香妻琴乃(こうづま・ことの/22歳)の、これほど気合の入ったプレイを見たのは、初めてかもしれない。

 先日行なわれた、サマンサタバサ ガールズコレクション・レディース(7月18日〜20日/茨城県)でのことだ。最終日、首位イ・ナリ(12アンダー)から4打差、7位タイでスタートした香妻(8アンダー)は、8バーディー、ノーボギーという圧巻のプレイを披露。彼女が最終18番を終えた時点では、通算16アンダーで単独首位に立つほどの猛チャージを見せた。

 結局、通算16アンダーで並んだ成田美寿々(21歳)とのプレイオフには敗れてしまったが、プロ入り最高位となる2位でフィニッシュ。その戦いぶりは、多くのファンを魅了した。

 サマンサタバサ所属の香妻は、大会前から「日頃からお世話になっている関係者に恩返ししたい」と、ホステスプロとして強い決意を見せていた。

「昨年はホステスプロとして臨みながら、予選落ちに終わってしまいました。その分、今年は(今大会に向けて)しっかりと練習して、かなり力が入っています。上位に入りたい気持ちがすごく強いです」

 しかし、ツアー初優勝にはあと一歩及ばなかった。試合後、そして表彰式のあとに関係者から声をかけられるたび、香妻の頬に涙がこぼれ落ちた。

「私以上に(関係者の)みなさんが『悔しい』と言ったり、泣いたりしてくれました。その姿を見て、一層悔しさが増しました。いいプレイができたことには満足していますが、本当に悔しいです。勝ちたかったな、と思います」

 プロ初勝利こそお預けとなったが、今季の香妻からはひと皮むけた雰囲気が漂っている。

 そもそもアマチュア時代は、2009年、2010年にナショナルチームに選ばれた実力者。得意クラブとするドライバーの飛距離は平均250ヤードと、将来有望なゴルファーとして、その活躍が期待されていた。そして実際、2011年のプロテストに一発合格。その年のファイナルQT(※)でも34位という成績を残し、翌2012年シーズンはツアーフル参戦を果たした。

※クォリファイングトーナメント。ファースト、セカンド、サード、ファイナルという順に行なわれる、ツアーの出場資格を得るためのトーナメント。ファイナルQTで40位前後の成績を収めれば、翌年ツアーの大半は出場できる。


 だが、プロの世界は甘くなかった。2012年シーズンは30試合に出場するも、最高位は12位タイ。賞金ランクは、シード権(50位以内)圏外の62位にとどまった。さらに翌年の2013年シーズンは、ファイナルQT95位で出場試合が10試合まで激減。少ない試合の中で結果を出すことはままならず、賞金ランクは112位まで落ち込んだ。

 それが今季、ファイナルQT60位で出場機会が限られている中でも、コンスタントに結果を残せるようになった。昨季は10試合中7試合で予選落ちを喫したが、今季はここまで11試合に出場し予選落ちは3試合のみ。5月のサイバーエージェントレディス(5月2日〜4日/千葉県)で4位タイという自己最高成績を残すと、先のサマンサタバサ・レディースでは優勝争いを演じるまでにいたった。

 その要因を香妻はこう語った。

「ひとつは、オフの間のトレーニングの成果が出たことです。体を鍛えるのと同時に、ショットの練習に一番力を入れてやってきました。おかげで、ここ最近落ちていた飛距離が戻ってきて、安定感も増しました。そのうえで、自分自身で(ショットを)すぐに修正できるようになったんです。これまでは、急にショットの調子が悪くなったときに、なかなか立て直すことはできませんでした。でも今回、悪くなったショットをどのように修正していったのか、自分で振り返ってまとめてみたんです。すると、自分の癖がよくわかって、多少乱れても、すぐにショットの調子を戻すことができるようになりました」

 もうひとつは、メンタル面の変化が大きいと香妻は語る。それが、今季のプレイに好影響を与えているという。

「私のゴルフのテーマは、『とにかく落ち着く』ことなんです。今まではすごくバタバタしていて、連続してミスが出たり、悪い流れを止められなかったりしていました。でも今年は、そういうテーマを掲げて、スコアメイクも落ち着いてできていると思います」

 事実、優勝争いを演じたサマンサタバサ・レディースでは、猛チャージをかけながらも浮き足立つことなく、終始落ち着いてプレイ。ミスショットのあとも、きちんとリカバリーして、安定感のあるゴルフを見せた。

「"大人っぽいゴルフ"じゃないですけど、オフには打ち方とか、ルーティーンとか、歩き方まで、プロらしいものに変えていこうと意識していました。もともと私は喜怒哀楽が激しいので、それを抑えるプレイも心掛けるようになりました。連続でバーディーを奪っても、スタート前と同じ気持ちを保つようにしたりして、メンタル面のコントロールには常に気を使っています。微妙な違いですけど、私のプレイをよく見ていた人には、これまでとの違いがわかるかもしれません」

 感情をあらわにせず、平静を装ったプレイを実践できるようになった香妻。確かに最近の彼女のゴルフからは、ちょっとしたことで崩壊しそうな"幼さ"というか"危うさ"が消えた。それが、安定した成績にもつながっているのだろう。

「今は(来季の)シード権獲得よりも、たくさんの試合に出られるチャンスを自分でつかんで、早く優勝することが目標です」

 見た目の愛らしいさも相まって、香妻はずっと"子どもっぽく"見られ、メディアに対する受け答えも言葉足らずのことが多かった。だが、今年で22歳を迎えた香妻は"大人のゴルフ"を目指して、立ち居振る舞いも、内面も明らかに変わった。そして、プロ選手としても着実にレベルアップ。プロ入り初のシード権獲得はもちろんのこと、悲願のツアー優勝を成し遂げる日も、決して遠くはないだろう。

野崎 晃●文 text by Nozaki Akira