家族旅行が増える夏休みに合わせ、旅行会社やホテルなど、宿泊施設による様々なプランに孫と一緒の「孫旅」を意識したものが増えている。たとえばJTB旅物語では孫と一緒に行く3世代旅行向けのコースが拡充され、はとバスでは3世代旅行を意識して通常は大人の3000円引きになる宿泊ツアーの子ども料金が今年から半額になった。そして、美術館や博物館などへ出かけるプチ孫旅も増えている。

 小学校1年生の男の子と、幼稚園年少の女の子の孫がいる60代の男性は、「孫と一緒に旅行できるのであれば楽しいし嬉しい。けれど、1日を超えると体力が持たないので日帰りがベストかな?」と残念そうに言う。

「まだまだ日常生活で世話を焼かなければならない小さな子たちですから、手がかかります。いきなり走り出したりするので、こちらの体力もいる。それに、ふだんは気が置けない娘夫婦であっても孫を連れて行くとなると気をつかいます。泊まるとなるとなおさらです。孫と一緒なら、日帰りで買い物や博物館へ出かけるのが時間も予算もちょうどいいですよ」

 夏休みには毎日の来館者が約1000人になる東京おもちゃ美術館の山田心さんによれば、「統計ではなく印象ですが」との前置きつきで「最近、祖父母と一緒に来館されるお子さん、特に親世代も一緒に3世代で来られる方が目に見えて増えているように思います」という。

「手作りおもちゃ教室に参加される方には、親子ペアだけでなく祖父母ペアも増えています。親世代と子どものペアに比べて、お孫さんと参加されている方はとくに一緒に楽しむ時間をとても大切にされている印象が強いです。

 夏休みが近くなると、遊びに来る孫のためにと電話での問い合わせが増えます。なかには、下見のために来館される方もいらっしゃいます。確実に楽しませてあげたい意気込みを感じますね。仕事をされていたときの習慣を生かしているのか、綿密な準備をされる方には男性が多いです。もともと遊びの達人だったおじいちゃんやおばあちゃんの普段は見られない達人ぶりに接すると、お子さんたちは皆、尊敬の目で見つめますよ」

 東京おもちゃ美術館では、夏休みの自由研究にも利用できる職人や造形作家などの指導によるワークショップが開催されるが、すでに予約が満員の日も出ている。予約なしで毎日参加できるものもあるが、その場合は先着順になる。準備万端の祖父母世代なら、すでに予約済みだろう。

 孫と出かける祖父母世代に着目して高齢者を刺激する試みをしている自治体もある。富山市では動物園や博物館、体験施設など15の施設の入園料・観覧料が無料になる「孫とおでかけ支援事業」を実施している。

「高齢者の外出機会を増やしたいということで2012年7月から始め、対象施設を増やしながら現在まで継続している事業です。居住地や年齢を設定していませんので、入場窓口で祖父母と孫だという家族関係さえ示せれば誰でも利用できます。東京に住んでいる人でも、40歳の孫と90歳の祖母という組み合わせでも無料になります」(富山市役所生涯学習課担当者)

 この支援事業導入は、森雅志・富山市長が『孫の力』(島泰三著)を読んで刺激され、祖父母にとって「孫と出掛ける機会を持つことが効果的」と思ったことがきっかけだった。2013年度の各施設利用者のうち、約70万人の総入場者数のうち7.8%、約5万4000人が「孫とおでかけ支援事業」が利用者で、反響もよいという。

「この事業は高齢者の健康増進にも貢献して、まわりまわって医療などにもにも還元されているのではないでしょうか。入場者数や地域への経済効果など、すぐに出てくる数字以上の効果があると考えています」(前出・富山市担当者)

 いま孫旅を楽しみたい祖父母世代の孫たちは、小学校低学年までの低年齢が多い。あと数年経ち、孫たちが中学生くらいになれば身の回りの世話もある程度自分でできるようになり、親たちも遠出することに苦情を言わなくなるだろう。泊りがけの冒険ができる「孫旅」は、あと数年先の楽しみになりそうだ。