7月12日から森アーツセンターで開催される展覧会、「ガウディ×井上雄彦―シンクロする創造の源泉―」。

『SLAM DUNK』で高校バスケットボール、『バガボンド』で宮本武蔵、そして、『リアル』で障害者を描いてきた人気漫画家の井上雄彦氏が、今度は、サグラダ・ファミリアなどで知られる建築家・ガウディと向き合います。

「そもそも、なぜ、ガウディ?」と思うかも知れませんが、昨年12月、井上氏が「日本スペイン交流400周年」の親善大使に任命されたことがきっかけ。その後、井上氏は、ガウディを描くために、今年4月からの1か月間、スペイン・バルセロナに滞在。サクラダ・ファミリアが見えるアパートメントに住みながら、ガウディの建築物「カサ・ミラ」にアトリエを構えました。

 ガウディの血族に会ったり、ガウディが思考を深化させたという修道院などに足を運んだりと、 滞在中、井上氏はガウディの内側に迫ろうとしました。ガウディに関わりがある人とつながった今回のスペイン訪問。井上氏の作品には、どのようなガウディが表現されているのでしょうか。同展では、約40点もの描き下ろしを展示する予定となっています。

 また井上氏の今回のスペイン滞在をまとめたDVDブックと、滞在したバルセロナで描き溜めたスケッチ集の2冊で構成された書籍『再訪』を先月末に刊行しています。同書では、同展の公式ナビゲーターを務める建築家・光嶋祐介氏との対談も収録。サクラダ・ファミリアからスラムダンク、そして、制作姿勢の本質について語り尽くしており、ファン感涙の内容となっています。

 この対談を通し、二人にはある共通点が見えてきます。それは、"自然体"なところ。

「いま僕は、漫画のつくり方もそうなったけど、仕事で何をするかっていう題材は、自分からみつけるより、流れに任すっていうか、ご縁でやってる感じなんですね。今回のガウディもそうですけど。だからいつも見切り発車っていうか、わかんないけど面白そうだから乗っかっちゃって、後から苦労する(笑)。でもきっといいご縁だから、それを信じてそのままいこうって思う」(書籍『再訪』より井上氏)

『SLAM DUNK』『バガボンド』と、大作を生み出してきた井上氏は、「何かを作り上げる」といった意気込みとは、正反対の世界にいる様子。理想の仕事の始まり方は、コンビニに行くような感覚で始まるものが良いみたいです。仕事には、「自然体で挑みたい」とも。

 そういった自然体と全く逆の始まりとなるのが、建築家の仕事。この業界では、流れに乗って設計して、作って、とはいきません。建て主に依頼された建築家は、こうなるという予想図を提示しなければなりません。しかし、光嶋氏は本書の中で「内心はね、どうなるかわからない部分のほうが僕としては楽しいんですよ」と漏らしています。

「設計図ができて、これが建ちますって伝えて、現場に行って、ほんとに建つんですけど、それだと自分で設計していて内心つまんないんですよね。だから現場に足しげく通って、ここはこうしたほうがよくないですか、この窓はこうしたら光が入りますよとか、陰がこう落ちますよとか新しく提案する。それは予測可能なものとしての仕事なんだけど、常に予測不可能でどうなるかわからない刺激があって欲しい」(同書より光嶋氏)

 彼らにとって1から10のものを順番通りに並べることは、どうやら性に合っていない様子。イレギュラーを好む光嶋氏の意見に、「現場に行けば、図面の上ではわからなかったものがいっぱいありますよね」と、井上氏も同調しています。ものづくりを極めつつある人には共通点があるのでしょうか。なかなか凡人にはわからない遊び心があるようです。