7月17日に迫った第151回直木賞選考会。第150回に引き続き、連続ノミネートされた千早茜さんの作品が今回紹介する『男ともだち』です。恋や性に率直に生きる現代女性を描き、多くの女性から支持を集める千早さんが、古くて新しいテーマ"男女の友情"を描いた作品となっています。

 主人公の神名葵は京都在住の29歳のイラストレーター。イラストの仕事が軌道に乗り始め、恋愛面でも5年間同棲を続ける恋人の彰人がいるという彼女。一見、なにもかも順調そうですが、その一方で時々会ってセックスをする愛人、医者で妻帯者の真司がいます。ちょっとしたきっかけで崩壊しそうな危うい均衡を保つ生活を送っている中、大学時代の男ともだちのハセオが8年ぶりに彼女の前に姿を現します。

「私はすでに男に絶望していた」と神名が振り返る大学時代。彼女は「誘われればすぐに寝たが、面倒になればあっさり捨てた」という男女関係を繰り返していました。そんな中、唯一無二の存在だったのが男ともだちのハセオでした。ハセオの部屋のベッドで一緒に寝つくとき、どこよりも深い眠りにつけたというほどに。それほど一緒にいても、決して男女の仲になりえなかったのは、二人があまりに似すぎていたから。ハセオもまた、野性的な魅力を持ち、女性関係は派手ながら恋愛に溺れることのない、確固たる自分を持つ男でした。

 そんな2人の再会で関係性はどう変わっていくのか、が本書の本流ではありますが、恋愛の話だけに終わらないところが、千早作品が女性に支持される所以かもしれません。著者の千早さんは、当初、本書を"お仕事小説"のつもりで書き始めたとインタビューで語っています。なので、随所に主人公・神名の仕事に対する強い思いが語られています。仕事こそが生涯をかけて自分を表現する唯一のものだと。そんな仕事への思いを駆り立て、神名らしく、独り立ちすることをバックアップしてくれたのがハセオという存在でした。

 恋愛関係になれば、いつしか終わりを迎える。結婚生活のぬるい幸せに浸れるタイプでもない。でも、ともだち関係なら......。悩みながらも、神名が最終的に下した決断から、現代女性が凛として生き続けるためのひとつの方向性を見いだすことができます。何より、仕事へのモチベーションが高まり、ハセオのような男ともだちが猛烈に欲しくなることでしょう。