去る6月、衝撃的な住宅ローンが発表された。イオン銀行の変動金利型0.57%という住宅ローンだ。期間限定の商品となっており、2014年12月31日までの申込みで、15年3月31日までに借り入れが実行されれば適用されるという。この金利は変動金利型としては過去最低だ。

 実は、今年に入ってからも住宅ローン金利は低下傾向を続けていた。特に、4月の消費増税後は、いちだんと低くなった。その理由は、消費増税前のマイホーム購入需要が膨らんだ反動で、増税後に一戸建てやマンションを購入する人が減少した結果、住宅ローンを販売する側の銀行の競争激化を招いたのである。

 メガバンクやネット銀行問わず、各行の変動金利型および固定金利型の金利は徐々に低下してきていたが、変動金利型に関しては、ソニー銀行の0.599%が昨年来の最低水準となっていた。「さすがに0.5%台は追随する銀行はないだろう」と見られていたのだが、前述のとおり、6月になってイオン銀行は0.57%という金利をアッサリと出してきたのである。

「2年固定」「3年固定」といった短期の固定金利型の低下も著しく、2年固定で0.4%台の金利を提示している銀行もある。0.4%台というと、もはや地方銀行のネット支店の定期預金の水準に近い。さすがに、金利低下はほぼ限界にきた、と言ってよいと思う。

 こうした目先の金利水準よりも、注目して欲しい事実がある。多少の乱高下はあったものの、少なくとも直近10年以上にわたって「金利はほぼ一貫して下がってきた」ということだ。つまり、10年以上前であれば、変動金利型を借りた人が最も有利(=支払利息が少ない)となったのである。2〜3年前に変動金利型を借りた人であっても、現時点では大きな恩恵を受けているはず。
 
 これまで、テレビや新聞、雑誌などあらゆるメディアで住宅ローンは取り上げられてきたが、最も大きなテーマは「どんなローンを組めばお得なのか?」ということだろう。その際、専門家と称する例えば経済ジャーナリストやファイナンシャルプランナーといった人たちは(私を含めて)、10年以上の固定金利型を薦めていたと思う。したがって、そのアドバイスに従った人は、単純に言って、変動金利型を借りた人に比べて損をしてしまったことになる。

どこまで下がる?住宅ローン金利

■変動金利型から固定金利型に切り替え可能なローンも

 長期の固定型を薦める理由はいくつもある。借り入れしている間は返済額が決まっているので返済計画が立てやすいとか、金利が上昇しても返済額が変わらないetc。それに加えて、アドバイスをした人たちは、その時々では「少なくともこれから10年間のうちには金利が上昇するだろう」という倏然とした予想瓩あったと考えられる。その予想が外れ続けた10数年、ということもできる。

 では、これから先はどうだろうか? 依然として、変動金利型を借りた人が得をする展開が続くのだろうか?

 もし狎賁膕鉢瓩燭舛吠垢い燭覆蕁△そらく、やはり10年以上の固定を薦める人が大半を占めるだろう。アベノミクスによって円安が進み、株価は上昇、足元では物価も上がってきているからだ。金利が上昇する環境は整ってきている。教科書的に言えば、住宅ローンはなるべく長期の固定型を借りるのが正解になるだろう。

 しかし、個人的にはそれほど単純な問題ではないと考えている。今、世界の金融市場では、現在の超低金利はさらに長期間にわたるのではないか、と疑われ始めているのだ。この説を詳しく解説するには、紙幅も力量もないのだが、米国の金融市場で話題となっている論点を挙げると、金利の低位安定は、生産年齢人口の減少や貧富の格差拡大といった要因による経済の潜在成長率の低下が影響している、というものだ。つまり「構造的変化」という見立てだ。

 EUは、この6月、南欧諸国の債務危機の後遺症から、ついに「マイナス金利」の導入に踏み切っている。また、新興国経済の高成長もすでに終わっていることは明白。このように、全世界的に見れば金利は上がりにくい環境となっている。

 話は大げさになってしまったが、少なくとも当面は(何年間と言えないところが苦しいが)、金利は上がらないのではないか。では、そこで住宅ローンはどうするのかと言うと、例えばソニー銀行のように、変動金利型から固定金利型に機動的に切り替えることが可能な住宅ローンが良いのではないかと思う。

 筆者の経験から言っても、金利上昇は突然に起きる。金融市場に変化に機敏に対応できる住宅ローンがあれば、ユーザーメリットは大きい。金利競争も悪くないが、販売サイドには、そのような商品性の改善こそ望みたい。

文/松岡賢治

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。