ヴィジュアル系バンドの熱狂的ファンであるバンギャ(バンドギャルの略)。10代後半から20代にかけての女性が追っかけをしていると思っている方も多いだろう。しかし、今、X JAPANやBUCK-TICKなどに夢中になった世代が、子育てを一段落し、「オバンギャ」(オバサンのバンギャル)としてライブハウスに帰ってきている。今回は、そんなオバンギャたちの素顔を探るべく、40代〜50代の既婚オバンギャ、4名に取材を試みた。

    家族との時間をきちんと作る

「私が連日ライブに出かけていると、主人はさすがに嫌な顔しますね(笑)。だから、平日夜出かけるとき、食事は作っておく、土日を全部使って出かけないで家族の時間も作ること、という約束はあります。家事育児旦那の面倒、生活と戦いながらライブにも参戦してるわけです(笑)」そう語るのは漫画家でオバンギャの榎本由美さん(50歳)。

バンギャル活動において、最大の難問と言ってもいいのが、家族からの理解。家族全員V系好きというわけではない場合、家族への思いやりを持たねばバンギャル活動を続けるのは難しい。

ゴシック調の服と金髪がよく似合う榎本由美さん

    親子でバンギャル

続いて、親子でバンギャル活動をしているE子さん(41歳)。

「高校時代はXが好きだったのですが、娘が中学生の頃、NIGHTMAREのファンになったのをきっかけにバンギャル復活して、娘と一緒にライブに行っています。ライブに行くと、娘世代の子と一緒に行動するので、あまりオバンギャという意識はないですね」

中学生というと、何かと親に反抗したいお年頃。そんな時期に親子でバンギャル活動とは、なんとも微笑ましい光景だ。

    バンギャル復活のきっかけはインターネットの普及

オバンギャがバンギャル活動を行う上で、最も変化したのはネットの普及であろう。

「今、娘が18歳なんですけど、娘が10歳くらいの頃かなぁ、インターネットが普及し始めて、好きだったバンドマンはどうしているのかなと思って検索してみたら、まだバンドをやっている彼を発見したんです。23年ぶりに観た彼のステージ、変わらぬ美しさに愛が蘇りました」と、R子さん(52歳)。

ネットがなければ彼が再びバンド活動をしていることを知ることはなかっただろうとのこと。

    独身オバンギャの悲劇

楽しいオバンギャ活動ばかりかと思いきや、「独身オバンギャの悲劇」があると、M子さん(49歳)は語る。

「40代、50代のオバンギャで独身、実家暮らし、仕事は派遣みたいな人いるけど、本当に悲劇だと思います。しかも、そういうオバンギャたちはたいてい、ダサい格好で、肌もボロボロ」

M子さんは「結婚するなら絶対に一般人が良い」と、バンドマンではなく、普通の男性と結婚したそうだ。バンドに夢中になっていても、冷静に結婚を選ぶか、バンドを追いかけ続けるか、何を幸せと感じるかは人それぞれだ。

    しわくちゃになったらもうライブへは行けない

では、彼女たちオバンギャはいつまで現役でい続けたいと思っているのだろうか。

「汚い姿をバンドマンに見せたくないから、自分がしわくちゃになったら、もうライブへは行けないかな。いつまでも綺麗でいられる努力をしたい」R子さんはそう語る。素敵なバンドマンがいれば、乙女心を抱き続けられるようだ。

今回の取材で、オバンギャは時には困難を乗り越えながらもバンギャル活動をしていることがうかがえた。しかし、良い音楽に出会えたとき、ヘッドバンキングをして首が痛くなったとき、ライブ会場をハシゴしたときの達成感など、「バンギャルで良かった!」と思う瞬間は数多くあるという。この幸せを手に入れるためなら、家族へ気を使うことや自分の身なりを整えておくことは苦でない。それが、オバンギャにとってのバンギャル活動なのかもしれない。

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(姫野ケイ)

※榎本由美さんの展示会「アナクロニズム・エロス展」が7月8日〜19日、銀座スパンアートギャラリーで行われる。また、8月25日〜は六本木Crowにて個展「The Hanging Garden2」も開催。