『ぜんぶ女子校のせいだ!』(KADOKAWA)

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 2013年の新語・流行語大賞にもノミネートされ、現代女性を語る上で欠かせない言葉になった「こじらせ女子」。自分の女性性に自信を持てず、過度に自己評価が低かったり、他人に素直に甘えることができなかったりする女性を指し、ひきこもり型・奇抜ファッション型・大和撫子型と細かく分類されるまでになった。それだけ多くの人が、「こじらせ」ている自分を持て余してきたということなのだが、こじらせの原因はどこにあるのだろうか?

 恋愛でのつまづきだったり、容姿に関するコンプレックスだったり、その要素はさまざま考えられるが、「女子校に入ったせいで人格をこじらせた」というのが、『鈴木さん』(スクエア・エニックス)、『ブルーハイジ』(講談社)などで知られるマンガ家のヤマダ。そこで彼女のコミックエッセイ『ぜんぶ女子校のせいだ!』(KADOKAWA)を通し、女子校のどんなところがこじらせ女子を生み出しているのか、実態を見てみよう。

 例えばおやつ。学校にポッキーやチョコレートなどのお菓子を隠し持ってくるのは、共学校でもよく見かけるもの。しかし、女子校ともなると、男子の目がないのをいいことに、おやつ選びも"奔放"。冬場は石油ストーブという強力アイテムがあるため、炙ったスルメも定番おやつなのだ。スルメに飽きて、ベーコンをストーブで焼いていると、滴った油が原因で軽いボヤ騒ぎに......。そこまでしても削げないおやつへの執念は、好きなものためなら周囲の目を厭わないこじらせ女子に通じるものがある。

 男子との出会いを求めて、公共プールに行ったときも、こじらせ女子の悪しき一面が出てしまう。まずは水着。男ウケのいいリボンやフリルのビキニなんて着るはずもなく、中学校のときのゼッケンが張り付いたスクール水着姿で堂々と登場。そんなダサい格好ながら、ナンパされるために園内をぶらぶら練り歩く......けれど案の定、「誰からも声を掛けられる事なく園内を一周」。挙句のはてに、はぐれた友達がナンパされるのを目撃してしまって、溢れ出るのは殺意だけ! モテるための努力や気遣いの方向を間違えているのに、僻み根性だけが育ってしまうことで、こじらせ女子の発芽がすくすく育ってしまうのだ。

 "こじらせ"を量産する女子校の土壌を象徴するのが、本書にあるパンツのエピソード。風にめくられたスカートを抑える友人を叱りつけ、自分の「クッソダサイ上にクッソ安そうな毛糸のパンツ」を堂々と見せつける。「私たちは女子校の女...友達を笑わせてナンボじゃろ」「面白い女が女子校の王」というセリフが笑いに交えて織り込まれているが、ここが重要なポイント。

 若さゆえに女性らしさを求められることに戸惑いながらも、男子の目がないことが反作用となり、理想の女性像で自分自身を縛りつけるようとする。しかし、男目線や女性性を受け止めることに恥ずかしさや照れが生じ、笑いに転化することでいかんともしがたい感情を発散しているのだ。現実には男目線から逃れられているのに、自分の心の中では常に男目線を意識する。その複雑すぎる心の動きが、「こじらせ女子」へと成長させていくのだろう。

 決して女子校だけが「こじらせ女子」の原因ではないが、女子校出身者がこじらせやすいのは、こういった環境が作用しているという見方ができるのではないだろうか。
(江崎理生)