2013年、『WIRED』の主催によって開催された「CREATIVE HACK AWARD」。そのグランプリと準グランプリの受賞者が、賞の一環としてLAのクリエイティヴスタジオを訪問した。彼らが一様に驚いたのは、日本とアメリカの「クリエイティヴ環境の差」。そのギャップから、彼らはいったい何を思ったのか。

「アメリカのクリエイティヴ環境はなぜ作品を「安定供給」できるのか:労働環境と教育と、つくり手へのリスペクト」の写真・リンク付きの記事はこちら

山田智和 | TOMOKAZU YAMADA(左)
CREATIVE HACK AWARD2013 グランプリ。フリーランスの映像作家。グランプリを受賞した「47seconds」は、2014 NEW YORK FESTIVALS TV & FILM AWARDSでも、最終候補にノミネート。今回のツアーでは「撮影」を担当。

宇田川直哉 | NAOYA UDAGAWA(右)
CREATIVE HACK AWARD2013 準グランプリ。デザインディレクター。GUIやUX、コンセプト開発などを得意とする。クリエイティヴとデザインとビジネスの融合を目指し2013年に「HENKA」を設立。今回のツアーでは「リポート」を担当。

日本とアメリカの差は、労働環境と3Dプリンター!?

カリフォルニア州バーバンク。エンターテインメント産業が集中し、クリエイティヴスタジオが多く集まるこのエリアが、今回の「HACK TOUR」の最初の目的地であった。

ツアーの参加者である山田智和と宇田川直哉がまず訪れたのは、カートゥーン ネットワーク。専門チャンネルをもち、「おかしなガムボール」や「ベン10」といった日本でも話題を呼んだアニメを、次々に生み出してきたアニメーションスタジオである。

現在は多くのレギュラー番組のほか、9本の映画を並行して制作中だという。そう聞くと、さぞかし制作現場は騒然、殺伐、無秩序と化しているかと思いきや、スタジオの雰囲気は極めて穏やかだ。

CARTOON NETWORK | カートゥーン ネットワーク
「スチレンボードに付箋をつけていくのは海外ではよく見る開発方法ですが、ストーリーをディスカッションしながらみんなでつくり上げていく、というのが意外でした。逆に絵コンテはすべてデジタルだったりして、日本以上にデジタル化・効率化が進んでいるなと」(宇田川)

クリエイターの登竜門、CREATIVE HACK AWARD2014、作品エントリー受付中!(〜締切り9/20)
「グラフィック」「ムーヴィー」「3Dプロダクト」「アイデア」という4つの部門を設定。作品募集テーマは「コネクト”つながり”を発見し、改変せよ」! 既成概念を壊す(=HACKする)野心と、世界と伍するビジネスマインドを併せもつクリエイターからの応募を、お待ちしています!

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NICKELODEON | ニコロデオン
「社員に対してもゲストに対しても、おもてなし力が高いスタジオという印象です。完成前に一度子どもたちに見せて反応をみるというのも、その精神の延長線上かなと。あと、クリエイティヴに対しては常に前向きで明るくあるべき、ということを再確認しました」(宇田川)

こういった“居心地のいい環境”は、次に訪れたニコロデオン(「スポンジ・ボブ」で知られる、MTVネットワークスの運営によるケーブルテレビチャンネル)でも変わらない。進行中のプロジェクトの本数はカートゥーン ネットワークと変わらないが、クリエイターたちの1日の労働時間が8時間を超えることは、めったにないという。

「納品間際は、2〜3日の徹夜くらい当たり前」という日本のスタジオと比べ、アメリカの制作環境が大きく異なっている要因は、およそ3つある。

まず、制作スケジュールが緻密に練られており、1人ひとりの負荷が均等になっている点。次に、スタジオは主に脚本やプリプロダクション、ポストプロダクションの機能を担い、中間の実作業はオフショア化しているという点。実際、カートゥーン ネットワークは日本や韓国、ニコロデオンはカナダやニュージーランドやインドに、仕事を発注しているという。

