富岡製糸場と絹産業遺産群

写真拡大

海外の路上で日本製を偽る商品が販売されるニュースを見ると、残念に思う反面、日本のモノづくりが一流ブランドの地位を築いていることを実感する。いつから「メイド・イン・ジャパン」は世界から信頼されるようになったのか。

J−CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」http://www.j-cast.com/mono/bookwatch/でも特集記事を公開中

信頼を築け! 国家の一大プロジェクト

『富岡製糸場と絹産業遺産群』

日本が世界へ扉を開いた幕末・明治期、主要輸出品はシルクだった。輸出量が増えると、イギリスをはじめ外国商人からのクレームも増えた。メイド・イン・ジャパンは、粗悪品の代名詞になりつつあったのだ。危機感を覚えた明治政府が生糸業者に模範を示そうと建設したのが、世界遺産に登録されたあの富岡製糸場だ。フランスから一流の技師を迎え、最新鋭の機械設備を整えた、世界一の規模を誇る工場。高品質なシルクの大量生産を可能にした意義は深い。ベストセラーズの『富岡製糸場と絹産業遺産群』(著・今井幹夫、1008円)は、その歴史や見どころを写真や絵画を盛り込みながら紹介している。明治の製糸工場といえば、安い賃金で過酷な労働を強いるイメージが強いが、少なくとも官営時代は、最新のワークスタイルを導入した超一流企業といった様相だ。ここで働いた女性たちの暮らしぶりや周辺の町並みなども紹介している。

外国研究者が注目する日本的資本主義

『グローバル資本主義の中の渋沢栄一』

開国したばかりの小国が、最新鋭の巨大製糸工場を設立するには、計り知れない資金と政治力が働いたに違いない。富岡製糸場の計画に一役買ったのが、日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一だ。日本初の銀行や近代的な都市インフラなど500近い企業にかかわり、日本経済の礎を築いた。経済を取り巻く研究者の間で今、渋沢が主張した「合本主義」を見直す動きが出ている。リーマンショック以来、限界を指摘されるようになった英米型資本主義に対し、道徳的な要素が強い。日英米仏で活躍する経営学者や歴史家による研究成果をまとめたのが、東洋経済新報社の『グローバル資本主義の中の渋沢栄一』(著・パトリック・フリデンソン、ジャネット・ハンター、ジェフリー・ジョーンズ、橘川武郎、田中一弘、島田昌和、宮本又郎、木村昌人、3240円)だ。合本主義は、善意に基づく日本のモノづくり精神のルーツかもしれない。

世界で信用を勝ち取るには着こなしも大事

『鎌倉シャツ 魂のものづくり』

糸から始まったメイド・イン・ジャパンの信頼。富岡製糸場の操業開始から150年が経とうとしている。時代は移り、着物で生活する人は少数派。糸は主に洋服へと加工される。ところがファッションの専門家によれば、日本の洋装文化はまだ発展途上である。たとえば、サラリーマンが着るシャツに付けられた胸ポケット。これは欧米ではありえないデザインだという。メーカーズシャツ鎌倉は、1991年から高品質な綿を使った世界で通用する国産シャツを4900円という低価格で販売してきた。今ではニューヨーク・マディソン街にも店を構える。日本経済新聞出版社の『鎌倉シャツ 魂のものづくり』(著・丸木伊参、1620円)は、経営陣や工場、店頭スタッフへの取材を行い、常識破りのビジネスモデルを明らかにする。創業者・貞末良雄氏は、欧米では特に正しい着こなしが成功を左右すると力説する。海外へ日本製品をPRしたいビジネスマンよ、スマートな着こなしをお忘れなく。