第38回全英リコー女子オープン(以下、全英女子)が、現地時間7月10日(〜13日)に開幕する。開催コースは、ロイヤルバークデールゴルフクラブ(全長6458ヤード、パー72)。2010年以来、6度目の開催となるこの舞台に、今年は史上最多11名の日本人選手が挑む。

 全英女子は、過去8年で7度、計11名もトップ10入りを果たすなど、日本人選手にとっては非常に相性のいい大会(内訳=宮里藍4回、佐伯三貴2回、上田桃子2回、不動裕理1回、宮里美香1回、比嘉真美子1回)。実力派が11名も出場する今年は、樋口久子(1977年の全米女子プロ)以来となる、日本人選手のメジャー制覇への期待が一層高まっている。

 なかでも、注目されるのは、全英女子11回目の挑戦となる宮里藍(29歳)だ。

 確かに、宮里藍の現状は決して芳しくない。米ツアーでの今季最高成績がキア・クラシック(3月)の24位。直近3試合もすべて予選落ちを喫して、今季の米ツアー賞金ランクは85位に低迷している。4年前の2010年に一度はトップの座についた世界ランクも、今や53位にまで下降した。

 最大の原因は、彼女のゴルフの生命線でもあるパッティング。世界トップに君臨できたのは"パットのおかげ"と言ってもいいほど、宮里藍にとっては大きな武器だったが、それが絶不調。米ツアー本格参戦を果たした2006年以降、30を超えることなどなかった1試合の平均パット数が、今季は30.93(米ツアー111位。※7月9日現在)まで落ち込んでいる。

 発端は昨年9月、6年間使用してきたパターを換えたことだった。新たなパターのフィーリングが合わず、右に押し出す癖をつけてしまった。すぐに元のパターに戻したものの、いまだにかつての感覚を取り戻すことはできていない。

 それでも、宮里藍への期待が膨らむのは、メジャー大会を前にしても不安な表情を一切見せることなく、いたって落ち着いているからだ。

「自分には以前、ドライバーの大スランプという経験がある。だから、(スランプのとき)自分がどうすればいいのか、ひと通りわかっているつもり。(スランプから脱出するには)時間がかかるのもわかるし、今の自分がどういう状況にあるのかも冷静に見られる。意外と楽観視しています」

 7年前にセントアンドリュースで開催された全英女子。宮里藍は、名物ホールである17番のホテル越えのティーショットで、まさかのOBを打った。その一打をきっかけにして、ゴルフをやめようか、と思い悩むほどの大スランプに陥った。しかし、このときの経験があるから、今の彼女に焦りはない。

「ドライバーのときもそうですけど、一打、一打を切り離して(目の前の)一打に対して一喜一憂しないように心がけています。それが自分のいいところだと思っていますし、試合に出場してプレッシャーの中で回数を打たないと、恐怖心は克服できないですから。もちろん、しんどいことはしんどいですよ。ゲームにならないときは、どうにもなりませんから。でも、それが当たり前というか、絶対はないんです、ゴルフには」

 宮里藍は一歩一歩、前向きに歩みを進めることで光を見出せることを知っている。ゆえに、苦しみからも逃げることなく、向き合ってきた。そんな彼女だからこそ、メジャーという大舞台での復活劇を期待したくなる。

 まして、ロイヤルバークデールで開催された大会で、宮里藍は11位タイ(2005年)、9位タイ(2010年)と好結果を残してきた。復活への予感がますます広がる。

「今回のコースは、すごく好きです。それに最近は、だいぶパットもよくなってきました。ショットもよくなってきていて、いい流れでここに入ることができたと思います」

 さらに、宮里藍の練習ラウンドを見たテレビ解説を務める村口史子プロが「チャンスはある」と、彼女の躍進に期待を寄せる。

「今回の日本人選手で最多出場となる、その経験は本当に大きいと思います。そして、宮里藍選手はメンタルが強いので、(ロイヤルバークデールのような)耐えるコースでこそ力を発揮してくれるのではないでしょうか。パッティングが決まれば、上位進出が見えてくると思います」

 一方、宮里藍と同じように、村口プロが今大会での飛躍を見込んでいる選手がもうひとりいる。初出場となる成田美寿々(21歳)だ。

「(6月の)全米女子オープンでの予選通過(最終順位55位タイ)が、大きな経験になっていると感じます。精神的に非常に充実しているように見えますし、ショットにも自信を持っています。今回のような耐えるコースでは、気持ちの充実が大きな武器になると思うので、面白い存在になりそうです」

 シーズン当初から、全米女子とともに全英女子の出場を目標に掲げていた成田。初めて足を踏み入れたリンクスコースにも戸惑うことはなかった。練習ラウンドでリンクスコース特有のフェアウェーの固さや風の強さを体感しても怯むことなく、コース攻略への自信をのぞかせた。

「全米女子を経験したことは、自分の中で大きな財産となっています。それを、ここでも生かしたい。(全英女子では)どんなときでも、低い球を打っていこうと決めていました。そのうえで、攻めるところは攻めて、逃げるところは逃げるようにしたい。そうして、上位に顔を出して優勝争いに加わりたいと思っていますが、まずは来年の出場権を得られる15位以内を目標にします」

 今季、国内メジャーを制すなど勢いに乗る成田。初めての全英女子で旋風を起こすのか、注視したい。

 宮里藍や成田に限らず、今年の日本勢は上位を狙える面々がそろった。日本ツアーからは昨季賞金女王の森田理香子(24歳)を筆頭に、昨年の全英女子で7位タイと奮闘した佐伯三貴(29歳)と比嘉真美子(20歳)、ベテランの大山志保(37歳)に、今季好調の原江里菜(26歳)、渡邉彩香(20歳)と、一発ある多彩な顔ぶれがズラリ。米ツアーを主戦場とする上原彩子(30歳)、宮里美香(24歳)、野村敏京(21歳)にも、その実力からして十分にチャンスはあるだろう。

 日本悲願のメジャー制覇へ、歴史に刻まれる熱き戦いがいよいよ始まる。

テレビ朝日 全英リコー女子オープン取材班●構成 text by tv asahi RICOH Women's British Open crew