日本人が商売するのに向いている国とは?「やっぱりタイだよね」

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日本企業は世界中に進出しているようですが、実際の動向は一般人にはあまりよく分かりません。どんな国に多く進出していて、またどんな国が商売しやすい国なのでしょうか?

日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部 アジア大洋州課の小島英太郎課長代理にお話を伺いました。

■中国投資が減り、ASEANへの投資が倍増!

――日本企業は世界のどんな国に多く進出しているのでしょうか。

小島課長代理 まず地域別で見ますと、日本の対外投資は、アジアが33.8%、欧
州が31.2%となっています(2013年6月までの統計)。

そして、アジアを詳しく見てみると、現在ではASEAN(アセアン)への投資が顕著です。日本企業もASEAN諸国へ多く進出しているのがトレンドです。

●……ASEAN(東南アジア諸国連合)には、インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、カンボジアの10カ国が加盟しています。

――アジアの中でもASEAN諸国が多いのですね。

小島課長代理 財務省のデータにこういうものがあります。

■日本の対外直接投資:中国、ASEAN比較

――2013年に劇的に変化していますね!

小島課長代理 はい。2012年までは、「中国」と「ASEAN10カ国」、ほぼ同程度の投資金額だったのですが、2013年には、対中国投資が17.7%減少し、対ASEAN10カ国投資が2.03倍(103%増)になりました。

――この原因は何でしょうか。

小島課長代理 投資が中国へ一極集中したことへの反動といいますか、リスク回避・分散の動きが大きくなったことでしょうね。また、中国の人件費などコスト上昇も原因です。ただし、進出日系企業が中国から全面撤退というケースは少ないです。

生産拠点の一部を中国以外の国に移動するとかですね。

――なるほど。そういった中国以外の国へ目を向ける動きが最近のトレンドなわけですね。

小島課長代理 いわゆる「チャイナ プラス ワン」という考え方です。これは、市場的にも日本の人口の10倍という巨大な中国は無視できないですが、リスクもあるので、中国以外の国にも進出するということです。

■日本人が商売しやすい国ってどこ!?

――日本人が商売しやすい国といいますと、どんな国々でしょうか。

小島課長代理 そうですね、商売しやすい国といいますか、日系企業の関心・期待が高く、実際に進出も進んでいる国はASEANの中では特に「タイ」「ベトナム」「インドネシア」の3カ国ですね。実際、企業からの問い合わせも、この3カ国が多いです。

それぞれ以下のような特徴があります。

●タイ
人口:約6,800万人
一人当たりGDP:5,674ドル

特徴:日本企業が長年投資を続けている国で、現地に根付いた企業も多く、そのため進出しやすい土壌が整っている。また、人口も多く、一人当たりのGDPも上昇、購買力も高まっており、製造業だけでなくサービス業の進出も増えている。

●ベトナム
人口:約8,900万人
一人当たりGDP:1,902ドル

特徴:中国に近い国なので、「チャイナ プラス ワン」を考えている企業にとっては、生産拠点を移転しやすい場所にある。人件費の高騰などがあり、労働集約的産業が中国ではやりにくくなっているので、比較的人件費の安価なベトナムは移転先の候補として挙げられることが多い。

また、勤勉な人が多いので日本人に合いやすい。

●インドネシア
人口:約2億4,000万人
一人当たりGDP:3,510ドル

特徴:まずASEANでは人口が最も多く、一人当たりのGDPも上昇しており、特にジャカルタでの購買力が高まっている。そのため、市場として大きく期待できる国となってきた。タイを市場として考えていた企業にとっても、「タイ プラス ワン」(タイのほかにもう1カ国・1カ所)の考え方をしたときに、新たな市場の候補地として挙げられる国。

ただし、人件費の高騰が激しいことは課題となっている

■「やっぱりタイだね」!

――なるほど。タイはこの中でも評価が高いようですが。

小島課長代理 はい。最近の政治的な問題が起きたあとでも「やっぱりタイだよね」という言葉をよく聞きます。いろいろ視察してみて、いろんな国と比較してみたけど、タイがいい! という企業さんが多いです。

――その理由は何ですか?

