――一歩一歩、確実に伸ばしていく手ほどきをしながら、選手たち自らが成長するための糸口を探り当てるように仕向けるわけですね?
「あるひとつの局面を切り取って、もしかしたら、ひとりでは打開できないかもしれない。でもふたりならできる、3人ならもっとスピードを上げてできると、そうした側面にも気付かせてあげたい。ひとりの選手が、自分は頑張らなければいけないと感じているけど、誰々と組んだら自分はもっと活かしてもらえる、そして自分も相手を活かしてあげられると、そういう関係性を築くのも大事なんです。いわば、その集合体がサッカーでもある。それができる集団になれるよう、私もメッセージを強く込めて教えていきたい」
――リオ五輪予選を兼ねるAFC U-22選手権は、一次予選も本大会も集中開催となります。これまではホーム&アウェー形式で、一定期間、戦いながらチーム強化につなげられたと思いますが、真剣勝負の場が限られている今予選では、どのようなビジョンで臨むのでしょうか?
「なによりもまずは、所属クラブで試合に絡むように促していくなかで、各クラブで代表活動から戻ってきた選手には、代表候補なんだという立場に対しても、彼らがその意識を強く持てるよう、厳しく教育してほしいと思っています。強化担当者会議の場でも、改めて私の考えを話させてもらいました。『私だけがこのU-21代表を強くするわけではないし、ここにいる皆さんと一緒になって代表選手を育てていきたい』というようなことも伝えました。日の丸を背負って戦っている選手たちが逞しく成長するためには、所属クラブが一番の厳しさを持って、日々接することがなによりも重要だと考えています」
 
――当事者意識を皆が持つべきだ、ということですね?
「私はみんなを巻き込みたいと思っているんですよ。そういうスタンスでこのチームを作っていき、オリンピックを目指したい。代表に選ばれたから自分たちだけがパワーを出していればいいっていうものではない。誰かのパワーももらいながら強くなっていく。結局、そうした流れが、最終的には日本サッカーのためになると思うんです」
 
――具体的な強化策としてはどのような考えをお持ちですか?
「今のU-21世代は、U-20ワールドカップの出場を逃し、世界大会を経験できていない。それだけに、どれだけ国際経験を積ませるかも大事になってくる。だからできるだけ多くの国際試合を組んであげたい。一案としては、欧州ではすでに取り組まれていますが、国際AマッチデーにA代表が試合をする時、U-21代表も一緒に試合ができれば理想的です。今すぐには難しそうなので、今後実現できればと考えています。また今年に関しては、9月に韓国でのアジア競技大会に出場しますが、その後にどこかのタイミングで、海外遠征ができればと思っています。年末にかけては、日本サッカー界のカレンダーを見ても、スケジュール的に厳しいのは重々承知していますが、皆さんの協力を仰いで、なんとか可能性を見出していって、こちらもぜひ実現させたい」
――これまでの慣例にならえば、今後はA代表のコーチも兼任されると思いますが、正式に発表された暁には、どのような関わり方をイメージされていますか?(注/取材は7月10日に実施)。
「監督の意図していることを、選手たちに正確に伝える。監督が外国人であれば、なおさらそれは大事なことだと認識しています。外国人は日本人に比べて、思い切って割り切れる傾向にあると思うんです。一方の日本人は、相手に割り切られると、どこか弱さを露呈してしまう気がします。そうならないための選手へのメンタルコントロールも意識して取り組んでいきたいです」