いよいよ夏本番。連日、カンカン照りの猛暑日が襲い、熱中症での救急搬送も後を絶たず、対策が連日のように叫ばれている。消防庁のデータによると、熱中症による搬送者は、全国的に猛暑となった2012年7月は1カ月で2万人超と、搬送者数で過去最高を記録している。また東京都内だけでも、昨年6月以降の搬送者数は4265人で、統計を取り始めた2002年以降最も多く、死亡者も37人いる。

 同庁によると、熱中症が心配なのは、真夏だけに限らない。高齢者を中心に6月ごろから患者が増え始めるという。理由は、都市部のヒートアイランド現象などの影響で、かかる人が増えるからだ。また、救急車で搬送されるのも半分は60歳以上。なぜ、高齢者が熱中症になりやすいか。
 医学博士で総合医療クリニックを運営する久富茂樹院長は、“加齢に伴う体の変化”を挙げている。
 「最初に考えられることは、汗をかく能力が衰えていることです。若い頃と比べて汗腺の数自体が減り、機能も落ちています。また筋肉も減り、発汗効率が悪い脂肪の割合が増えていることもある。加えて、高齢になると次第に体内の水分量が少なくなり、脱水状態になりやすくなるのです。発汗などの温度調整も低下してしまいますからね」

 一番困るのは、暑いと感じる感覚も年齢とともに鈍くなること。ノドの渇きを感じていないのに熱中症になるケースも多いのだ。つまり、自覚のないまま“脱水症”が進行するということ。
 神奈川県医療救急情報センターに所属する職員はこう説明する。
 「高齢者は感覚機能の衰えのため、こまめな水分補給が欠かせません。また成人の場合は、1日に食事から1リットルの水分が摂れるので、あとは飲み物で1リットルの水分を摂るのが目安。また、手足の血行不良などの不調があれば、脱水症の自覚がない場合でも熱中症を疑った方がいいですね」

 初夏になれば当然、要注意。しかし、「熱中症は気温25〜26℃でも起きている」(同職員)と指摘している。その程度の気温では起きないと思い込んでいることが、対応を遅らせる一番の原因という。また、中には気温23℃、湿度71%の状況で、80歳近い女性が熱中症になった例もある。窓を閉め切った家で長時間過ごしていたのが要因だった。
 ただ、だからといって怖がってばかりいる必要はない。暑さに慣れる必要もある。暑さに体を慣らすことを「暑熱順化」と呼び、熱中症を予防する上で大事なことだと専門家は指摘する。
 うまく順化できれば血液量が増え、汗の量も増え、より低い体温でも汗をかき始め、体温を調整する体内機能が改善し始める。方法としては、それほど暑くない日や時間帯を選び、ウオーキングや軽いジョギングなど、軽く汗ばむくらいの運動を30分ぐらい続けてみる。体力がない人なら、半身浴などで汗をかくだけでも効果アリだ。しかし、高齢者が暑さに慣れるのには、2週間から1カ月かかると見る必要があるという。