国立がん研究センターの推計によれば、日本人女性の14人に1人が乳がんになるという。以前は40代後半が発症のピークとされていたが、近年は20〜30代の発症が増えている。早期発見・治療に努めたいがん種の筆頭だ。

 乳がんの治療は近年、急速に進歩した。特に、乳がんのタイプによって薬を使い分ける方法論が確立されたことから、進行がんでも5年、10年と長期の延命が可能になっている。

 それ自体は朗報だが、今度は最初の治療を切り抜けた後の長い時間をどう過ごすか、という課題が持ち上がった。病勢が治まっているとはいえ、再発・転移の可能性が消えたわけではない。不安につけ込み──好意かもしれないが──、玉石混交の代替薬や健康法を勧めるやからもいるだろう。

 先日、米トーマス・ジェファーソン大学から乳がんのなかでも、標準的に使われている薬が効きにくいタイプである「トリプル・ネガティブ・乳がん(TNBC)」の転移を防ぐ方法について、報告があった。日本でのTNBCは全乳がん患者の約1割を占める。

 研究者らはTNBCのマウスに対して、片方には通常の餌を、もう片方には普段より30%カロリーを制限した「制限食」を与えた。その結果、制限食のマウスでは、がん細胞が転移をする際に増える特定の因子が減少し、転移を防ぐことが示された。また、放射線治療とカロリー制限食を並行した場合、TNBCのがん塊そのものが縮小することが明らかになった。

 元々、肥満や動物性脂肪が多い高カロリー食は、乳がんのタイプに関わらず、発症リスクであることが知られている。最初の治療が終わった後も、「適正体重」を保つよう指導されるはずだ。今回の結果はそれを一歩進め、30%カロリー制限食の効果を検討したもの。動物実験の結果なので、現在、ヒトを対象とした試験が計画中だ。

 日常生活で30%カロリー制限を実践するには「もう少し食べたいな」という時点で箸を止めること。もの足りない感が残っているくらいで丁度いい。ただ、内容のバランスは大事。高タンパク・低脂肪のメニューを心がけてください。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)