旅先に到着して最初にすることはスマホでネット

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 旅行の計画をたてるときは、日程と予算を決め、そこにおさまる旅行商品を探すものだった。ところが、スマートフォンの世帯普及率が5割を超えたいま、人気の観光地はSNSでの拡散に左右され、目的や仲間を探して同行を呼びかける形の旅行も出現し、ネットにつながらずに過ごす旅行は少数派になりつつある。『10日もあれば世界一周』などの著作がある旅行作家の吉田友和さんも、いまやスマホがなく、ネットにつながらない旅行は考えられないと感じている。

「ネットが発達していなかったころから旅をしていますが、今では飛行機を降りてすぐスマホがつながっていないと不安です。移動や為替レート、地図などを利用して知りたい情報をピンポイントで得られますし、情報で不安を軽減できます。SNSにもつながるのが当たり前になっていますね。海外旅行へ行く人たちも、以前に比べてガイドブックを読み込まなくなっているのではないでしょうか。

 たとえば、日本人に人気が高いボリビアのウユニ塩湖ですが、実際に訪れて冠水して空を映す鏡のような写真をFacebookにアップする人が多いですね。その写真をきっかけに旅に出かけ、また写真が投稿されている例もあります。旅先から投稿された写真には、旅行後に思い出の写真を見せるよりも人への影響が大きいと感じることが増えました。SNSで見る個人的な体験の影響力が強まっているのは、旅行の楽しみ方が変わってきたことが背景にあるからだと思います」

 旅行そのものが珍しかったころは、すべての日程が決められたツアーに参加して案内してもらうものだった。その後、もっと自由に旅をしたいと、移動手段と宿泊だけのフリーツアーで目的地を訪れ、ガイドブックを片手に街を楽しむのが一般的になった。そして今では、各自がやりたいことを求め、よりオーダーメイドな旅が好まれているのだと前出の吉田さんは言う。

「どこへ行きたいかだけでなく、何をしたいのかが重要です。旅に自分ならではのテーマを求めると既製品のツアーでは難しくなるので、SNSで仲間を探して予定を立てても、目的に合うなら不自然ではありません。だから、旅の当日に初めて会う人ばかりでも抵抗なく受けとめる人が多いのではないでしょうか。特に、スマホでのコミュニケーションが当たり前の若い世代にとっては、SNSだけでつながる人と現実の旅行をしても、きっと違和感がないだろうと思います」

 とはいっても、自分で下調べから手配まですべてするのは、慣れないと難しい。それでもオリジナルな旅をしたいと願う人のために、一から調べずとも旅を成立させやすい便利なサービスが増えている。いずれも既存の旅行代理店ではなく、いわゆるIT企業によって運営されているのが特徴だ。

 代表的なものを挙げると「meetrip」は目的地に住む人にガイドを頼め、「kitchhike」では旅先に住む人と一緒に食事を楽しむ約束ができ、「voyagin」は旅行会社経由では見つけにくいユニークで小規模なツアーに申し込める。そして「トリッピース」は、行ってみたい旅先や目的にあわせて旅する仲間の募集から始められる。いずれもfacebookやtwitter、Google+などと連動しており、SNSで共有するのが当たり前になっている。

「オーダーメイドな旅に慣れている人は旅の準備を負担だとは思いませんが、自分好みの旅をしたいと思ってはいるけれど不安な人や、調べるのが苦手で面倒な人にとって、細かいニーズをくみ取ってくれるサービスは親切ですね。これをきっかけに、スマホやネットの便利さを生かして、中身を楽しむ旅行者が増えるといいですね」(前出・吉田さん)

 いま、旅行のトレンドは世界一周なのだという。世界を周る旅人たちはブログやSNSを通じて情報発信し、その写真等はボリビアのウユニ塩湖のように「行ってみたい場所」としてSNSを通じて拡散されてゆく。そして、SNSで見た憧れの場所を目的地にした旅人たちが、やはりSNSで募った仲間と一緒にスマホ片手に旅をする。旅とは孤独を噛みしめながら内省するもの、とはいかないのが21世紀の旅の楽しみ方らしい。