「東京上級ゲーム」は、場所と時間と物語がつながった瞬間に立ち上がるシズル感みたいなものを、発見できたと思っています。いままでのゲームにも映画にもテレビにも存在しなかった、固有の感覚です。

馬場 そういえば10年前の「黄色い箱の謎」のときには、既に2ちゃんねるは全盛だったので、「答えをバンバン書かれたらたまらないな」と思って、いろいろ対策を講じたんですよ。書き込みを見つけたら、すぐに「違うよ、こっちだよ」と迎撃する処理班を用意していたのですが、ほとんど出番はなかった。なぜかと言うと、すごい自浄作用があったんです。ちょっとでも答えをばらすと、「面白がっているのに、何やるんだ!」とすぐ袋だたきに遭っていた。その自浄作用が、この10年でどうなっているかは、ある程度今回わかる気がします。個人的には、だいぶモラルが下がっているんじゃないかと思っていますけどね。

川田 いまだと、うっかりNAVERでまとめられちゃうみたいなことですね。

馬場 ああ、それ、やりそうだなぁ(笑)。「東京上級ゲーム」は、「かわいい子とデートしたいんだったら、それなりに足を使わないといけない!」という至極まっとうなことを学んでもらう側面もあるんですけどね。

川田 寺山修司の「書を捨てよ、町へ出よう」ではありませんが、行動半径がついつい狭くなりがちの最近の人たちにとって、このゲームが何かしらの行動喚起につながるきっかけになると、いいんですけどね。

馬場 まあ、本気で向き合ってもたっぷりひと夏はかかるから、かなりの行動を強いられますけどね(笑)。

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