人との待ち合わせの時や、仕事をサボってちょっと一杯…。何かとお世話になることの多いコーヒー。その嗜好飲料に、がんや動脈硬化、脳卒中などを予防する効果があるという。にわかに信じ難い話かもしれないが、科学的な研究報告もされ、今も世界中の研究者がその効果に注目していると言われる。

 まず、コーヒーにまつわるこんな逸話を紹介しよう。
 『がんになりたくなければ、ボケたくなければ、毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)の著者で、東京薬科大学の岡希太郎名誉教授が、同著書の中で次のように記している。
 《『コーヒーは薬』である。『医薬品』ではないが、昔からずっと薬だった。エチオピアの山奥からアラビア半島に渡ってきたとき、イスラムの僧院でコーヒーを秘薬として珍重された。コーヒーを飲めば徹夜の修行も眠らずに耐えられるからだ。それも、起きていることが苦痛でなくなる。
 ロンドンの医者はアルコール依存症の患者にコーヒーを処方した。プロシアではビール会社がコーヒーに脅威を感じた。1777年、ビールの売れ行きが落ちるのではと焦りを感じ、会社は国王に陳情を繰り返し、ついに国王は『コーヒーは毒だ』と言って禁止令を出した。それを聞いた人々は『これほど効くのだから毒かもしれない』と納得したのである》

 岡名誉教授によると、日本にコーヒーが入ってきたのは江戸時代だという。ドイツ人医師のシーボルトが来日する前、既にコーヒーはビタミン不足による皮膚病(現在のべラグラ=皮膚炎)に良いという記録を残しており、漢方薬に混ぜて飲めば胃の薬になるとも書き残していた。
 実際に、それを参考にした津軽の藩兵は北方警備にコーヒーを携えて従軍し、ビタミン不足による皮膚病を防いだという記録もある。

 また、以前からウイルス感染症、動脈硬化、糖尿病、脳卒中、がん、炎症性疼痛、パーキンソン病、アルコール性肝障害など、数々の恐ろしい病気にコーヒーが予防効果を持つとされた。
 がんの治療研究に携わる医学博士の内浦尚之氏はこう説明する。
 「かつてコーヒーは“薬”として使われていました。1日3〜4杯のコーヒーは、3大疾病といわれるがん、脳卒中、心臓のリスクを下げることもわかってきています。また2型糖尿病、認知症などの予防にも効果的だという報告もあり、体にいいことは間違いないようです」

 コーヒーに含まれる成分のうち、病気を予防する作用があるのは、「カフェイン」「クロロゲン酸(ポリフェノールの一種)」「ニコチン酸類(ビタミンB2)」「NMP(N-メチルピリジニウム)」の四つがある。
 「国立がん研究センターの調査でも、コーヒーをほとんど飲まない人に比べ、毎日飲む人は肝臓がんの発症率が約半分で、毎日5杯以上飲む人は約4分の1に抑えられている、という報告があります」(内浦氏)

 他にも、「口腔咽頭がん」「前立腺がん」「大腸がん」などのリスクを軽減させるという研究報告まであるほどなのだ。