聖闘士星矢、ワンピ、こち亀…キャリア60年も! 「ベテラン漫画家」にみるふたつのタイプとは?

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“燃え上がれ 俺の小宇宙(コスモ)!”

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週刊少年ジャンプで連載された大ヒット漫画を原作に、今月21日から劇場公開が始まった『聖闘士星矢 LEGEND of SANCTUARY』。ファン人気の高かった「聖域十二宮編」が現代のCG技術で鮮やかにリメイクされ、その迫力と映像美は必見だ。

――ところで『聖闘士星矢』生みの親である車田正美さんの“漫画家歴”が、すでに40周年を迎えていたことはご存知だろうか? 恥ずかしながら記者は最近まで知らず、特設サイト「車田正美 熱血画道40周年」がオープンしていたことに驚いた。ハードスケジュールと熾烈な生存競争の中、最前線で40年も漫画を描き続けられることは、それ自体がもう偉業というほかない。

他の有名作家はどのくらい“漫画家歴”が長いのだろうか? 今回はプロ漫画家たちのキャリアを調べてみた。

(※ 記事中では原則として、2014年から活動開始年を引いたものを“漫画家歴”と数えています)

プロとして純粋な漫画家歴の長さを競うなら、高齢で現役の作家が有利だ。『ゲゲゲの鬼太郎』を代表作に持つ水木しげるさんは92歳で、キャリアは56年。もちろん今なお現役だ。日本漫画協会の名誉会長を務め、代表作に『ヒゲとボイン』がある小島功さんは86歳、キャリア65年。

惜しまれつつ昨年亡くなった『アンパンマン』のやなせたかしさんは享年94歳、ちょうどプロデビューから60周年だった。

土曜ドラマ『怪物くん』の原作者としても最近注目された“藤子不二雄A”こと安孫子素雄さんは現在80歳。キャリアは63年に達する。安孫子さんは今年の「手塚治虫文化賞」で特別賞に選ばれ、先月催された授賞式では高齢と思えないほど鋭いトークを連発。会場内の報道陣やファンを沸かせた。

ちなみにこの時、対談相手となったのは『デビルマン』『マジンガーZ』などで有名な永井豪さん。こちらも68歳、キャリア47年という堂々たる超ベテランで、“壇上の2人を合わせたら漫画家歴110年”というとんでもない組み合わせだった。

終戦からまだ70年も経過していない現在、50〜60年クラスの現役作家があちこちで活動を続けているという事実は、日本が“漫画大国”だと思い知らせてくれる。

■ベテラン漫画家 2つのタイプ

キャリアの長い漫画家を語るのに欠かせないのが、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』と『ゴルゴ13』。この両作品には“コミックスの巻数で世界のトップを走り続ける”という共通点があるが、一方で作者に関しては大きな違いがある。

『こち亀』作者の秋本治さんは“デビュー作をそのまま継続連載している”のに対し、さいとう・たかをさんは『ゴルゴ13』スタート時、すでにキャリア20年を超えるベテランだったのだ。そのため漫画家歴は秋本さんが38年(61歳)、さいとうさんが59年(77歳)と予想以上に差が開いている。

秋本さんのように“デビュー作がそのまま現在まで長期連載”の場合は、ほぼ作品の継続年数が作者のキャリアと等しくなる。秋本さんタイプの有名作家としては『ONE PIECE』の尾田栄一郎さん(17年)、『NARUTO -ナルト-』の岸本斉史さん(18年)、『ベルセルク』の三浦建太郎さん(25年)などが挙げられる。休載中の作家も含めれば『コータローまかりとおる!』シリーズの蛭田達也さん(32年)、『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』の萩原一至さん(26年)なども加わる。

なお岸本さんはデビューから初連載『NARUTO』まで3年間のタイムラグがあり、『NARUTO』単体では連載15年になる。

秋本さんタイプは全体としては少数派だが、“長期連載のデビュー作をいったん終了させて別作品を描いた後、現在またデビュー作の続編を描いている”漫画家も含めれば大御所の名前が出てくる。『キン肉マン』のゆでたまごさん(36年)、『キャプテン翼』の高橋陽一さん(34年)などがこの条件に該当する。

さいとう・たかをさんのように複数ヒットを飛ばすベテラン漫画家は非常に多く、『Dr.スランプ アラレちゃん』『ドラゴンボール』の鳥山明さん(36年)、『キャッツ・アイ』『シティーハンター』の北条司さん(35年)、『うる星やつら』『犬夜叉』の高橋留美子さん(36年)、『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博さん(28年)、『YAIBA』『名探偵コナン』の青山剛昌さん(28年)などなど……超メジャーどころでさえ次々と名前が挙がってくる。

