スマホの例をあげるまでもなく、現在は良くも悪くも、軽くて効率的でスマート、いろんな機能を器用にこなすモノが好まれる。クルマも例外ではない。今はミニバンやSUVなど、いろんなジャンルを融合した"クロスオーバー"がもてはやされるだけでなく、大きなクルマでも軽くて燃費がよくなければ許されないし、スポーツカーでも乗り心地が良くないと"不出来"と断罪されてしまう時代である。

 今回のディスカバリーは英国の高級SUV専業ブランド(ランドローバー)の、真ん中に位置づけられるモデルである。表向きは4代目だが、実質的には2005年に発売された3代目の改良版。つまり、基本設計はほぼ10年選手で、昨今のクルマの進化スピードを考えると、ハッキリいってかなり古い。まあ、それでも本体価格700〜800万円台の高級車なので、エンジンや安全機能などは最新鋭のものが搭載されているし、各部の仕立てはさすがに高級なのだが、とにもかくにもランドローバーでは最古参のモデルである。

 ディスカバリー(以下ディスコ)の"古さが隠せないところ、その1"は、四角四面で背の高いスタイリングだ。もちろん、最新のクルマでもときに"四角く見せる、背が高く感じさせる"デザインの例はあるが、ディスコのようにマジで小山のように背が高く、本当に四角いクルマはあまりない。

 物理的に背高で四角いから、室内は本当に広い。トランクには収納式の補助サードシートもついているが、本当に四角くて大きいので、補助席なのに国産ミニバンが束になってかかっても敵わないくらいに快適な空間だったりする。

 しかも、ランドローバーは世界一のオフロード性能を社是としており、ディスコはそのなかでも最も高い悪路走破性を追求した1台なので、フロアも高い。よじ登るようにシートに座ると、見晴らしは最高。以前、ここで取り上げたランドクルーザー(第33回)やパジェロ(第23回)と同様に「谷底に落ちないため」の針の穴を通すような車両感覚においては、ランドローバーはさらに徹底している。だから、ディスコもギリギリに狭い路地でも自信をもってグイグイ乗り入れられるのが嬉しい。

 ディスコの古さの"その2"は重いことだ。車両重量は2570kg。同じランドローバーでも、最新軽量設計のレンジローバーはこれよりボディが大きいのに200kgも軽かったりする。

 ただ、クルマが重いことは悪いことばかりではない。たとえば乗り心地だ。軽いクルマでもいかに重厚で落ち着いた乗り心地にするか......が現在の自動車エンジニアのウデの見せどころなのだが、そのいっぽうで、いかに技術が進歩しても、本当に重いクルマの重厚感にはかなわないのも事実である。

 昨今の軽量化された軽ハイトワゴンの3台分以上(!!)の重さもあるボディを、ゴツいサスペンションとタイヤで支えて、しっとりと走るディスコの味わいはたしかに古い。しかし、そこには思わず手を合わせたくなるような、ありがたいオーラが漂うのも事実。質量たっぷりのボディが醸し出す静粛性もまた、なんとも味わい深い。

 最新のディスコはそういう古臭くも本物の骨格に、最新鋭の過給エンジンや8速もある多段オートマ、レーダー付きの"ぶつからないための"事前安全性能も備わり、これらがまた、じつにいい仕事をしている。エンジンは常に低回転で粛々と仕事をして、金庫のように頼りがいのあるボディ剛性感に、先進の安全技術のおかげで、ディスコに乗っていると「んもう、身も心もまかせちゃう!」と甘えてしまいたくなる。

 まるでスポーツカーのようによく走る昨今のSUVや、あたかも高級セダンのように快適な最新スポーツカーも、たしかに素直に感心する。そういう小利口なクルマに乗るたびに、技術の進歩はスゴイと思う。

 でも、いつも書いていることだが、われわれクルマ好きのツボをより気持ちよく刺激してくれるのは、ディスコのように絶対的な物質量と一芸(この場合は悪路性能)に秀でたクルマなのだ。こういう本物が醸し出すオーラと快適性には、もう理屈ではない快感のツボがある。

佐野弘宗●取材・文 text by Sano Hiromune