【ブラームス 「ピアノ・ソナタ第1番ハ長調 作品1」】 若き日の旅が、人生の真実を見出す

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 古来、人は旅をしてきました。
 
 現存する最古の旅行記「ギルガメッシュ叙事詩」は永遠の生を希求する物語です。以来、紀貫之もマルコ・ポーロも旅の中に人生の真実の片鱗を見出してきました。

 旅は、その本質において、日常からの離脱です。それ故、自分の弱さや狡さに直面したり、それまで気がつかなかった自分の隠れた資質の発露に驚くかもしれません。また、旅によって何かが突然変わるとは限りませんが、若き日の旅が、その後の人生を決定してしまうこともあるのです。

 と、いうわけで、今週の音盤はヨハネス・ブラームス「ピアノ・ソナタ第1番ニ短調・作品15」です(写真は、夭折の天才、ジュリアス・カチェン盤)。

貧しく無名の日々

 ヨハネス・ブラームスは、音楽の授業で学習する時は“ドイツ三大B”といって、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスの系譜でかたられ、三人ともいかにもドイツ風のいかめしい顔をしています。特にブラームスは、広い額に薄くなった頭髪と立派な髭。大御所という風貌で大そう偉い人という印象を与えます。

 でも、そのイメージは、ブラームスが齢を重ね功成り名を遂げてから出来上がったものです。生れ落ちた境遇は大層貧しく、大変な家庭環境で育ったのです。

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