そして3つめに、クリエイターの労働環境やメンタル面に対し、スタジオ側が細心のケアを払っている(言い換えるなら、クリエイターを最大限リスペクトしている)点だ。実はこの点こそが、日本とアメリカのクリエイティヴ産業における、最も埋めがたい差といえるのではないだろうか。

クオリティを重視し、それによる“破綻”を気合で埋めようとする日本。システマティックにことを運び、そもそも破綻を生み出さないアメリカ。その違いを目の当たりにした宇田川はこう語る。

「『ひとつの作品にじっくりとかかわれる』という達成感は、日本のほうが得やすいかもしれません。でも、クリエイティヴを『産業』ととらえ、高いクオリティの作品を安定供給し続けていくためには、アメリカから学ぶところが大いにありそうですね」

「スタジオの環境がとにかく快適。クリエイターには個室が用意され、みんな集中して液晶ペンタブレット(『Cintiq』シリーズ)に向かっていましたね」(宇田川)

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GNOMON SCHOOL OF VISUAL EFFECTS | グノーモン スクール・オブ・ヴィジュアル・エフェクツ
「ZBrushと3Dプリンターを連携させて、一気にプロトタイプをつくっていくクリエイティヴのスピード感に、ただただ圧倒されました。本物の粘土のように、伸ばしたり削ったりといったことをCintiqを使って直感的に筆圧で表現していたのも驚きでした」(宇田川)

次にふたりが訪れたのが、ハリウッドにあるグノーモン スクール・オブ・ヴィジュアル・エフェクツ。映画やゲーム業界において、即戦力として活躍するアーティストの育成を手がける、全米有数の教育機関である。

現在このグノーモンが特に力を注いでいるのが、「ZBrush」という3Dモデリング用の画像処理ソフトの習得だ。実際、ZBrushでモデリングし、それをすぐに3Dプリンターで印刷して撮影に反映させる、という高次元のラピッドプロトタイピングが、ハリウッドのヴィジュアルエフェクトには欠かせなくなってきているそうだ。

そういった状況もあり、ここで3年間の教育プログラムを修了した学生は、ドリームワークスやピクサー、EAといった映画・ゲーム業界から引く手あまただという。そんな実情を知った山田は、ため息交じりに言う。

「デジタルスカルプチュアの最前線が、こんなことになっているとは思いもしませんでした。どうりで学生たちの意識が高そうなわけです。学生は韓国からの留学生が多いと聞きましたが、日本はもっと、この現状を知るべきではないでしょうか」

「J・J・エイブラムスが、『もし若いころにグノーモンがあったらと思うと、残念でならない』と言ったそうですが、ホントぼくも、若いころにここに来たかったです…」(宇田川)

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まっとうで健全。それがアメリカ流

アメリカと日本の制作環境の違いをより詳しく知るために、2013年からLAのスタジオに所属している映像作家の細金卓矢に話を聞いた。

「クリエイティヴな職種の人たちに対するリスペクトということで言うと、まず使いっ走り的な人がいないですね。日本の制作会社だと、『おい○○、この資料まとめとけやー』みたいことを言われる人がいますけど、そういう人がいないです。そういう役割がなくても回るように、マネジメントがしっかりしているということだと思います。逆に言うと、とにかくお茶くみでも何でもいいから潜り込んで技術を盗んで成り上がる、みたいなルートはないので、きちんと美大で勉強しろということですね。まっとうで健全だと思います」

「スキル的には、『アニメ、モーショングラフィックス、3D全部できます(そしてどれかひとつは一流)』というスーパーマンが多いです。ADもほぼ全員制作ソフトを触れますし。これが、日本とかなり違う点ですね。マイナス面を挙げるとすれば、効率的で細かく分業化されるので、自分がこれをやったぜ、という実感はあんまりない、という点でしょうか」

細金卓矢 | TAKUYA HOSOGANE
STATION IDやPVなど、モーショングラフィックスを中心に映像を制作。代表作に国内外で高い評価を得ている「Vanishing Point」や「四畳半神話大系」のエンディングなど。現在LA在住。

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