毒気に満ちた、無秩序な“黒い”夢の国
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いぜん続く「アナ雪」旋風のなか、最大のタブー映画が7/19(土)より公開になります。ポスターなどを見て、「また新しいディズニー映画かな?」などと思い、うっかり映画館に入ったら度肝を抜かれるかも(笑)!?

無許可でゲリラ撮影された、大問題作!


その作品の名前は、『エスケイプ・フロム・トゥモロー』。アメリカのディズニーランドのパーク内で25日間、ゲリラ撮影をして制作されたブラック・ファンタジー映画です。昨年のアメリカのサンダンス映画祭でプレミア上映されるや、「最大のタブーに挑んだ問題作」と話題に。なぜかというと、この作品は、著作権には非常に厳しいディズニーに対して、撮影許可やキャラクターの使用許可をまったく取っていないからです。

映画のメインビジュアルでは、あの有名キャラクターのものと思わしき手から血が流れ、「悪いことは起きる……たとえ夢の国でも」というキャッチコピーがついています。作品内でも、「この映画はウォルト・ディズニー社とは一切関係ありません」とただし書きがされてはいますが、かろうじて現時点で先方に訴えられていないからこそ公開ができる、という状況なのだとか!

その問題作の主人公は、いろいろと“ダメダメ”な平均的な中年男性、ジム。2児のパパでもあります。家族旅行で夢の国に訪れ、皆で楽しんでいる最中に突然、息子の様子が急変。それからは悪夢のような妄想と奇妙な出来事が次々と起こり、ジムは半ばやけくそ気味になっていきます。これは妄想なのか、現実なのか。おかしくなっているのは、息子なのか、それとも自分なのか――。一点の曇りもなくハッピーな気分になれるディズニー映画とは真逆の、毒気に満ちた、無秩序な世界が広がっています。

どこまでが“想像”か、わからない恐ろしさ


解禁になっている情報が少ないこの映画ですが、テーマは「人間の想像(妄想)力」とされています。普段、ディズニーが私たちに提供してくれるのは、ひたすらハッピーな夢想の世界。ほんのつかの間、楽しいばかりではない現実からの逃避をさせてくれる場所ですが、そこに骨の髄まで浸りきると少し恐ろしいかも、と思う瞬間は確かにあるほど、徹底的に作り上げられた、幸福な“虚構”の世界でもあります。

過度に“ハッピー”を演出することは、逆サイドも浮かび上がらせる。この作品が描こうとしたのは、いい方へ偏重しがちな「想像」へのアンチテーゼなのかも。人間には、とめどなく悪い想像があふれる瞬間も時にはありますよね。そして、それのどこまでが想像で、どこまでが現実なのかわからなくなる恐ろしさは、体感してみると、ものすごいです。バイオレンスや性も描いており(R 15指定)、モノクロ作品であることで、より不気味さが増して、ホラー感も満載。精神的な怖さがあります。しかしながら、人間の心の深層にあるものについて深く考えさせられる部分もあり、一筋縄ではいかない映画が好きな方、ぶっ飛んだ世界観が好きな方、クリティカルな方にはかなり面白い作品かもしれません。

出来がよかったから、黙認されているのか!?


業界内では、ディズニーファンの多い日本での公開は絶対無理、とささやかれていたそうですが、実際には日本最大の映画館チェーンであるTOHOシネマズでの公開が決定。当然先方もチェック済みながら、おそらく映画の出来があまりに良かったため、芸術へのフェアな意識の強いアメリカで、この映画をつぶそうとするリスクのほうが大きいと考えたのではないか……などと推測する専門家も。

また、素人は気付きにくいものの、作品の随所にディズニーへの非常なるリスペクトを感じさせる描写があり、ディズニーも認めざるを得なかったのでは?なんて憶測もなされています。

いずれにせよ、「正式に許可を取っていない」「夢の国を壊すようなテーマ」という点で、今までにない問題作であることは間違いなし。無事に公開されるのか? ストップがかかるのか? 普通ではあり得ないハラハラの劇場公開スタートは、7月19日です。
(外山ゆひら)

『エスケイプ・フロム・トゥモロー』

2014年7月19日(土)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国10館で期間限定ロードショー。