【宙にあこがれて】第44回 日本では見られない!? 航空ショウのアクロバット

写真拡大

7月に入り、航空祭シーズンが本格的に始まりました。航空自衛隊のブルーインパルスも、4月27日の「エアーメモリアル in かのや」を皮切りに、全国で展示飛行を行っています。5月の国立競技場ファイナルイベントでの航過飛行は大きな話題になりましたね。

各地の航空祭や航空イベントに出かける方も多いでしょう。今回は、日本では見ることのできない、変わり種の「展示飛行」をご紹介しようと思います。

【関連:第37回 雨の百里航空祭】

1980年代の映画『ブルーサンダー』のクライマックスシーンで「ヘリコプターは宙返りできない」「いや、できる」なんて話が出てきます。実際に、限られた少数の機種ではありますが、ヘリコプターは宙返りが可能です。

ヘリコプターアクロバットの第一人者であるチャック・アーロンさんは、その宙返り可能な数少ない機種である、レッドブルカラーのMBB Bo 105を使って、アメリカ各地の航空ショウで展示飛行を行っています。宙返りはもちろん、ロール(横転)もこなすのですが、ショウによっては、場内放送で地上からのインタビューを受けながらアクロバット飛行をするのだから圧巻です。

チャック・アーロンさんは民間のパイロットですが、軍のパイロットも負けていません。

オランダ空軍(RNLAF)では、攻撃ヘリコプターAH-64DNアパッチを使用する展示飛行チームを持っており、宙返りやロールの他、赤外線ミサイルをそらす為の装備であるフレアを演出に使った派手なショウを行っています。軍の公式PVがまた秀逸な出来。

AH-64Dで宙返りが可能ということは、陸上自衛隊のAH-64Dでもできるということ。パイロットの技量も十分だと思うのですが、なにしろわずか13機しかないという貴重な機体をデモ専用にする余裕はありません。

陸上自衛隊のAH-64D

Bo 105と似通ったローターの構造と、強力なエンジンを持つ国産の観測ヘリコプターOH-1も、駐屯地開放行事での軽快な展示飛行を見る限り、宙返りも可能だと思うのですが、これも先代のOH-6D全てを置き換える分に満たないまま、40機足らずで調達(製造)が打ち切られてしまったので、このような展示飛行用の機体を確保しておく余裕はなさそうです。そもそも、日本の空は規制が多く、ヘリコプターのアクロバットが容認されるのか……という問題もありますね。

展示飛行チームという点では、イギリスはバラエティに富んでいます。まずは汎用ヘリコプター、リンクスを使った展示飛行チーム。これは陸軍と海軍がそれぞれ持っており、陸軍は通常の宙返り(ループ)だけでなく、その場で宙返りするバック転(バックフリップ)が持ち味。かつては「ブルーイーグルス」というチームがあったのですが、現在は1機による展示飛行を行っています。

海軍は「ブラックキャッツ」というチーム名で活動しています。こちらは2機編隊による展示飛行で、陸上自衛隊航空学校宇都宮校のOH-6D「スカイホーネット」など、駐屯地開放行事で見られるものに近い内容です。公式PVでは、メンバーによる飛行内容の紹介なども聞くことができます。

体験搭乗や航空祭の展示飛行で人気の大型輸送ヘリコプター、CH-47チヌーク。

航空自衛隊のCH-47J

イギリス空軍では、これを使って派手な展示飛行を行います。機首を上にして上昇してからの180度ターン(反転降下)や、機首を下にしてのきりもみ降下(コークスクリュー)など、あの大きな機体からは想像もできないほどの機動性を見せてくれます。

このイギリス空軍のチヌーク展示飛行チーム、世界最大のミリタリー航空ショウであるイギリスのロイヤルインターナショナル・エアタトゥー(RIAT)では、各国の戦闘機やレッドアローズ(イギリス空軍)、パトルイユ・ド・フランス(フランス空軍)、フレッチェ・トリコローリ(イタリア空軍)などによる展示飛行を差し置いて「ベストディスプレイ賞」を受賞するほど。現在2012年、2013年と各部門の賞を受賞しており、2014年も7月11日〜13日に予定されるRIATでのパフォーマンスに注目が集まっています。

