もはや「病気」と見なされるようになった肥満。先日、英医学誌「ランセット」に全世界の成人人口(20歳以上)の3人に1人、およそ21億人が肥満という衝撃的な調査結果が載った。

 研究グループは世界183カ国から、1980〜2013年の検診データを取得。年齢、性別、国と年代別にBMI(体格指数)を算出。およそ2万件のデータから、2〜4歳から80歳以上までを17の年齢層にわけ過体重〜肥満率を解析した。その結果、世界の成人男性の過体重(BMI25以上〜30未満)の割合は、80年には28.8%だったのに対し、13年には36.9%へ、女性は同じく29.8%から38.0%へ上昇したことが判明したのである。

 この間、肥満(BMI30以上)率の増加が50%を超えた国は、男性はトンガ、女性ではクウェート、リビアなどの中近東やミクロネシア連邦、キリバス、サモアなど南太平洋諸国が目立つ。一方、先進国では06年以降、肥満率の上昇が抑制されていることも示された。とはいえ、米国では男性の31.7%、女性の33.9%が肥満。肥満人口急増中の新興国である中国、インドを抑え、堂々の肥満人口世界1位に輝いた。

 日本では、肥満率が男性4.5%、女性3.3%で先進国中でも低い。ただ、日本で「肥満」とされるBMI25以上の推移は、男性が80年の18.0%から13年の28.9%へ上昇し「3人に1人は肥満」時代へまっしぐら。女性は逆に19.4%から17.6%へ減少した。強迫的ともいえるダイエット志向のためだろう。

 本報告の焦点は、10年時点で全世界の340万人が肥満、過体重が原因で死亡している点だ。これは、肥満でなければ全うできたろう「健康寿命」を約4%縮めるに等しい。WHO(世界保健機関)は25年までに肥満を食い止めるとしているが、研究者は「この33年の間に、減量に成功したという国の報告は一切ない」と悲観的だ。頼みの抗肥満薬も安全性の面で懸念が残る。

 飽食・便利を享受する現代文明の宿痾ともいうべき肥満。改善するすべは果たしてあるのだろうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)