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2014年4月、2年に一度の診療報酬改定が行われた。体制の充実した特定集中治療室を持つ医療機関や、専従医師および専従社会福祉士を配置した回復期リハビリテーション病棟を持つ病院などに診療報酬が手厚く給付される中で、私たちの多くがふだん使っているお薬手帳に関係する「薬剤服用歴管理指導料」が引き下げられたのはご存じだろうか。

○薬局に支払う「薬剤服用歴管理指導料」って?

実は今回、この「薬剤服用歴管理指導料」が引き下げられたことにより、お薬手帳を使用しない人の方が医療費が安くすむという現象が起きるようになったのだ。

「薬剤服用歴管理指導料」とは、患者がお薬手帳を活用した場合に調剤薬局に支払われる報酬のことだ。「お薬手帳の記載」「薬剤情報提供文書の提供と説明」「薬剤服用歴の記録とそれに基づく指導」「残薬確認」「後発医薬品(ジェネリック医薬品)に関する情報の提供」という、5つの業務に対する報酬をさす。

○お薬手帳不要の場合に医療費が20円安くなる理由

従来の制度では、この5つの業務に41点の診療報酬が算定されていた。診療報酬は1点につき10円のため、調剤薬局は「薬剤服用歴管理指導料」によって国から410円を得ていた。一方で私たちは70歳未満ならば医療費の自己負担額は3割なので、薬局の窓口で130円を支払っていた。

だがこの数年、お薬手帳を活用している患者側から、「薬の説明もないまま、知らないうちに薬袋にシールだけ入っていた」「より安価なジェネリック医薬品についての説明がなかった」など、調剤薬局側の指導不足を指摘する声もあがっていた。そこで今回の診療報酬改定により、「薬局における薬学的管理および指導の充実」をめざして、同指導料の評価の見直しが行われた。

その結果、服薬状況ならびに残薬状況の確認および後発医薬品の使用に関する患者の意向の確認のタイミングを、調剤を行う前とするよう見直すことが明確化された。それと同時に、お薬手帳を必要としない、もしくは手帳への記入を必要としない患者に対する同指導料は、41点より7点低い34点(340円)となった。そのため、患者の負担は差額の70円の3割、すなわち20円分軽くなったというわけだ。

○厚労省の見解は「適正評価」

ただ、今回のこの改定は多くの人が知らなかったとする調査結果もあった。また、これまで「調剤薬局や病院に持っていくことが正しい」と思われていたお薬手帳を持たない方が、20円とはいえ医療費が安くなるという制度に、驚きの声をあげている人もインターネット上に数多く見られた。

今回の診療報酬改定について厚生労働省の担当者は、「診療報酬については『加算』『減額』などと表現されますが、すべて『適正評価』です。確かにお薬手帳は有用ですべての人に使っていただきたいです。ただ、高齢者をはじめ必要な人には必要ですが、若い人は必ずしもそうではないでしょう。そのため、薬剤服用歴管理指導料が(一部の人には)410円ではなく340円になるのは適正評価です」と話す。

○20円か医療従事者とのコミュニケーションか

実際に、今回の改定を現場の人たちはどのように思っているのだろうか。日本全国に調剤薬局を展開する日本調剤広報部・櫻井琢也部長、弓場鉄雪次長にうかがってみた。

弓場さんは「私どもは、目先の20円の節約にとらわれずに、すべての方々にこのお薬手帳を活用していただき、効率的で質の高い医療を受けていただきたいと思っています。評価点数の見直しについては、指導不足の薬局もあるという現状を受け止めて、すべての薬局における指導を徹底、充実していきたいと思います」と話す。

ただ、お薬手帳を活用することは毎回節約する「20円」以上の価値があるように思える。

櫻井さんは「お薬手帳は、過去に処方されたが全然効かなかった、あるいは体質的にあわなかった薬を再度処方されてしまうといった無駄も省けて効率的です。また、薬局で薬剤師にこのお薬手帳を見せることにより、過去に処方された薬についても、ジェネリック医薬品が存在することがわかることもあります。現在使用している薬をジェネリック医薬品に変更することよって節約できる額のほうが、20円よりもずっと大きいわけです」とお薬手帳活用のメリットを指摘する。

また、お薬手帳を介することで自然と生まれるコミュニケーションによって、薬剤師らはお薬手帳の文面からでは決して得ることができない"生の患者の声"を聞くことができると弓場さんは言う。

「自己負担が20円安くなった分だけ患者さまの健康を守る医療の質が下がるのは、なにより患者さまにとって不利なことです。これからも積極的にお薬手帳の活用をお勧めしていきたいですね」。

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(浅田薫子)