デビュー作をそのまま長期連載することも、1人の名義(さいとう・たかをさんはプロダクション方式だが)で複数のヒット作を生み出し続けることも、それぞれ一般読者には理解できないほどの努力と才能を要する偉業だろう。

■主要少年誌にみる“ベテラン漫画家”の分布

4大週刊少年誌とも呼ばれる「週刊少年ジャンプ」「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」「週刊少年チャンピオン」。どの雑誌にも“長期連載作品”があり“ベテラン作家”がいるが、それぞれ少しずつ違った個性がある。

新旧作家のバランスが比較的良好だな、と記者の主観で感じられるのは少年マガジン。申し分ない実績を持つ『はじめの一歩』の森川ジョージさん(31年)、『ラブひな』『魔法先生ネギま!』の赤松健さん(21年)などを主力に据えつつ、『聲の形』で話題の新鋭・大今良時さんを起用したり、他誌から実力派を連れてきて『七つの大罪』(鈴木央さん/20年)、『さよなら絶望先生』(久米田康治さん/24年)といったヒット作を誕生させている。

少年チャンピオンはややベテラン重視型かと思われ、板垣恵介さん(25年)の『グラップラー刃牙』、水島新司さん(56年)の『ドカベン』といった人気作が何度かマイナーチェンジしながら長期連載される傾向が強い。しかし新人軽視というわけでもなく、『侵略!イカ娘』『弱虫ペダル』のようなヒット作もたびたび登場している。ちなみに少年ジャンプで生まれた車田さんの『聖闘士星矢』シリーズも、現在はチャンピオンに移籍して不定期連載中だ。

少年サンデーは高橋留美子さん、青山剛昌さんに加え、『うしおととら』『からくりサーカス』の藤田和日郎さん(26年)、『タッチ』『クロスゲーム』のあだち充さん(46年)といったベテラン勢を重視する印象が少年チャンピオンと似ている。しかし中堅層が充実しているほか、近年では『裏サンデー』で尖った新鋭作家の発掘に力を入れているようで、全体的なバランスはとれているようだ。

反面、『金色のガッシュ』の雷句誠さん(23年)や『アラタカンガタリ〜革神語〜』の渡瀬悠宇さん(25年)といった現役作家陣が編集部の体質について公然と批判してニュースで報じられるなど、ややネガティブイメージを伴うこともある。

中堅〜ベテラン重視の傾向が強い少年誌のなかで、特徴的なのは少年ジャンプ。こちらは有名な“アンケート至上主義”により、新人作家たちによる激しい競争が繰り広げられている。『こち亀』のような聖域を除けば人気作家にも容赦はなく、アニメ化された『ボボボーボ・ボーボボ』を描いた澤井啓夫さん(14年)の次回作『チャゲチャ』がわずか8週で打ち切りになったのは有名だ。

少年ジャンプは『ONE PIECE』『NARUTO』『BLEACH』など50巻超えの長期連載漫画も多いが、それらの作者は共通して“現在の長期連載タイトルがデビュー作、または初のヒット作品”という特徴が見られる。ほかの少年誌と比べ、大ヒットを飛ばした作家がずっと継続して描き続ける割合は高くない。もちろん過去には鳥山明さんや北条司さん、今なら冨樫義博さんのように“少年ジャンプの連載作が2つ以上続けてアニメ化”という例外もあるが少数派だ。少年ジャンプでヒット作を出した漫画家は、同じ集英社の別雑誌に移籍したり、他社で活動を続けている例が目立つ。

この傾向を裏付けるように、『るろうに剣心』で有名な同誌デビューの和月伸宏さん(27年)は、2012年発売のコミックス『るろうに剣心 特装版』あとがきで次のように語っている。

(※映画プロモーション用の『るろうに剣心 キネマ版』を執筆するにあたり)
「やはり元々の掲載誌で日本一の発行部数の週刊少年ジャンプの方が望ましい。しかし現行連載と新人作家を最優先する週刊少年ジャンプでは載せられるのは読切一話分。」

驚くことに、5000万部以上を売り一時代を築いた大ヒット漫画『るろうに剣心』の新作読み切りでさえ、少年ジャンプでは一話分しか載せる余裕がないというのだ(結局『キネマ版』はジャンプスクエアに短期連載された)。どれだけ新人たちの競争が激しいのか想像できる。たまにジャンプ読者からは「あの作品をあそこで打ち切るなんて編集部は何も分かってない!」といった苦情(?)も聞かれるが、徹底した実力主義だからこそコンスタントに人気作が誕生しているのかもしれない。

今回は少年誌・青年誌の作家を中心に“漫画家歴の長さ”を見てきたが、キャリア20年を超える作家に限定しても到底フォローしきれる数ではなかった。日本漫画界の“層の厚さ”とそれを支えるクリエイター・編集者たちの努力に、あらためて敬意を表したい。