小島課長代理 やはり昔から日本企業が進出していて集積していることやインフラがある程度整っていること、日本人にとって働きやすい環境が整っていることなどが挙げられます。

――どんな企業が多く進出しているのですか?

小島課長代理 自動車関連ですね。自動車関連の部品製造なども多いです。電気・電子分野の企業も多いですね。工場がたくさんありますよ。一般の方はご存じないかもしれませんが、タイは政治と経済を切り離して考える国なのです。

例えば、クーデター騒ぎなどがあっても工場はきちんと稼働しています。政治・社会の混乱から経済活動に影響が及ぶこともありますが、それでもタイを信頼している日本企業は多いと思っています。

――ベトナムはいかがですか?

小島課長代理 まず、国民性が高く評価されていると思います。勤勉で、手先が器用で真面目に働いてくれる人が多いですね。企業側からすると、大変に助かるわけです。また、人件費だけを比較すると、ミャンマー、カンボジアなどの方が安いかもしれませんが、ベトナムはインフラ整備面でも一歩進んでいると思います。

簡単な例では、中小企業はすぐにでも製造を始められるようなレンタル工場を探しますが、ミャンマーにはほとんどありません。その点、ベトナムでは工業団地も増え、すぐに利用できるレンタル工場も見つけやすいです。道路や港湾などの整備も進んできていますね。

――インドネシアは人口が日本の倍近いのですね。知りませんでした。

小島課長代理 あまり知られていないかもしれませんが、インドネシアは急速に発展している国で、例えば首都のジャカルタに行くと、一人当たりのGDPはもっと高くなって、つまり収入も多く、購買力は高いです。全国平均の一人あたりGDP(2013年)は約3,500ドルですが、ジャカルタでは1万ドルを超えるレベルに達しています。

市場として注目されているのは、そういった点ですね。

■日本企業への現地の評価は!?

――日本人が商売しやすいというのは、現地の人とうまくやっていけるかという面もあると思うのですが。海外へ進出している日本企業への現地の評価とはどんなものなのでしょうか?

小島課長代理 これは一般論ですが、日本企業は中長期的な視点で、現地でできるだけ長く、継続して企業活動を行うことが多いです。これは「現地に根付くこと」を意味しますので、現地の人々に受け入れられやすいです。

短期間で利益を上げて引き揚げるといった考え方をする経営者はあまりいらっしゃいません。これは日本企業の体質といいますか、気性といいますか。「win-win」を目指しますので、日本企業に対する評価は高いと思います。

例えば、こんなデータがあります。ASEANなど、13カ国に進出している企業2,685社に「消費者運動・排斥運動」について調べたデータです。「不買運動・市民の抗議等」があったかを聞いたものです。

■「不買運動・市民の抗議等」を受けた企業
パキスタン……3.7%
インド……2.1%
フィリピン……1.4%
インドネシア……1.1%
シンガポール……1.1%
ベトナム……0.7%
タイ……0.5%
カンボジア……0.0%
ラオス……0.0%
マレーシア……0.0%
ミャンマー……0.0%
バングラデシュ……0.0%
スリランカ……0.0%

総数(n=2,685)

小島課長代理 これは日本企業が現地とうまくやっていくべく努力していることを表しているのではないでしょうか。

――では、逆に、日本企業への悪い評価とはどんなものあるでしょうか?

小島課長代理 先ほど申し上げたのと逆になるのですが、中長期的な視点で考えるあまりに「決断が遅い」といわれることがありますね。「早くしてほしい」という要望があっても、本社で稟議(りんぎ)を通してから、といった決裁ルールのためにそれが遅れるとかですね。

それでビジネスチャンスを失うといったこともあるので、日本企業全体の課題といえるかもしれません。ただ、一般的に日本企業に対する悪い評価はあまり聞かないですね。

――ありがとうございました。

いかがだったでしょうか。日本企業は最近はASEAN諸国への進出が多くなっているようですね。また、小島課長代理のお話では、ラーメン屋、カレー屋など飲食店の進出も盛んだそうです。例えば、現在ミャンマーのヤンゴンには、日本食のお店が100店舗もあるそうです。

2011年までは20-30店舗しかなかったのに、この2年ほどでここまで増えたそうです。ASEAN諸国への進出はまだまだ続くのではないでしょうか。

(高橋モータース@dcp)