東京から約1200キロ南に浮かぶ硫黄島(東京・小笠原村)は、太平洋戦争末期の「硫黄島の戦い」で知られる孤島だ。自衛隊の基地があるため、事実上関係者以外は立ち入りできない。

そんな硫黄島勤務の「求人」が、ハローワークに出ている。携帯電話やインターネットが使えず、通信手段は公衆電話か手紙のみ。娯楽設備もない。耐えられるのだろうか。

通信手段は「公衆電話」か「手紙」のみ

この求人は一般財団法人・防衛弘済会によるもの。仕事は「自衛隊員食堂の調理業務」の請負で、基本給として18万3000円から18万5000円、離島手当として4万円。あわせて約22万円が月給となる。

労働時間は朝、昼、夕で実働8時間。休日はシフト制を組んでいて、3か月に1回、6日間の「特別休暇(帰省あり)」も用意されている。年齢や学歴は不問だが、調理師免許が必要だ。硫黄島隊員食堂が勤務地となるが、日本最東端の「南鳥島」への応援勤務もあるという。

それ以外にも普通の求人では、およそ目にかかれない記述が並ぶ。

「入間基地から自衛隊機で赴任(無料)」
「現地通信手段は公衆電話か手紙(携帯/インターネット不可)」
「銀行ATMはありませんが給与日に希望者は現金を送金します」
「リゾート気分で渡島しますと勤務に耐えられませんので理解してください」

珍しい求人に、ツイッター上は、

「お金使わないし貯まりそう」
「自衛隊以外でも硫黄島に行けるのか。調理師の免許があったら応募したかも」
「硫黄島の求人、ネットさえ使えたら応募しちゃうレベルだけどそもそも料理できないし関係なかった」

などと話題になっている。

余暇はテニス、水泳、釣り…「駆け足」も!

では硫黄島とは、どんなところなのだろうか。海上自衛隊と航空自衛隊の基地があり、基地関係者以外の立ち入りは制限されているため、生活環境についての情報は少ない。

海上自衛隊に電話してみると、広報室内に硫黄島での勤務経験者がいないため、5年ほど前に勤務を終えた人からの「伝聞」になるとしながら、日ごろの過ごし方について困惑気味に教えてくれた。テレビはあるがBS放送のみで、休暇の時にDVDを大量購入する事もあったという。なお現在働いている人数は非公表としている。

ネットの個人サイトには、空自が2007年に制作したというパンフレットが転載されている。その「余暇」の項目を見ると、

「駆け足、テニス、水泳(プール)、釣り、果物等(バナナ、ミカン、パイナップル、パパイヤ、唐辛子等)の採取、天体観測、露天風呂、天然サウナ、ゴルフ、バードウォッチング、ホエールウォッチング、野外バーベキュー、音楽バンド演奏など」

と書かれていた。娯楽設備には乏しいが、自然を目いっぱい楽しむのには良さそうだ。