熱帯場所とも呼ばれる名古屋場所が愛知県体育館で始まった。先場所13勝した稀勢の里(28)が、もう11年余も不在の日本人横綱誕生に向かってどんな相撲を見せるか大きな注目を集めそうだが、一方で入幕5場所目、同世代の遠藤のような派手さはなくとも、その実力でジワジワと番付を上げ、初めて横綱大関と総当たりする東前頭3枚目まで番付を上げてきたエジプト出身の大砂嵐(22)からも目が離せない。
 片手で鉄棒にぶら下がり、そのまま軽々と懸垂ができる怪力の持ち主。先場所12日目には「絶対に負けたくない」と公言する遠藤(23)を右からの強烈なカチ上げでKOし、「普通の相手だった」と涼しい顔をしていた。

 パワー不足を露呈し、2場所連続して負け越した遠藤と違って立ち合いに必殺ワザを持っているだけに、上位陣にとっては脅威となるだろう。
 「荒削りだけど、何をするかわからない怖さがある。もしこの位置で勝ち越せば三役入りの可能性も十分。期待の遠藤がハネ返された幕内上位の壁を一発で破るようだと、またもや日本人力士は何をやっているんだ、という声が起きかねない。協会関係者はヒヤヒヤ、ドキドキしながら見ています」(担当記者)

 この大砂嵐は熱心なイスラム教徒でもある。最大の敵は相手力士ではなく、年に1回、1カ月間も続く日の出から日の入りまで水すら口にできないラマダン(断食月)ともいわれる。まだ十両だった去年の名古屋場所は空腹に打ち勝ち、10勝5敗の好成績を上げたが、今年は6月28日から7月27日までで、千秋楽までモロかぶりである。
 6月30日に行われた番付発表会見では「ラマダンは心の稽古。大丈夫です」と平然としていた。

 この異色力士の異色な闘い、今場所を盛り上げるのは必至だろう。