">『母子密着と育児障害』(講談社)

写真拡大

「週刊文春」(文藝春秋)2014年7月10日号に掲載された、「愛子さま衝撃のお言葉『先生大嫌い。私の言うこときかないから』」という記事が波紋を呼んでいる。皇太子夫妻の長女、敬宮(としのみや)愛子内親王を巡っては、学習院初等科に通学していた際にも不登校が取り沙汰されたり、その後、雅子妃が通学時はもとより授業中も教室内で見守っているという報道がなされたり、校外学習への同伴が批判されたり。一部メディアでは、2人は「母子密着」ではないかという指摘も上がっている。

 近年、過度な密着が原因で、「子どもをうまく育てられない」という育児障害をもった母親が増えているという。では、その原因は一体何なのだろうか?

『母子密着と育児障害』(講談社)の著者・田中喜美子氏によると、母子密着の大きな原因のひとつは、「スキンシップ礼賛」という世間の風潮にあるという。子育ては母親が主体となってやるものという価値観がいまだ根強い日本にあって、2時間おきの授乳をはじめ、新生児の世話は心身ともにエネルギーが削られる。さらには「抱っこ/授乳しないのはかわいそう」という社会の圧力があるため、子が泣き始めると母親は抱っこしたり、授乳したりとまさに密着状態となる。

 また、体力の消耗を防ぐために、授乳しながら寝る「添い寝」をする母親が多いが、実はこれが母子密着の第一歩なのだという。「いつも手の届くところに母親がいて、泣けばあやしてくれるという経験を積んだ子どもは、なんでも自分の要求を通すことができる」と思い込むようになるというのだ。母親の側も添い寝中とはいえ「無意識のうちに布団を直したり、泣き声に応答したり、眠っていても母親業を続けている」状態となり、知らず知らずのうちに「子ども中心主義」へ傾倒していくと田中氏は指摘する。

 では、母子密着の弊害はどんなところに現れるのか。過度の干渉によって「ほしいと思う前に与えられ、やりたいと思う前に指示されてしまう子どもたち」の多くは、やる気や自発性、共感力が乏しくなるという。田中氏はこれを、「生きる力」の衰弱と表現している。

 母子密着に陥らないためには、どうすればいいのか。田中氏は「五つのけじめ」を3歳までにしつければ、十分という。それは以下のようなものだ。

1.食事(授乳もその中に入る)は規則的に。食事の間はちゃんと座っている。
2.歩けるところは歩く。やたら「だっこ」とねだらない。
3.夜は大体きまった時間に一人で就寝する。
4.テレビは決まったものしか見ない。1日に約1時間。
5.いつも相手をしてもらわなくても、ある程度まで機嫌よく一人遊びができる。

 これらは一見シンプルなように見えるが、実際に子どもを持つ人にとってはかなりきつい苦行だろう。

 このしつけは、母親だけでなく、父親や祖父母など周囲の人たちの協力と理解がなければ実現できない。母子密着を本当の意味で回避するのは、密室育児と呼ばれるような母子だけの孤独な育児ではなく、困った時に手を差し伸べてくれる環境なのかもしれない。
(江崎理生)