また、イギリス空軍で忘れてはならないのが、第二次大戦で活躍した飛行機を動態保存し、展示飛行を行う「バトル・オブ・ブリテン・メモリアルフライト(BBMF)」。1957年、空軍に残されていた3機のスピットファイアから始まったチームは、現在ホーカー・ハリケーン、スーパーマリン・スピットファイアといった戦闘機の他、爆撃機アブロ・ランカスター、輸送機ダグラスC-47ダコタ(DC-3の軍用版)などを保有し、各地で飛行(フライパス)を行っています。この中にはハリケーンの最終生産機(PZ805)も含まれます。

2014年8月には、カナダで動態保存されている機体がイギリスにやってきて、世界で2機しかない、飛行可能なランカスターの共演が実現する予定です。

このBBMF、軍が行っていることも凄いのですが、戦勝国であり、状態の良い機材が比較的残っていたこと、古いものを大事にする国民性、航空に対する国民の理解や関係法令などという条件が整っているから、と言えそうです。国家予算だけでなく、オフィシャルのファンクラブも運営しており、活動を直接サポートできる仕組みもあります。

航空自衛隊でも、過去の航空機など装備品を必ずひとつは保存するという仕組みができているのですが、予算と人員の関係上、動態保存するまでの余裕がないのが現状です。

航空機とは別に、各国の軍ではパラシュートによる展示チームも保有しています。

アメリカを例にとると、海軍の「リープフロッグス」は、特殊部隊として有名なネイビーシールズ(NAVY SEALs)から選抜されたメンバーが、海軍のイメージカラーである青と黄(金)のパラシュートでパフォーマンスを行います。航空ショウだけではなく、メジャーリーグなどスポーツのオープニングセレモニーなどでも妙技を披露しています。

世界トップクラスの空挺部隊を持つ陸軍は「ゴールデンナイツ」というチーム。陸軍のイメージカラーである黒と金をモチーフに、ブラックチームとゴールドチーム、それぞれ13人がアメリカ各地でデモンストレーションを行います。女性がメンバーに入っているのも特徴。

陸軍はこの他、特殊作戦コマンド(USASOC)にも「ブラックダガーズ」というパラシュート展示チームがあります。

空軍には、空軍大学の士官候補生らで組織する「ウイングス・オブ・ブルー」というチームがあります。こちらは他のチームが見せる、降下中に様々な形を作るフォーメーションスカイダイビングや、パラシュートを開いてから様々な形を作るキャノピーフォーメーションだけでなく、バレエのようなフリースタイルを披露することも。今年は創設50周年という記念の年なので、メンバーも力が入っているでしょうね。

これらパラシュート展示チームは、昼間だけでなく、夜間のデモンストレーションも行います。任務であるHALO(高高度降下・低高度開傘)などは、夜間の潜入任務などに使われるので難なくこなせる訳ですが、飛行機ではなかなか夜間の展示飛行ができない分、パラシュートの方は柔軟性があるといえます。

日本でも、陸上自衛隊第一空挺団の自由降下資格を持っている隊員達なら、これらのパフォーマンスを十分こなせるだけの実力を持っているのですが、日本ではスカイダイビングに関する規制も多く、どこででもデモンストレーションを行う、というのは難しい状況です。

アメリカに限らず、各国の軍も飛行機だけでなく、様々なジャンルの展示チームを保有して、幅広い広報活動を行っています。

ヘリコプターによるアクロバット飛行や大戦機の飛行展示、スカイダイビングのショウは、日本では色々規制が多いので、様々な場所で行うという訳にはいきません。現状、海外の航空ショウを見に行くか、ネットの動画サイトなどで楽しむしかないのが残念ですね。日本でも、規制緩和や安全確保が十分にされた上で、日常的に見られる日が来ることを祈っています。

(文:咲村珠樹)