NHK BSプレミアム「おわこんTV」毎週火曜よる11時15分〜
番組公式HPより
http://www.nhk.or.jp/drama/owakon/

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“オワコン”とは「終わったコンテンツ」の略で、言葉どおりに捉えれば“時代おくれとなった事物”という意味のネットスラングだ。

昨今は、ただ単に自分が気に入らないもの、飽きてしまったものに対する悪口としてカジュアルに使われている言葉だが(YouTubeを検索したら「日本国憲法はオワコン」という動画がアップされていた)、とりわけ使用頻度が多いのがテレビ、新聞、週刊誌などのオールドメディアに対する揶揄だろう。

「もうテレビなんてオワコン」。こんなフレーズを逆手にとったテレビドラマが、NHK BSプレミアムで7月1日から始まった『おわこんTV』だ。
水野宗徳の原作小説のタイトルが『チョコレートTV』なのだから、ずいぶん思い切った改題である。
でも、「このドラマ、NHK的に大丈夫?」というキャッチフレーズはちょっとダサい。

制作会社にとってヤラセは命取り

舞台は社員20名ほどの弱小テレビ制作会社チョコレートTV。社長の荒巻源次郎(千葉真一)を筆頭に、社員たちが少ない予算をやりくりしたり、テレビ局の顔色をうかがったりしながら必死にドラマやバラエティなどを作っている。

第1話と昨日(7月8日)放送された第2話は「ドキュメンタリーは真実ですか?」前後編。文字通りテレビで放映されているドキュメンタリーに踏み込んだストーリーだ。

ある日、テレビ局から荒巻に電話が入る。なんと、明日オンエア予定のドキュメンタリー番組『熱血ダイアリー』(モデルは『情熱大陸』)にヤラセが発覚したというのだ。
発端は、取材対象のベストセラー作家・蔭山によるブログでのヤラセ告発だった。
静まりかえるチョコレートTV社内。それもそのはず、制作会社にとってヤラセが発覚したとなると、とんでもない事態になる。

このあたりのくだりに既視感を覚える人も多いはずだ。
最近ではフジテレビの人気バラエティ番組『ほこ×たて』が、ゲスト出演者によるブログでのヤラセ告発によって打ち切りになった。告発の直接の対象になっていたのは、制作会社厨子王の担当ディレクターによる捏造である。
少し前なら、『発掘!あるある大事典』のヤラセ問題が知られている。発覚後、番組打ち切りはもちろん、放送局の関西テレビは民放連から除名処分を受け(現在は復帰)、制作会社の日本テレワークは大手だったにもかかわらず消滅してしまった(大多数のスタッフが他社に移籍)。
ヤラセの有無は、制作会社にとって生死を左右する大問題なのだ。

蔭山のブログには「なんと台本が用意されていたのである!」と書かれていた。
呼び出された担当ディレクターの三橋(小泉孝太郎)はヤラセを否定してこう叫ぶ。
「そりゃありますよ!」
ドキュメンタリーにだってあらかじめ構成を想定して作られた台本はある。目ざとい蔭山は、撮影中に三橋の台本を見つけてしまったのだ。

テレビ局との検証の結果、取材の手法にも番組の出来にも問題がないことはわかった。
それでもテレビ局は謝罪の一手しかない。なぜなら、蔭山の小説を原作にしたドラマ制作が進んでいたからだ。
憤懣やるかたない蔭山に対し、謝罪に訪れた荒巻は「嘘のない編集」を約束する。
サボってばかりでまったく原稿が書けない蔭山だったが、三橋は少ない素材からむりやり『情熱大陸』風のカッコいいドキュメンタリーを作り上げていた。
荒巻はそれをすべて破棄し、蔭山の弱さに焦点を当てた編集に作り直したのだ。

荒巻は三橋に語りかける。
「人のことを正確に理解できるやつだけが、ドキュメンタリーを撮る資格があるんじゃねぇかなぁ」
蔭山は完成した作品に納得し、一件落着となった。
しかし、三橋の胸中には複雑な思いが去来する。

かわいそうな人を売り物になんかしたくない!?

第2話は、三橋が偶然仲良くなったがんを患う孤独な老婦人(いしだあゆみ)を、荒巻が「老人の孤独死」をテーマにしたドキュメンタリーの素材にしようとするお話。

「厳しい現実をあえて見せるのもドキュメンタリーのディレクターの仕事」と説く荒巻に、「かわいそうな人を売り物になんかしたくないんです!」と激怒する三橋。

しかし、事情を聞いた老婦人は「私はかわいそうな人なの?」と三橋に問いかける。
さまざまな事情で家族と離別した老婦人は、「年をとれば誰だって独りになるんだもん」「それぐらいの覚悟はできているわよ」と語る。
自分のことをかわいそうだとか、みじめだとは思いたくない。
だから自分のことを撮ってほしい。それが彼女の気持ちだった。

三橋は彼女の気持ちに応え、コテコテの老人難病ドキュメンタリーを作り上げる。

試写を見たテレビ局の編成担当者は、死の間際にいる老婦人の姿に涙をこぼすが、老婦人は急にカメラのほうを向いて「続きが見たければもっと予算をください」と訴える。
弱小制作会社だってしたたかにやっているんだよ、というオチだ。

個人的には千葉真一が元気でとてもうれしい。千葉ちゃんの元気な怪演を見るだけでも、このドラマの価値はある。
優秀だがテレビの「型」にとらわれているディレクター役の小泉孝太郎も好演。小泉持ち前のお坊ちゃんな感じが、ナチュラルに傲岸不遜なテレビマン役にマッチしている。

『おわこんTV』は、テレビ業界の抱える様々な問題点をテーマにしている意欲作だが、声高に何かを告発しようとしている番組ではない。

「ドキュメンタリーは真実ですか?」というサブタイトルは、2006年にテレビ東京で放送されたドキュメンタリー作家・森達也による特別番組『ドキュメンタリーは嘘をつく』を意識したものだと思われる。
しかし、メディアリテラシーについてのドキュメンタリーにもかかわらず、森自身が番組制作から逃げ出してしまうというフィクショナルな構造を持つ『〜嘘をつく』のほうが、「ドキュメンタリーとは何か?」という視聴者への問いかけとしては数段パワフルだった。
一方、『おわこんTV』は、1話30分という短い尺の中で、シャープなテーマとウェットなドラマとがバランス良く配合されている印象だ。

制作はNHKと共同テレビ。演出と脚本は『ザ・ノンフィクション』などのドキュメンタリーを制作してきた共同テレビの松木創、共同脚本として『銀魂』などアニメや特撮を手掛ける下山健人がクレジットされている。この座組みがバランスの良さの土台になっているのだろう。

オワコンと呼ばれるテレビだが、実はインターネットが発達するほど大きな影響力を持っていることがわかってきた。ネットで人気があるのは、ほとんどがテレビの話題だと言っても過言ではない。テレビの話題がネットで増幅され、さらに大きな影響力を持つようになる。
それだけに、テレビにはしっかりしてもらないと困るのだ。

ともあれ、何かと問題が起こっているNHKからこうした番組が生まれるのは喜ばしいことだ。今後もテレビ業界に一石と言わず、二石、三石と投じ続けてほしい。
(大山くまお)