ブラジルW杯でグループリーグ敗退に終わった日本代表。それでも、今後に向けて可能性を示した選手もいた。ボランチの山口蛍は、そのひとりだ。

 山口は、昨年7月の東アジアカップで初めて日本代表に招集された。同大会で日本の初優勝に貢献すると、そのまま代表メンバーに定着。ブラジルW杯でも、初戦のコートジボワール戦、2戦目のギリシャ戦で先発フル出場を果たした。

 3戦目のコロンビア戦ではスタメンを外れるも、後半途中から相手エースのMFハメス・ロドリゲスの抑え役として登場し、その役割を果たした。ハメス・ロドリゲスの行く手をさえぎり、カウンターを受けると猛スピードで自陣深くまで戻って、ピンチを防いでいた。その度にコロンビアサポーターからは大きなため息が漏れた。それほど、山口が効いていた、ということだ。

 今大会の日本は、攻撃に限らず、守備の局面でも1対1の状況でほとんど勝てていなかった。その中にあって、山口は強さを見せた。要所、要所で相手の攻撃の芽を摘んでいた。

「ハメス・ロドリゲスに対しては、自分が何もできなかったとは思わなかったです。これからも、そういう選手たちと戦う経験を積んでいけば、(世界レベルの選手とも)対等に近いところで戦えると思います」

 強気な言葉を発したように、山口自身、ある程度の手応えをつかんだようだ。

 だが一方で、「まだまだ、自分の間合いでボールを奪えていない」と、世界との"個の力"の差を感じたのも確か、だ。

「(コートジボワールの)FWドログバ、FWジェルビーニョはすごかったし、ハメス・ロドリゲスには後半からの出場で(試合の)流れも雰囲気も持っていかれた。コートジボワールも、コロンビアも、トップでやっている選手はぜんぜん格が違う。世界トップクラスの選手と比較すると、個の力はまだまだ足りないのかな、と思いました。シンプルに止めて、蹴る、というのは、日本にもうまい選手がたくさんいるけど、駆け引きとか、決めるべきところで決める決定力とか、トップレベルの選手はほんまにすごい。そういう部分は、自分はまだまだやな、と思いました」

 個の力の重要性について、山口はさらに続けた。

「今回のW杯では"個"で相手とどれだけ対等に戦えるのかっていうのが、すごく大事やな、と思いましたね。そこから、チームとしてまとまってやらないと世界とは戦えないかな、と。その個の質を上げるには、Jリーグで意識を高く持ってやればできると思うし、海外に行くという選択肢もある。とにかく、ブラジルの経験を無にしないように、(世界との)個の差をこれから詰めていかないとあかんな、と思っています」

 次のロシアW杯に向けて、これから日本代表は新たに編成されることになる。山口は、そのチームの軸になるだろう。そうなったと仮定した場合、パートナーはいったい誰がいいのだろうか。

 次大会で中心となるロンドン五輪世代で考えれば、セレッソ大阪のチームメイトであるMF扇原貴宏や、FC東京のMF米本拓司らが候補となる。しかし、山口のスタイルをより生かすならば、自らが「ヤットさん(遠藤保仁)がやりやすい」と言っていたように、遠藤のようにゲームを組み立てるタイプか。その線でいけば、鹿島アントラ−ズのMF柴崎岳が適任と言えそうだ。

 柴崎は、アントラーズの大黒柱であるMF小笠原満男の薫陶を受けて、成長してきた。パスを自在に散らせるし、ここぞという場面では前にも飛び出していける。攻から守に転じたとき、相手へのアプローチも速い。遠藤が「岳は非常にいい選手」と太鼓判を押す存在でもある。山口、柴崎ともに高さがないのは気になるが、ボランチの位置でふたりがコンビを組めば、サイド攻撃だけでなく、中央からの効果的な崩しも期待できる。今回の代表が直面した、攻撃のアイデアの欠如といった課題を克服してくれるに違いない。

 山口は、すでに気持ちを切り替えて、次に向けてスタートしている。もともと自分がプレイするイメージを抱いていたのは、2018年ロシアW杯だったからだ。だが、ブラジル大会を経験できたことで、ロシアW杯で戦うイメージはもちろん、それまでに自らがすべきことがより鮮明になった。

 その意識の表れか、コロンビア戦の翌日、自ら声をかけて同じ意識を持った仲間たちとともに、練習グラウンドに出た。清武弘嗣らロンドン五輪世代の選手たちとボールを蹴って、「ロシアではオレたちが中心になってやる」と誓った。

 帰国した翌日も、早速セレッソの練習場に顔を出して体を動かした。

「4年後のロシアW杯では、自分が目指している理想のボランチになれていればいいかな、と思っています。具体的には、しっかり守れて、点が取れること。言葉にすると単純だけど、それを世界レベルできちんとこなすのは難しい。それができて、ダイナミックで運動量もあるボランチになりたいですね」

 ブラジルW杯では、勝つことの難しさや、世界の個の強さなどを体感し、意識が一段と高くなった山口。その評価は海外でも高く、スペインやブラジルなどで"山口株"は上昇している。

 今後、山口に求められるのは、経験したその"熱"を忘れずに、世界を意識してプレイすることだ。そして、日本代表の主力選手として、さらに飛躍するためには、次の一歩が重要になる。

佐藤 俊●文 text by Sato Shun