次のサッカー日本代表監督の最有力候補で、契約合意も間近といわれるメキシコ人のハビエル・アギレ(55歳)。その手腕を認める声は多いものの、人柄についてはあまり知られていない。

両親がスペイン・バスク地方からの移民であるアギレは、メキシコ代表監督としてW杯2大会(2002年、2010年)で同国を指揮し、ともに決勝トーナメントに進出。クラブシーンではスペインで監督を歴任してきた。

そんな彼の“素性”を探るべく、メキシコとスペイン、ふたつの地元で聞いてみた。「キレやすい性格で、相手選手に蹴りを入れて退場処分を受けたことがある」「ズケズケとモノを言うので、よくトラブルを起こす」「選手の好き嫌いが激しい」など、気になる評判もチラホラ、その真偽のほどは……。

実際、見た目はかなりのコワモテだが?

「ただ自然体なだけだよ。確かに、普通の監督はもっとフォーマル。でも、彼は裏表なく思ったことを素直に言う。だから、時として発言が問題になることがあるけど、彼自身は物議を醸すタイプの人間ではない」(メキシコのテレビ局『Univision』のハイメ・アントニオ・ガルシア記者)

「ピッチに立つと血の気が多くなるのは、バスクの血を引いているからかな。時には記者会見やテレビカメラの前で汚い言葉を使うこともある。チームが負けたときに、選手を名指しで批判することもある。ただ、彼は経験のある人物。チームを奮起させるために、あえて演じている節もあると思う」(スペインの大手スポーツ紙『as』のサンティアゴ・ヒメネス・ブランコ記者)

「普段のアギレは歯切れのよい語り口で、礼儀正しく、教養もある。サッカーだけでなく、野球やクラシック音楽、映画、文学なども好むんだ。ただ、試合になると魂のこもったトークで選手を鼓舞する、優れたモチベーターに姿を変える」(Webサイト『ESPN FC』『Goal.com USA』、英紙『ガーディアン』などに寄稿するメキシコ在住の英国人サッカージャーナリスト、トム・マーシャル氏)そんなアギレが日本代表を率いることになったとして、どんなチームをつくるのだろう。これまで日本が目指してきた攻撃的なサッカーをスムーズに継続できるのか。

「彼の理想も攻撃的なサッカーです。最高の守備は、ボールを保持して相手に攻めさせないことだと語っていました。ただ、それ以上にアギレは現実主義者。自分が使える選手に基づいて、システムや戦術などを決める監督です。日本もメキシコも、属している地域では強豪ですが、W杯など、より強いチームと対戦する舞台ではつまずくことが多い。だから、アギレはメキシコ代表監督を率いていたときと同じように、まずカウンターに力を入れて、守備の崩れにくいチームをつくるところから手をつけるのでは」(前出・マーシャル氏)

「彼は自分の理想を追い求める前に、どんな選手がいるかを確認して、そこからチームづくりを始めるタイプ。そうして結果を残してきた」(前出・ブランコ記者)

ブラジルW杯での惨敗を考えても、中盤でじっくりパスをつなぐという日本のスタイルは一時封印ということになりそう。

「ひとつ確実に言えるのは、彼は常に選手に戦うことを求め、情熱的なチームをつくるということ。細かなテクニックよりもパワフルでスピーディなチーム。スター気取りの選手を好まず、テクニックよりフィジカルを重視する。まず彼は激しい守備を選手に求めるはず」(ブランコ記者)

となれば、不動のエースだった本田にも献身的な守備を求めるだろうし、これまでのような王様然としたプレーや態度はもう許されない。同様に香川の守備力も気になるところ。

もちろん、手元にある素材を生かすのがアギレの特徴なので、フタを開けてみないとわからない部分でもあるが……。

(取材協力/栗原正夫)

■週刊プレイボーイ30号「次期日本代表監督?アギレ、地元での“意外な素性”!」より