【うちの本棚】221回 雪やこんこん/田渕由美子

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 「うちの本棚」、今回から田渕由美子の単行本を紹介していこうと思います。

 「乙女チック」と呼ばれた、ある意味少女漫画の王道とも言える田渕由美子の作品群は、70年代後半の少女漫画を語るときにはけして忘れてはならないものでしょう。

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雪やこんこん

 ボクが少女漫画を読み始めたのは70年代後半になってから。たまたま読んだ「別冊少女コミック」に萩尾望都の『11人いる!』の前編が掲載されていたことで、単にラブコメとしかイメージのなかった少女漫画の印象が変わったからだった。とはいえ雑誌で読むのではなく単行本中心だったため、特定の作家に偏っていたのは確かだろう。

 田渕由美子は友人に単行本を借りて初めて読んだ。もともとの少女漫画のイメージでもあるラブコメ作品を得意とする作家だったが、そのころにはそういった作品も抵抗なく読むことができた。さらに言えばお気に入りの作家のひとりになってしまった。

 本書は田渕由美子の最初の単行本になるが、手元にあるのは1977年12月10日発行の第11版。初版から2年弱でこれだけ版を重ねているのだから当時の人気がわかるというものだろう。
 
 収録作品中『ハウスキーパー募集中』はデビュー間もない作品のようで、絵柄もまだ完成していない印象だ。またラブコメ作品ではあるものの、主人公の少女が6歳という設定はずいぶん無茶をしたという気がしないでもない。

 そのほかの収録作品は、『ただいま契約期間中!』『夏色の花』『ライム・ラブ・ストーリー』とほぼ1年ごとの作品を集めた形になっていて、田渕が自分のスタイルを確立していく過程を見ることができる。

 田渕が「りぼん」で活躍していた時期は、陸奥A子らと共に「乙女チック」というジャンルにくくられていた。
確かに改めて読んでみても「乙女」な感情表現が印象に残る。発表当時は読者に支持され相当な人気だったわけだが、いまの若い読者にはどう受け取られるのだろうかと、ちょっと気になった。

 時代が変わっても田渕が描いたキャラクターたちに自分を重ねる少女はいるだろうが、生活環境の違いの影響は大きいような気はする。とはいえ、70年代の少女漫画を読む機会自体がほとんどないというのが現実だろうが。

 少女漫画の賞味期限(といういい方が適当かどうかは議論の余地もあるだろうが)は短い。多くの作品が初出のまま単行本に収録されることもなく消えてしまっているし、単行本化されたものも、絶版後は再刊行されることは稀といっていい。

 田渕由美子の場合も「りぼんマスコットコミックス」が入手困難な状態になったことで作品を読む機会が失われたと言っていいだろう。ただ90年代に「南風社」というところから「田渕由美子全作品集」というものが刊行されたことがある。刊行予定では4巻までの収録作品が記載されていたが、手元には2巻までしかなく、3巻以降の刊行を確認していない。1巻には原稿が紛失して「りぼんマスコットコミックス」には収録されることのなかったデビュー作も印刷物からの復刻として収録されていた、まさに「全作品集」だっただけに、全巻手に入れたかった。もし、3巻以降の刊行について御存知の方がいればお教え願いたい。

初出:雪やこんこん/集英社「りぼん」昭和50年お正月増刊、ハウスキーパー募集中/集英社「りぼん」昭和46年1月号、ただいま契約期間中!/集英社「りぼん」昭和48年8月増刊、夏色の花/集英社「りぼん」昭和49年8月増刊、ライム・ラブ・ストーリー/集英社「りぼん」昭和50年7月号、風色通りのまがりかど/集英社「りぼん」昭和50年10月号

書 名/雪やこんこん
著者名/田渕由美子
出版元/集英社
判 型/新書判
定 価/340円
シリーズ名/りぼんマスコットコミックス(RMC-83)
初版発行日/1976年2月10日
収録作品/雪やこんこん、ハウスキーパー募集中、ただいま契約期間中!、夏色の花、ライム・ラブ・ストーリー、風色通りのまがりかど

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/